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まもなく改築される石垣の上の木造駅舎 奈良線 上狛駅(京都府木津川市)

清水要鉄道ライター
上狛駅

長い歴史を持つ二つの古都・京都と奈良を結ぶJR奈良線。近年は沿線の都市化に伴って複線化も進み、駅設備の改築も積極的に行われている路線だが、大都市近郊にしては今なお木造駅舎が多く残っている路線である。起点の木津駅(ただし列車は奈良駅に発着)から一駅目の上狛(かみこま)駅も木造駅舎が残る駅だが、改築により木造駅舎がまもなくその姿を消す見込みだ。

駅舎
駅舎

上狛駅は明治35(1902)年5月13日、奈良鉄道の駅として開業。合併で関西鉄道の駅となったのち、明治40(1907)年10月1日に国有化された。駅舎の築年は不明だが、開業時のものの可能性もある。もし開業時のものであれば今年で築122年だ。駅舎は歴史のありそうな石垣の上に建てられていて風格を感じさせる。駅舎の塗装は221系電車を意識した塗分けで、隣の棚倉駅も同じ帯が入っている。

駅舎と駅前
駅舎と駅前

駅開業時の所在地は相楽郡上狛村で、大正15(1926)年7月1日に町制施行して相楽郡上狛町となり、昭和31(1956)年8月1日に相楽郡棚倉村、相楽郡高麗村と合併して相楽郡山城町となった。山城町役場は上狛に置かれ、上狛駅は山城町の玄関口としての役目も果たしていたが、山城町は平成19(2007)年3月12日の合併で木津川市の一部となっている。駅前には茶農協や織物会社があるが、古くからの住宅地といった趣で、かつての町の玄関口にしてはひっそりとした雰囲気だ。

駅舎内
駅舎内

上狛駅は奈良線電化直後の昭和59(1984)年10月20日に無人化。その後も定期券のみ販売する簡易委託の窓口が営業していた時期があったが、令和5(2023)年4月1日に廃止されて完全無人化されている。小さな駅舎に改札機を詰め込んでいるので駅舎内は窮屈な印象だ。

仮駅舎?
仮駅舎?

4月9日に筆者が訪問した際、駅舎のホーム側では一部の壁を壊して何やら工事を行っていた。木製の簡素な小屋を作っているようで、ひょっとすると駅舎を改築するための簡易駅舎なのかもしれない。駅舎の改築については、昨年1月19日に木津川市から地元自治会の代表者に対して説明会があり、詳しい情報は出ていないものの水面下で計画は進んでいるようだ。木津川市ではJRが行う駅舎改築に合わせて駅舎入口にスロープを設置するとしており、駅舎だけでなく土台の石垣も改築されるであろうことは想像に難くない。令和6(2024)年度からの2か年計画の2年目に行うと予算案で説明されている辺り、スロープ設置が行われるのは来年度と思われるが、駅舎の改築工事自体はもう少し早く始まるかもしれない。

駅構内
駅構内

ホームは相対式2面2線で、反対側のホームとは屋根なし跨線橋で結ばれている。1線スルー方式のため、行き違いがある場合を除き、列車は駅舎側の1番線に停車・通過する。行き違いがある場合、1番線が京都・宇治方面、2番線が木津・奈良方面だ。

205系と桜
205系と桜

詳細はまだ発表されていないものの、早ければ年内、遅くとも来年度中には姿を消すであろう上狛駅の木造駅舎。その姿を見たいならできるだけ早めに訪問しておいた方がいいだろう。列車は日中でも30分に1本あるので訪問はそれほど難しくない。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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