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登園時に朝の挨拶ができない。そんな時親はどう見守る?

保育士ごんちゃん保育士/チャイルドカウンセラー

こんにちは!保育士ごんちゃんです。

現在、保育士として地域の公民館や療育教室で親子遊び講座をしたり、地域の保健師さんと一緒に子育て講座にまわったりするような働き方をしながら、子育てに関する情報発信をしています。

先日、私のInstagramアカウント宛にこんなご相談のメッセージをいただきました。

こんにちは。いつもヴォイシーの発信やInstagramの投稿に励まされています。
ただ今 5歳になったばかりの年中組の長男のことで、この2年間ずっと悩んでいることがあり、しゃーごんさんならどのように考えるかなあと お聞きしたくてメールしました。それは、幼稚園に行く時の朝の挨拶のことです。
息子は2年前の3歳になったばかりの時から今の幼稚園に入園したのですが、登園時に先生から 「〇〇くん おはようございます!」と言われて 応えることがなかなかできませんでした。(その幼稚園では ‘おはよー!’とかではなく ’おはようございます’ と言いましょう というのが 一応のルールです。小さな子どもには長くて言いにくいのかなあ と思うこともありましたが、言えている子をたくさん見ていると配慮するポイントでもないのかなと思っています)
家では元気いっぱいの無邪気な男の子ですが、恥ずかしがりやでシャイなところがあるかなと感じていたし、入園時はまだ3歳だったので 私自身も 初めはそんなもんだよね〜 毎日繰り返していけば いつか慣れて言えるようになるよね〜 と思ってそれほど心配していませんでした。
息子と一緒に言うように心がけて 私自身が挨拶する姿を見せたり。たまに 小さな声で言える時もあって、そんな時は おー!言えたね と喜んだり。でも 私の喜ぶ反応も息子にはプレッシャーだったのかなと感じるほどに また言わない日が続く ということの繰り返しで私自身も 息子を信じて待つ、というスタンスでがんばっていたのですが、つい「先生に おはようございます っていうんだよ」と声かけを繰り返してしまった日々もありました。先生の手前 親が注意しないからだ と思われていたらどうしよう、という意識もありました。そんな時は 息子は 挨拶はしてるのですが、どこか言わされている感じで言っているのですね。私が 声かけするのをやめると また言わなくなり、いつのまにか先生に目も合わせず 朝の挨拶の瞬間になると身構えて身体を固くしているのが分かるようになりました。
幼稚園自体がいやなのかなあ と思ったこともありましたが そんな訳でもなく、一度中に入ると 仲の良い友達と遊んだりふざけたり、給食も沢山食べ お迎えの時は汗だくで笑顔で過ごしていて なかなか帰りたがりません。
登園時のその場面だけ トラウマになってしまっているのかな とも思います。
私の 促し方が 息子に合っていなかったのかな、息子の成長を待つことより 私自身が先生からどう思われるか 気にして注意てしまったことが だめだったかな、どうすれば良かったのかな、そして 何より これから 目の前の息子に対して 登園時どうしていったらいいのかな と考えがまとまりません。
もし しゃーごんさんなら どのように子どもに対して接するかな と聞いてみたくなりました。また 親として どのような気持ちでいるのがいいかなと。
ちなみに幼稚園の先生には面談のとき 「これからの課題ですね^^」だったり「諦めず 声かけしていきましょう」と言われています。私としては 一定期間 実験的にでも 挨拶をさせようとしないことがむしろ息子にはいいかもしれない、と思っていて、園に協力をお願いできないかな という考えもありますが 先生に提案する勇気がないまま時が過ぎている現状です。もしお応えいただけたら嬉しいです。

今回は、登園時の挨拶に関して子どもの育ちをどのように見守っていけばよいか、一緒に考えていきたいと思います。

▼親の関わりと子どもの行動は必ずしも因果関係にならない

今回のご相談内容は、幼稚園の登園時、朝のご挨拶がなかなかできないお子さんについてのお悩みです。

親として「元気に挨拶してほしい!」という願うのは、誰しもが思うことのひとつですよね。

ご相談内容の中で「家では元気いっぱいの無邪気な男の子ですが、恥ずかしがりやでシャイなところがあるかなと感じていた」とおっしゃっている通り、ひとつはその子のタイプによるところもあると思います。

家が安心できる環境で本来の自分を出せているからこそ、幼稚園や家の外に出た時に少し緊張してしまうことがあるんですよね。

そしてお母さんの関わりとしても「息子と一緒に言うように心がけて 私自身が挨拶する姿を見せたり。たまに 小さな声で言える時もあって、そんな時は おー!言えたね と喜んだり。」と親としてできる関わりを、試行錯誤しながら続けてこられたことを文面から感じます。

私たち親は、子どもが親が望むような行動を取らなかったとき「親の自分の関わりや声かけが悪かったのかな…」と感じることがありますよね。

例えば、今回の挨拶に限らず、発語がなかなかない、ご飯をなかなか食べない、など「子どもができないこと=親のせい」のように感じることがあるのではないでしょうか。

しかし子どもは親との人間関係だけではなく、幼稚園など家庭外の社会での人間関係やさまざまな環境の影響を受けながら成長しています。

そのため、親の関わりが子どもに与える影響は大きいとはいえ、それが必ずしも直接的な因果関係になるとは限りません。

さらに言うと、子どもそれぞれの素質や気質、タイプ、そして今どんな成長段階にいるかによっても行動が変わるので、親がどう関わりを工夫しても、その子の持ち味のほうが勝ることもあります。

ですから大前提としては、「親の自分の関わりがいけなかったのか」と自分を責めないでほしいと思います。子どもを思う親心から、子どもの行動が心配になる気持ちはとてもよく分かりますが、私たち親は子どもの行動を親が望むようにコントロールすることはそもそも不可能です。

その不可能な中で、いかに子どもの育ちをサポートして親子で一緒に学んでいくかが、育児の永遠のテーマでもあり大事なことであると私は考えています。

そのため今回のご相談者であるお母さんが、子どものことを思って「ああかな、こうかな」と試行錯誤されているそのこと自体がとても素晴らしく尊いことだと感じています。

▼挨拶の習慣は何気ない日々の中で育まれる

私たち親は、何十年と人生を生きてきて「挨拶はしたほうがいい」という価値観になっている方が多いかと思います。それは家庭教育の影響だけでなく、学校教育や社会生活などさまざまなところで何年もかけて得た感覚です。

一方子どもは、今回のご相談者さんのケースでもたった数年ですよね。まだまだ習慣化するには時間がかかってもおかしくありません。

また挨拶はなぜしたほうがいいのか、その本質を改めて考えると、それは人とのコミュニケーションを明るく楽しく円滑にする第一歩としてあるのではないでしょうか。

初対面の人でも挨拶をすることで会話をするキッカケになったり、笑顔がこぼれたりと、人間関係を円滑に築いていく手助けにもなりますよね。

ですからそもそも、子どもに挨拶を促す場合、周りの人にしつけがなっていると思わせるために挨拶があるのではないし、「誰にどう思われるから挨拶をさせなければ」という考えは捨てていいと思います。

日々の習慣の中で「挨拶は気持ちがいいものだ」という感覚を親子で育んでいけたら、いつかは促さなくても挨拶が勝手に出てくるようになると思います。

そのため親子でできることとしては、まずは家庭内で挨拶のコミュニケーションを楽しむことを意識してみてはいかがでしょうか。

おはようの挨拶に限らず、いただきます、ごちそうさま、いってきます、いってらっしゃい、おやすみ、ありがとう、ごめんなさい、など数ある挨拶の場面で親がまず明るく挨拶をして、「挨拶すると気持ちいいね。」や「◯◯くんが挨拶をしてくれてお母さんは嬉しいよ。明るい気持ちになったよ。」など、声かけをしていくのもよいのではないかと思います。

もしもこれはすでに習慣になっているという場合は、登園時に限らずご近所の方と会った時や、買い物をした時など、積極的に親が他人に挨拶をしている姿を見せていけると素敵です。

子どもは日頃から親の行動を見ています。親が姿や行動で示すことが、親が言って聞かせるよりも子どもに大きな影響を与えることは多々あります。

今回のお悩みのケースだと朝の登園時の挨拶が大きなハードルになっていますが、家庭内外で挨拶が日々の習慣になっていけば自然と挨拶が出てくる日が来ると思います。

▼育児に特効薬のような効果を期待しないことの大切さ

育児をしていると悩みがつきないので、その度に私たち親は子どもに望むような行動が、劇的な変化として現れることを期待することがあると思います。

しかし、先述の通り子どもをコントロールすることは不可能ですし、日々の親子の関わりや様々な環境からの影響を受けてゆるやかに変化していくものです。

子どもが急激に行動を変えることがあるとしたら、私はそれはどちらかというと危険なサインだと感じています。

人は恐怖に訴えかけられると焦って行動を変えることがありますよね。子どもの場合は「こうしないとヤバい!怒られる!鬼が来る!お化けがでる!」など、そういった意識づけをさせられると行動が急変することがあります。

一見言うことを聞いていて、良さそうに思えることがあるかもしれませんが、その恐怖が親によって植え付けられているものである場合、長い目で見た時に親子関係がいい方向に進むと思えません。

子どもにトラウマが残ることもありますし、ショック療法的なアプローチはリスクも高いと思います。

ですからまずは育児においては焦らないことが大切で、子どもの成長をゆっくり待つつもりで関わっていくことをオススメします。

そしてご相談者さんがおっしゃっているように、幼稚園の先生と連携をとって協力をお願いするのも一つの方法ですね。

先生方も子どもたちの成長を願って日々関わっておられますので、親御さんの不安な気持ちや心配する思いなどはきっと受け止めて一緒にできる工夫を考えてくださると思います。

<その他SNSでも子育てに関する情報発信をしています>
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今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!

保育士/チャイルドカウンセラー

専門は保育、幼児教育、家庭教育。九州大学教育学部卒。2019年2月に女の子、2021年11月に男の子を出産した2児の母。HSP(Highly Sensitive Person)の気質を持ち、人生で2度のうつ病を経験。現在はがんばりすぎるのをやめて「無理せず自分らしく」がモットー。育児のお役立ち情報やライフハック、子どもと楽しく過ごすための遊び心などを発信。

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