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知床遊覧船事故で注目!安全管理規程とは

宙船

乗り物大好きブロガー

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こんにちは、宙船です。

2022年4月23日に発生した知床遊覧船事故は死者・行方不明者26人という大惨事になりました。乗船客の皆様・ご家族の皆様に心よりお悔やみとお見舞い申し上げます。

私は以前旅客船(フェリー)に長年勤務し、官庁へ提出する書類作成や点検に大きく関わりました。運輸関係の法令は一般の人にはなじみが薄い内容が多く、中でも船の法令は陸上を走る交通機関と異なる部分が多いので、理解しにくいでしょう。今回は問題点の一つ「安全管理規程」の概略について紹介します。

海上運送法に定められた安全管理規程

安全管理規程が定められているのは、

海上運送法第10条の3 一般旅客定期航路事業者は、安全管理規程を定め、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

一般旅客定期航路事業とはフェリーの様に港と港を定期的に結ぶ旅客船(旅客定員13人以上の船)を運航する事業をいいます。この条文は何?と思われた方もおられるでしょう。今回の事故は主に起点と終点が一致する寄港地がない一定の事業(旅客不定期航路事業)。しかし、

海上運送法第20条の2 第10条の3の規定は人の運送をする不定期航路事業(特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする不定期航路事業を除く。)について準用する。

つまり知床遊覧船にも安全管理規程が適用される事が明記されています。今回の事故では安全管理規程の中身と実際の運用がどうだったかが重要。また安全管理規程違反には罰則もあります。

ヒューマンエラー・事故防止から生まれた「安全管理規程」

安全管理規程は2006年10月、これまでの運航管理規程に代わり運輸安全マネジメント制度(運輸安全一括法)の施行により開始され、海上運送法に明記されました。前年2005年4月にはJR福知山線脱線事故、他にも当時ヒューマンエラーによる交通機関の事故が多発した事が背景にあります。

運輸安全一括法では経営トップのリーダーシップが明記され、安全統括管理者運航管理者の選任が義務付けられました。

また

「安全方針の策定」

「安全重点施策の策定」

「社内への情報伝達コミュニケーション確保」

「ヒヤリハット情報の収集と活用」

「安全マネジメント体制を確立するための教育・訓練」

「内部監査実施」

の維持を求めています。

更に事業者内部に安全風土、安全文化が構築・定着し、関係法令等の遵守する事が明記されました。

安全統括管理者と運航管理者については、海上運送法施行規則に安全業務の経験3年以上、国土交通大臣の命令で解任されてから2年を経過していない者の中から選ぶなどの要件が定められています。

売上・利益のために安全性は二の次という事業者があれば方針を変えさせるという国土交通省の方針がより明確に示されました。

目指す方向は良いのですが、当時の港で担当者だった私には教育・研修・訓練の度に報告書を作成する手間がより増えました。また大型船の場合、船内で幹部船員が報告書を作成する事も多く、彼らの事務仕事が増えて大変でした。

安全管理規程には国土交通省が定めるひな形がある!

海上運送事業者は安全管理規程を制定し安全運航しなければなりませんが、実は安全管理規程には国土交通省が定めたひな形があるのです。海上運送事業者は国土交通省のひな形に基づいて各社の各船・各港・各航路の状況に合わせて修正し、管轄する地方運輸局に届け出ます。また安全管理規程では運航基準、作業基準、事故処理基準及び地震防災対策基準を定めなければなりません。

国土交通省が定めるひな形(近畿運輸局HPより・外部リンク)

ガイドラインの手引(国土交通省HPより・外部リンク)

同業他社の安全管理規程はどうなっている?

知床遊覧船のHP(外部リンク)に安全管理規程は掲載されておらず、私が知る限り国土交通省や報道各社も知床遊覧船の安全管理規程全文を5月3日現在、公表・報道していません。そこで同業他社の安全管理規程を参照しました。

道東観光開発

おーろら(写真提供:網走市観光協会)
おーろら(写真提供:網走市観光協会)

知床遊覧船より大きな船「おーろら」で同様の航路を運航する道東観光開発の安全管理規程(外部リンク)がHPにあり、参考になります。

国土交通省のひな形(外部リンク)道東観光開発の安全管理規程(外部リンク)と順に比較すると、「第1章 総則」から「第7章 安全管理規程の変更」、「第9章 運航の可否判断」から「第15章 雑則」まではほとんど同じ。

ただ「第8章 運航計画、配船計画及び配乗計画」は会社によって船員の配乗・乗下船体制、配船計画作成が異なります。会社側で船員の全配乗を決める会社が多いですが、船長などの各部署の責任者が原案を作成し、問題があれば会社側が修正させる会社もあります。

今回の事故で特に注目すべきは19ページから24ページの運航基準(ウトロ)。特に第2章「運航の可否判断」では、

ウトロ港で

風速15m/s以上、波高1.0m以上、視程500m以下なら発航(多くの人が考える出港の事)中止

また

発航前において、航行中に遭遇する気象・海象(視程を除く。)に関する情報を確認し、次に掲げる条件に達するするおそれがあるときは、発航を中止しなければならない。風速20m/s以上、波高2.5m以上

ともあります。

「おーろら(総トン数491トン)」よりも小さい知床遊覧船なら、より厳しい条件で運航基準が決められなければならず、「おーろら」でも発航中止する状況で知床遊覧船が発航していれば誰が見てもアウトだと判ります。

更に道東観光開発以外の旅客船を運航する会社の中に、安全管理規程をHPで発表している会社があり、北海道発着の会社では2社見つけました。「おーろら」よりも大きな船を運航、海域が異なる点に留意して下さい。

津軽海峡フェリー

津軽海峡フェリー「ブルールミナス」
津軽海峡フェリー「ブルールミナス」

津軽海峡フェリーの安全管理規程(外部リンク)

商船三井フェリー

商船三井フェリー「さんふらわあさっぽろ」
商船三井フェリー「さんふらわあさっぽろ」

商船三井フェリーの安全管理規程(外部リンク)

まとめ

  1. 安全管理規程は海上運送法に基づき、知床遊覧船にも適用される。
  2. 経営トップのリーダーシップ、安全統括管理者と運航管理者の選任と業務が定められている。
  3. 安全管理規程には国土交通省が定めるひな形がある。
  4. 知床遊覧船の同業他社の安全管理規程が参考になる。

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