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北大卒業生も知らないクラーク博士の名言誕生の地!北海道北広島・旧島松駅逓所

宙船乗り物大好きライター・そらふね

"Boys, be ambitious(青年よ大志を懐け)"は、札幌農学校・現在の北海道大学の初代教頭だったウィリアム・スミス・クラーク博士の名言として知られています。しかし博士の名言はいつ、どこで生まれたかご存知でしょうか。多くの人は北大や羊ケ丘と考えそうですが、実は1877(明治10)年4月16日、札幌市の隣・北広島市島松で博士を見送った学生などに向けられました。

クラーク博士の名言が生まれた場所は旧島松駅逓(えきてい)所といいます。北大や羊ケ丘に比べればほとんど知られておらず、北大生や卒業生でも知らないし、行った事ある人もわずか。クラーク博士が寒地稲作という大志を抱き、成功した名士の家に行った時の事でした。

そんな歴史を知らないまま卒業し、何十年も経過した筆者がクラーク博士の名言が生まれた地を紹介します。

旧島松駅逓所の位置

旧島松駅逓所は札幌市中心部から見て南東、北海道大学本部から約24km、羊ケ丘展望台から約18km、新千歳空港から約22kmの場所にあります。

旧島松駅逓所と北大、羊ケ丘展望台の位置 (C)Google
旧島松駅逓所と北大、羊ケ丘展望台の位置 (C)Google

札幌農学校から約24km、学生らはクラーク博士を見送るため約4時間旧島松駅逓所まで歩いたのではとの事です。

旧島松駅逓所の歴史

駅逓所って何?

北海道北広島市は駅逓所を、交通不便の地に駅舎と人馬を備え、宿泊や人馬の継立、運送などの便をはかるために設置されたものと解説(外部リンク)車や鉄道がない、現代に生きる私たちには実感しにくい

ざっくり現代でいえば、

旅行代理店と宿泊施設が付いた道の駅で、レンタカー業者や貨物運送業者もすぐ近くにある総合ターミナル

と言えそうです。江戸時代後期、蝦夷地(北海道)を管轄する松前藩によって始められ、明治時代になっても続いた北海道独特の施設。開拓期の北海道の人やモノの流れを支える重要な拠点でした。かつて道内に600カ所以上ありましたが1947年(昭和22)に廃止され、現在跡はほとんど残っていません。

旧島松駅逓所の始まり

1873(明治6)年、道k内初の馬車道・札幌本道(函館ー札幌)の開通に伴って現在の恵庭市(島松川右岸)に設置。同年、寒地稲作という大志を抱き、成功した名士・中山久蔵(なかやまきゅうぞう)が北広島市島松に移転したのに伴い、元々久蔵宅だった建物を駅逓所として利用しました。

旧島松駅逓所(2023年8月撮影)
旧島松駅逓所(2023年8月撮影)

クラーク博士は北広島市島松の久蔵宅で昼食をとり、あの名言を学生らに残して帰国の途につきました。

現在の建物について

1881年(明治14)の平面図をもとに、1984年(昭和59)から保存修復工事を行って完成しています。管理は北広島市教育委員会が担当。

北海道米栽培の祖!中山久蔵

現在の大阪府に1828(文政11)年生まれ。26歳から仙台藩士に仕え、白老(北海道)ー仙台間を往来する生活を送ります。1869年(明治2)に北海道永住を決意し、1871年(明治4)に現在の恵庭市島松に引越。更に2年後の1873年(明治6)に北広島市島松に転居し、寒地水稲栽培に成功します。

北海道米は中山久蔵によって始まったと言ってもよく、ゆめぴりかは中山が栽培に成功した「赤毛」から幾度の品種改良が行われています。

クラーク博士が帰国して11年後の1884年(明治17)から島松駅逓所が1897年(明治30)に廃止されるまで、中山家が駅逓所の運営にあたりました。

旧島松駅逓所は冬季閉館!

旧島松駅逓所には中山久蔵の褒状の他、彼を解説したパネルが展示中。

中山久蔵の褒状
中山久蔵の褒状

中山久蔵の写真とパネル展示
中山久蔵の写真とパネル展示

更に1881年(明治14)、明治天皇が北海道を回られる巡幸中に立ち寄られた部屋も公開されています。

明治天皇が巡幸時利用された部屋
明治天皇が巡幸時利用された部屋

なお旧島松駅逓所の内部は例年4月28日から11月3日までの開館。冬季はお休みで外観しか見る事が出来ません(外部リンク)

冬の旧島松駅逓所(2023年3月撮影)
冬の旧島松駅逓所(2023年3月撮影)

旧島松駅逓所近くにある主な記念碑

旧島松駅逓所の隣にあるのが、「クラーク記念碑」と「寒地稲作この地に始まる」の碑です。

「クラーク記念碑」(右)と「寒地稲作この地に始まる」の碑(左)
「クラーク記念碑」(右)と「寒地稲作この地に始まる」の碑(左)

「クラーク記念碑」には、"Boys, be ambituios"、発言した1873年4月16日、及び和訳「青年よ大志を懐け」が記されています。

クラーク記念碑
クラーク記念碑

「寒地稲作この地に始まる」の碑右側には、中山久蔵が描かれています。

「寒地稲作この地に始まる」の碑
「寒地稲作この地に始まる」の碑

旧島松駅逓所へのアクセス

札幌と千歳、苫小牧、室蘭を結ぶ国道36号沿いといえますが、旧島松駅逓所があるのは旧道沿い。途中から現在の国道36号から分岐して進む必要があります。

旧島松駅逓所と国道36号旧道の位置  (C)Google
旧島松駅逓所と国道36号旧道の位置  (C)Google

マイカー、レンタカーでの訪問がお勧め。公共交通機関での訪問する場合、

①JR千歳線島松駅からタクシーで約10分
②現・国道36号を走る北海道中央バス・急行千歳線に乗り、「島松ゴルフ場(札幌寄)」か「島松沢(千歳寄)」下車。徒歩10分

両方のバス停から坂がある道を歩きます。またバス本数も少ないので、時刻を確認(外部リンク)してから乗車しましょう。なおこの路線はJR千歳線駅前発着です。飛行機を降りてから訪問する場合は、JRなどで千歳駅まで行ってから乗り換えとなりますので注意してください。

島松ゴルフ場バス停
島松ゴルフ場バス停

島松沢バス停
島松沢バス停

旧島松駅逓所利用案内

住所:北海道北広島市島松1-1
開館日:4月28日から11月3日まで
開館時間:午前10時から午後5時
休館日:月曜(祝日を除く)。祝日の翌日
入館料:大人200円、小中学生100円
電話番号:011-377-5412
なお冬季休館中は011-373-0188(北広島市教育委員会)

乗り物大好きライター・そらふね

地元北海道を中心に日本を旅するフォトライターです。フェリー・飛行機・鉄道旅が得意分野。船会社で船員管理・港業務・営業を経験後、旅行サイトでライターとなる。船・地方空港・名所・ホテルを紹介する記事を多く掲載しました。乗り物移動をより楽しくがモットー。

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