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JAXAの月面着陸成功の陰で、志半ばで地球大気圏へ突入し燃え尽きた月着陸機を追う

月着陸機「ペレグリン」©Astrobotic

1月20日、JAXAの月着陸機「SLIM」が日本で初めての月面着陸に成功しました!日本は世界で5か国目に月へ着陸した国となったのです、おめでとうございます!

しかし、その2日前となる1月18日、同じく月面着陸を目指していた宇宙機にトラブルが発生し、残念ながら大気圏へ突入し、燃え尽きてしまった月着陸機がいたことをご存知でしょうか。

JAXAの月着陸機「SLIM」を詳しく知りたい方はこちらの記事で

■月面着陸を目指した「ペレグリン」

月着陸機「ペレグリン」©Astrobotic
月着陸機「ペレグリン」©Astrobotic

月着陸機「ペレグリン」は、アメリカのアストロボティック社が開発した宇宙機です。35kgから265kgの荷物を月面に運ぶことができ、また目標地点に100メートルの精度で着陸可能な性能を持ちます。目標地点は粘りの入江と呼ばれる場所で15個のペイロードを輸送するとのことです。

その中には、皆さんも良く知るポカリスエットも搭乗しています。これは、ポカリスエットの粉末が入った缶を月に届けることで、将来人類が月に到達した際に、月の水でポカリスエットを飲むことを夢見ているとのことです。

バルカンロケット ©ULA
バルカンロケット ©ULA

そして2024年1月8日、ペレグリンは新たなアメリカの新型基幹ロケットである「バルカンロケット」で打ち上げられました。バルカンロケットは、アメリカのユナイテッド・ローンチアライアンス社が開発しており、全長は61.6メートルの2段式ロケットです。バルカンロケットとしては初めての打ち上げとなりましたが、無事に軌道投入に成功します。

順調に月への遷移が始まったペレグリンでしたが、ここで問題が発生します。推進システムにトラブルが発生し、姿勢制御が不安定となってしまったのです。宇宙機は太陽電池パネルを太陽へ向けなければ、バッテリーの充電ができず機体を喪失してしまいます。そこで、ペレグリンはエンジンを噴射することで何とか太陽の方向に太陽電池パネルを向けることに成功。しかし、この故障により燃料のほとんどを失ってしまったのです。残念ながら月着陸に挑戦することは難しくなってしまいました。ペレグリンは軌道上でデータの取得を続けていましたが、ここで新たな問題が発生します。

軌道上で撮影された月着陸機「ペレグリン」©Astrobotic
軌道上で撮影された月着陸機「ペレグリン」©Astrobotic

このままペレグリンをが軌道上を漂った場合、いつまたコントロールを失うかわからず、スペースデブリとなってしまう危険性があったのです。

そのため、アストロボティック社はペレグリンミッションを地球に大気圏突入させ、機体を燃え尽きさせることに決定しました。ペレグリンは1月18日に地球の大気圏へ突入したのです。

月着陸機「グリフィン」©Astrobotic
月着陸機「グリフィン」©Astrobotic

今回は残念でしたが、アストロボティック社は既に次の月着陸機打ち上げ計画を進めています。2024年後半には、新型月着陸機「グリフィン」を打ち上げ予定で、NASAの氷探査機バイパーを月の南極へ届ける予定です。次の挑戦も是非がんばって欲しいですね。

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