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JAXA月着陸成功の前に、世界最小の月着陸に挑戦した超小型月着陸機「OMOTENASHI」

超小型探査機「OMOTENASHI」©JAXA

2024年1月20日、JAXAの月着陸機「SLIM」は、日本初の月面着陸という快挙を成し遂げました!

そして実は、2022年にJAXAは最初の月着陸ミッションに挑戦していたことをご存じでしょうか。本記事では、世界最小の月着陸機「OMOTENASHI」について解説していきます。

JAXAの月着陸機「SLIM」を詳しく知りたい方はこちらの記事で

■NASAが主導する「アルテミス計画」

SLSロケット ©NASA
SLSロケット ©NASA

OMOTENASHIを説明する上で必須となる、NASAのアルテミス計画をご紹介します。NASAは、2020年代後半までに人類を再び月面に立たせ、将来の火星有人探査につなげていこうという計画で、日本も協力することを表明しています。この計画を実現するため、NASAはアポロ宇宙船を打ち上げたサターンロケットとほぼ同じサイズの巨大ロケットSLSを打ち上げました。宇宙飛行士が乗る宇宙船はオリオンで、今回は無人のオリオンが月のまわりを周回してから地球に帰還するまでの行程をシミュレーションします。

そして今回、オリオンと共に超小型探査機が相乗りとして全部で10機搭載されています。すべての超小型探査機は、質量14kg以内、サイズは11×24×37cm以内という厳しい制約を満たす必要があるとのことです。この質量とサイズで探査機を作るのは非常に難しそうですね。

■超小型月着陸機「OMOTENASHI」

OMOTENASHIの内部透視図 ©JAXA
OMOTENASHIの内部透視図 ©JAXA

本日ご紹介をする、JAXAが開発した月面着陸機「OMOTENASHI」は、世界最小のサイズで月面着陸を目指す計画です。さらに、もし成功すればなんと日本初の月面着陸を達成できるんですね。

OMOTENASHIは3つのモジュールで構成されており、月まで航行するためのオービティングモジュール、月面接近時にブレーキをかけるロケットモータ、着陸後に地球と通信する着陸モジュールで構成されています。

SLSロケットで加速したあと切り離されたOMOTENASHIはオービティングモジュールの機能で軌道を微調整しながら月へ向かいます。そして、月近傍に到着した後、ロケットモータで減速をし、着陸モジュールを月面へ届けます。

■皆さんを月探査時代に「OMOTENASHI」?

OMOTENASHI外観図 ©JAXA
OMOTENASHI外観図 ©JAXA

それでは、誰もが注目しているそのネーミングについても触れておきましょう。当初、SLSロケットは2018年に打ち上げられる計画でした。その頃には2020年に予定されていた東京オリンピックの直前であり、誘致の際の流行語としても皆さんに馴染みのある「OMOTENASHI」と名付けたの事です。そして、アルテミス計画をきっかけとしてこれから活発となる月探査に対して、最初に月に到着して皆さんを『おもてなし』したい、という意味も込められているとのことです。

■OMOTENASHIの打ち上げ

そして、2022年11月16日、SLSロケットにより打ち上げられたOMOTENASHIは、予定通り軌道上でSLSより分離をされました。しかし、ここで事件が起こります。JAXAは地上のアンテナによる受信を試みますが、OMOTENASHIからの電波が安定せず、探査機の状態を確認することができなかったのです。やっとの思いで通信を確立させたところ、なんと太陽電池が太陽と反対方向を向けて想定より早いスピンをしていることがわかったのです。

原因として推定されているのは、搭載していたガスジェット装置の不具合により、想定外のスピンが発生してしまったとのことでした。

スピンアップをしたOMOTENASHIのイメージ図 ©JAXA
スピンアップをしたOMOTENASHIのイメージ図 ©JAXA

JAXAは姿勢を安定させるため、ガスジェット装置によりスピンを停めようとしたり、太陽電池を太陽に向けるよう姿勢制御を試みました。しかし、超小型であるOMOTENASHIにとって、太陽電池から発電がない状態での姿勢制御は、小さなバッテリーにとって非常に厳しい条件でした。結果として、バッテリーの枯渇によりOMOTENASHIの電源はオフとなってしまい、それ以降通信機からの電波は途絶えてしまったのでした。

しかし、JAXAはまだあきらめません。月に到着するまでは約6日ほどの時間が残されており、もしその間にスピンの状態が変わって太陽電池での発電ができれば、再度通信が回復する可能性があるのです。JAXAは地上のアンテナによる懸命な探索を続け、地球からOMOTENASHIへ呼びかけを続けました。

しかし、OMOTENASHIが月に最接近すると推定された11月22日、OMOTENASHIの通信が再開されることはありませんでした。非常に残念ですね。月を通り過ぎたOMOTENASHIは今後、地球重力圏から脱出する軌道に遷移したとのことです。OMOTENASHIの探索に当たられたJAXAの皆様、大変お疲れさまでした。

今回SLIMが月面着陸を成功させることができて、OMOTENASHIの失敗が無駄になることなく本当に良かったですね。

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