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日本・中国の「太陽光発電衛星」開発競争、世界のエネルギー覇権を握るのはどの国に?

地上の10倍以上の効率で発電が可能な「太陽光発電衛星」もし実現できれば世界のエネルギー問題を解決できるほどの革新的な進展となるでしょう。

本記事では、建設に伴う技術的課題と、日本・中国の開発計画について解説していきます。

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■宇宙太陽光発電衛星ってどんなもの?

宇宙太陽光発電とは、軌道上に太陽電池を搭載した衛星を配置し、発電した電気をマイクロ波に変換して地上に送信するシステムのことを言います。

地上ですと夜は発電できませんが、宇宙では太陽の光を常に浴び続けることができます。更に、雨や曇りなども宇宙では存在しないため、発電できない日が存在しません。宇宙には空気による太陽光の吸収がないため、発電効率は地上の10倍と言われています。

■JAXAが将来に太陽光発電衛星を開発?

近傍運用フェーズの新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)©JAXA
近傍運用フェーズの新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)©JAXA

JAXAでは、太陽光発電衛星の実用化に向けて研究が進められています。最初のステップとして、国際宇宙ステーションに物資を届ける新型無人補給機「HTV-X」では、太陽光パネルの展開試験が計画されています。

今回の実験での太陽光パネルは縦2m、横4mほどですが、将来的には搭載するパネルの枚数を増やす予定であり、2030年代にはパネルは約30m四方、実用化段階では約2.5km四方に大型化する計画です。実用化すれば、原子力発電所1基分の1ギガワットの発電が見込まれています。現状では、大型パネルを配置するには、分割したパネルを数回に分けてロケットで運ぶ必要があり、膨大なコストがかかると推定されています。

是非HTV-Xの太陽光パネル展開試験、成功してほしいですね。ちなみにH3ロケットの完成の遅れから、HTV-X 1号機の打ち上げは2025年度へと延期となっています。

そして、宇宙での太陽光発電後、3.6万km離れた地上に送電する技術の確立も課題です。宇宙空間から無線でマイクロ波を地上に送る構想ですが、現状では、地上で約500m先に約10キロワットの電力を水平方向に送るので精一杯です。マイクロ波で送電する機能を持った発送電一体型のパネルは、経済産業省が完成を目指して開発が続けられています。

■中国も太陽光発電衛星を開発中?

中国で開発中の超大型ロケット「長征9号」©CALT / Wikipedia
中国で開発中の超大型ロケット「長征9号」©CALT / Wikipedia

続いては中国です。中国では、2008年に宇宙太陽光発電システムの建設計画がリストアップされ、2019年にテストが開始されました。近年中に小規模な発電テストを実施し、2030年頃にはメガワット規模まで発電量を上げる計画とのことです。ギガワット規模の商用太陽光発電システムは2050年までに実現するとされていますが、総重量約1万トンのシステムを組み立てるためには、強力なロケットが必要となります。

そこで中国は、太陽光発電システムを建設するために新しい超重量級のロケットを開発することを発表しました。それは、2030年に打ち上げ予定の「長征9号」です。重量約878トン、全長約57メートルもある超重量級のロケットです。同ロケットの積載量は高度約2,000kmの地球低軌道だと140~150トンまで積載可能だといいます。2020年11月に中国が打ち上げた月面探査機「嫦娥5号」の約8.2トンと比較すると、破格の規模であることがわかります。それでも、太陽光発電衛星の建造には100機以上の長征9号が必要だとしています。

各国で開発が始まっている太陽光発電衛星、

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