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火星着陸用「エアロシェル」JAXAが開発中のその驚異の大気圏突入技術とは?

JAXAが開発している大気圏突入機「エアロシェル」©JAXA

最近では、スペースXの宇宙船が国際宇宙ステーションと地球を行き来するのも珍しくなくなってきましたね。宇宙船に求められる難しい技術として、地球への大気圏再突入が挙げられます。

本記事では、JAXAが開発を進めている新しい大気圏突入機である「エアロシェル」をご紹介します。火星着陸ミッションへの使用も検討されているエアロシェル、その正体に迫っていきましょう。

史上最大の宇宙船「スターシップ」宇宙に到達するも大気圏突入後に空中分解

■大気圏突入の技術的難しさとは?

歴代のスペースシャトル©NASA
歴代のスペースシャトル©NASA

大気圏への突入というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。例えば、スペースシャトルや小惑星探査機「はやぶさ」のサンプルリターンカプセルなどが思いつくかと思います。これらが地球に再突入する場面では、非常に高温になっていることが想像しやすいかと思います。これは、実は空気との摩擦により発生している訳ではなく、超高速で機体と空気が衝突するため、空気の逃げ場がなくなり急激に圧縮されることにより熱が発生しているのです。

機体表面では1000度を超える超高温となっており、アポロ宇宙船の頃から採用されていたこの方式では、いかに高温や空気から受ける力に耐えられる設計ができるかが勝負でした。

■画期的な新突入方式「エアロシェル」

展開型エアロシェル実験超小型衛星(EGG)©JAXA
展開型エアロシェル実験超小型衛星(EGG)©JAXA

そんな中、新たに出てきた再突入方式が「エアロシェル」です。エアロシェルはカプセルのような固い構造ではなく、やわらかい構造を使用しています。

これは折りたたんで収納し、宇宙でガスを注入することによる展開もできることから、軽量、大面積を確保することができるのです。そして、エアロシェルを広げた状態で大気圏に突入することで、軽い機体が大きな面積で空気を受け止めることができ、効率良くブレーキをかけることができるのです。そのため、カプセル方式で苦労していた空気による加熱も非常に小さく抑えることができる革新的なシステムなのです。

更に、はやぶさのカプセルでは大気圏突入後にパラシュートを展開してゆっくり落ちて来ましたが、エアロシェルはそれ自体がパラシュートの役割を果たすこともできます。最終的には海に落とせば浮き輪の役割も果たし、海上に浮いていることもできる、まさに一石何鳥かもわからない便利な方法なのです。

■あの「機動戦士Zガンダム」にもエアロシェルが登場!?

ここまで説明すれば皆さんもお気づきかと思いますが、あの機動戦士Zガンダムにもエアロシェルは登場しています。ガンダムをこよなく愛す皆様にご説明するのは野暮かもしれませんが、あの「バリュート」です。

クワトロ大尉たちが地球に再突入する際に、モビルスーツを保護するために使用されたあれですね。一方、カクリコン中尉は、ガンダムマーク2のフライングアーマーにバリュートを破裂されたことにより、そのままマラサイごと燃え尽きてしまいました。まさに「アメリア、、」って感じですね。

ちなみに、Zガンダムはバリュートを使用せず、機体からショックウェーブを発生させ空気からの熱を避けているそうです。

次回の記事では、エアロシェルを実際に宇宙に打ち上げたJAXAによる実証試験、そして火星着陸ミッションへの利用構想をご紹介します。お楽しみに!

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