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【堺市】さかい利晶の杜「与謝野晶子の温泉紀行」は、旅情感たっぷりな企画展だった

旅人間はらぺこライター

はらぺこライターの旅人間です。

今回は大阪府堺市にある「さかい利晶の杜」で開催中の企画展を紹介しましょう。この企画展、旅行好きな人は特に要チェックです!

「与謝野晶子×吉田初三郎 与謝野晶子の温泉紀行」
会期:~令和5年1月15日(日)
時間:9時~18時(最終入館 17時30分)
観覧料:大人300円、高校生200円、中学生以下無料

さて、与謝野晶子って、どんな人物か知っていますか?

与謝野晶子と言えば、「みだれ髪」や「君死にたまふことなかれ」など情熱的な歌で知られる天才歌人。そして、多くの旅に出かけたことでも知られています。

温泉地など行くと ”与謝野晶子の歌碑” を見かけたり…。意識すると「ココにも来てたの!?」ってアチコチで驚かされます。

次に、吉田初三郎について。

この人物は、全国各地の景観を描いたアーティスト。例えば、それは大正時代から昭和時代にかけてパノラマ式の観光図・鉄道図・都市図・ポスターなどの作品で知られています。

その画風を見れば、今私たちが目にしている「観光図の原点はココだったのか!」って驚き感じると思います。

そんな2人の世界観をコラボした企画展、面白そうですね!

では、企画展を見てみましょう!

テレビなどで時々「文豪ゆかりの宿」なんて紹介されているのを目にする事があります。明治以降の文豪たちは、原稿を執筆のため温泉宿に長逗留し、近代日本文学史上に残る名作を数多く残してきました。

例えば、夏目漱石の『坊ちゃん』は愛媛県の道後温泉、志賀直哉の『城の崎にて』は兵庫県の城崎温泉、あまりにも有名ですね。

生涯にわたって多くの旅にでかけた与謝野晶子も…

と思ったら、実は、晶子は原稿執筆のためではなく、講演会などの出張旅の傍ら、慌ただしい温泉入浴が多かったのだとか。

晶子にとって温泉は日常の疲れを癒す貴重な時間となり、心身ともにリフレッシュし感性は磨かれ、各地で素晴らしい詩歌を残しています。

同じ時代に、全国各地の景観を描いた吉田初三郎がいます。

彼が残したパノラマ地図と晶子が訪れた温泉地で残した詩歌を重ねてみると、頭の中で不思議な化学変化が起こります。

こちらは『富士身延鉄道沿線名所鳥瞰図』。

昭和3(1928)年に全通した富士身延鉄道の沿線案内図で、縦54cm、横248cmの作品です。

また、初三郎の作品は遠景に富士山を入れるのがお約束だそうですが、ここでは遠景でなく中心にドン!と富士山が描かれています。

それにしても、見ているだけで旅情感が沸いてきます。

雲と云ふ急げるものも音なくて
静けき春の高原の昼 与謝野晶子

頂きの見えざる富士をつたひ行く
秋の終わりのわが旅路かな 与謝野晶子

デジタル化が進んだ現代は、すぐに映像が出てきます。想像する暇もなく映像で全てが表現される時代。とっても便利で快適ですが、心の中に長く滞在しないような…。

当時の風景画の詩歌、その情景をゆっくり想像してみると、表面的な「映え」的なモノではなく、奥深いものがやってくるような心地になります。

この気持ちを持って、旅をすると、どんなに楽しいんだろう…なんて思ったりも。

面白いモノを発見しました。

右上です。

先ほど、「初三郎の作品は遠景に富士山を入れるのがお約束」と書きましたが、右上にはハワイとサンフランシスコが…!

逆に左下には朝鮮半島・台湾も見られます。これはぜひ実物で見て下さい。

他、『霧島・林田温泉ポスター』と『料亭水月を中心とせる日田案内図』です。

こちらは昭和3(1928)年に描かれた縦54cm、横245cmの日田温泉の料亭水月を中心に描いたもの。当時の様子が分かる貴重な作品です。

ここでも遠景に富士山が描かれています。初三郎の目には九州からも富士山が見えていたのかもしれません。

そして、昼間なのに三隈川に浮かぶ鵜飼い船に ”夜のかがり火” が描かれます。これは桜と紅葉を同一画面で表現する手法と同じ表現方法、これもまた観光図の面白さでしょう。

鵜の鳥がしばし沈みてもたらすは
夕月型の青みたる魚 与謝野晶子

ほのかにも宵の鵜船の煙ほど
日田の夜明に青む山かな 与謝野寛

鵜飼いを楽しんだ夫婦の様子が思い浮かんできます。

こちらは『丹那トンネル開通の熱海温泉図』です。

鉄道、温泉、富士山という初三郎作品の魅力的な要素が盛り込まれています。

パノラマ式の観光図は、どこか懐かしい気持ちにさせてくれます。

如何でしょうか?吉田初三郎という人物にグッと興味が沸いてきますよね。

そして、旅がしたくなります。

ちなみに、この企画展「与謝野晶子×吉田初三郎 与謝野晶子の温泉紀行」では、手に取って見られる資料が用意されています。

例えば、与謝野晶子が訪れた温泉地は114ヶ所。それが都道府県別に、温泉名や宿泊旅館、また目的などが一覧になっています。この一覧表は持って帰れます。

また、この企画展の部屋は意外と明るく、説明の文字フォントが見やすいのも特徴です。一般的に展示作品は、強い光に弱い性質があります。

そこで、展示ケースの中の照度を落とし、ケースの外を可能な限り明るくしているのだとか。展示ケースは上から見やすいよう、かさ上げされているのが分かります。

尚、この企画展では、ケース内展示資料30点、貴重なパノラマ地図の拡大写真や温泉についてのパネル72点、100点余りの作品が楽しめます。

補足(与謝野晶子記念館)

この企画展の隣には「与謝野晶子記念館」があります。

ここでは、晶子と寛の歩んだ生涯と業績を紹介され、執筆活動をしていた書斎をイメージし再現したものや、晶子の美しい筆跡を間近に見る事が出来ます。

晶子の生家「駿河屋」がほぼ実際のサイズで再現されています。

そして、「与謝野晶子記念館」を出たら、まっすぐ奥に進んでみて下さい。

大きな窓の向こうに、1本の道が見えます。ここは与謝野晶子が歩いた道。茶色いマンションの手前を右に曲がると、晶子の生家跡に到着します。

また、「さかい利晶の杜」のすぐ隣には千利休屋敷跡伝承地があります。与謝野晶子と千利休、生きた時代は違えど、この空間に偉人が2人も住んでいたと思うだけで、大きなロマンを感じてなりません。

「与謝野晶子×吉田初三郎 与謝野晶子の温泉紀行」
令和4年11月12日(土)~令和5年1月15日(日)

⇒詳細は公式サイト(外部リンク)にてご確認下さい。

さかい利晶の杜
住所:大阪府堺市堺区宿院町西2丁1番1号
電話番号:072-260-4386
開館時間:9:00〜18:00
休館日:第3火曜日(祝日の場合は翌日)及び年末年始
公式ホームページ(外部リンク)
公式Instagram(外部リンク)
公式Twitter(外部リンク)
地図(外部リンク)
取材協力:さかい利晶の杜

はらぺこライター

アメリカや東南アジア、インドなどへの一人旅、タイの首長族の村に泊まった体験談など2005年から始めたブログをキッカケに旅行サイトから声がかかる。トラベルjpでは新人賞、年間アクセス1位賞、SNSで拡散されたソーシャル賞を受賞。またグルメサイトで連載、吉本興業の公式ライターなどを経て現在に至る。 当Yahoo!ニュース エキスパートでは主観的な目線で旅やグルメをテーマに記事を書いている。

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