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【あべのハルカス美術館】トリックアートより衝撃的!? この夏、絶対に見にいくべき現代アート

旅人間はらぺこライター

はらぺこライターの旅人間です。今回は驚きの現代アートについて。

大阪の天王寺駅スグ「あべのハルカス美術館」で9月3日(日)まで開催している『超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』はご存知でしょうか?

実際に見に行くと、これが信じられないほど凄いんです。

この企画展は2019年に好評だった続編で、驚きの技による精巧な工芸作品を集めたもの。2023年の今回は現代作家を中心に約120点の作品が並んでいます。

明治時代に世界で注目された工芸作品の流れをくみつつ、新たな領域に挑む現代作家の新作を中心に展示されています。

「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」
あべのハルカス美術館
場所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F
開催期間:~ 2023年9月3日(日)
公式ホームページ(外部リンク)

<ギャラリートーク&デモンストレーション開催>
8月5日(土)①18:00~19:00 ②19:30~20:30
※詳しくは公式ホームページにて

あべのハルカス美術館とは?

あべのハルカス美術館は、高さ300mを誇る超高層複合ビル「あべのハルカス」の16Fにあり、年間4~5本の企画展を開催しています。ジャンルは幅が広く、現代アート、西洋美術、日本美術などさまざまです。

広すぎず、狭すぎない、だから1~2時間で手軽に見られるのも魅力のひとつ。

そんな、あべのハルカス美術館で開催中の…

「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」について簡単に紹介しましょう。

例えば、ポスターだけをみたら「スルメの展示?」「なんじゃこりゃ?」って思いますよね。でも、よく見て下さい。

小さく「じつは木彫!」とあります。そう、このスルメは本物と見間違えるほど精密に作られた木で彫られたもの。まさに超絶技巧、そんな作品が色々とみられます。

前原冬樹さんの作品

入館すると…

案内ポスターの表紙になっていたスルメがスグに目に飛び込んで来ます。こちらは前原冬樹さんの「《一刻》スルメに茶碗」という作品です。

「《一刻》スルメに茶碗」
「《一刻》スルメに茶碗」

どこから見ても本物のスルメにしか見えず、「木から彫られたもの」と言われても信じられないほどリアル。欠けた茶碗も陶器ではなく木彫です。

しかも、一木造りというから驚きです。

もちろん、この木のクリップと金属部分も一つの木から掘り出されたもの。

パーツを組み合わせて作られたものではなく、1本の角材を切り、削り、成形して着色された一木造。繰り返しますが、一つの木から作られた現代アートなのです。

どの角度から見ても、本物のスルメにしか見えません。

ニオイまで感じそう…。

「《一刻》グローブとボール」
「《一刻》グローブとボール」

続いて、こちらも前原冬樹さんの作品「《一刻》グローブとボール」です。

同じく一木造です。油絵具を塗って仕上げるそうですが、本物(使い古されたグローブとボール)にしか見えません。

前原さんの作品には《一刻》というタイトルが付けられています。

これは木を刻むという意味の中に、時間を彫っているという意味も込められているという。打ち捨てられているモノ、長い時間をかけられたモノ、それらを時間をかけて刻々と作品にしていく…。知れば知るほど奥深さを感じます。

松本涼さんの作品

「涅槃(ねはん)」
「涅槃(ねはん)」

次に紹介するのは木彫作家の松本涼さんの作品。素材を薄さ数ミリという限界まで彫り込み、生と死の境界を連想させる形を作り上げている点に注目したい。

例えば、「涅槃(ねはん)」は観賞用の菊の中でも最大級の大菊をモチーフにし、その枯れゆく姿を涅槃仏(悟りを開いて入滅する釈迦の姿)に見立てたという。

松本さんにとって、木彫とは「木の死体を素材として別の命を与えること」だという。つまり、死から生を生み出す作業なのだと。

作品のほぼ全ては樟(くすのき)を素材とし、木の年輪を浮き上がらせるように彫る。年輪に時を感じ、境界を超えて甦る様に彫り進められています。

「輪廻」
「輪廻」

この作品は「輪廻」。一本の木から継ぎ目なく、風車は風で回わります。

松本さん曰く、古くから死者の魂が集まると伝わる恐山でカラカラと回る風車から輪廻転生を連想させた作品だそうですが、見ているだけで吸い込まれそうな存在感です。

岩崎努さんの作品

「嘉来(柿)」
「嘉来(柿)」

あまりのリアルさに思わず二度見してしまう岩崎努さんの作品「嘉来(柿)」。どこら見ても本物の柿にしか見えません。

木から彫られたというだけでも驚きですが、まさかの一木造り。

一体どうやって作るのか?

岩崎さんのお話ではプラモデルを作る時のような補強部分となるランナー(パーツの周囲を取り囲んでいるプラスチックの棒状の部分)を付けておいて、彫りすすめ、削り終えて、その補強部分を取り除くという。

「さくらんぼ」
「さくらんぼ」

とは言え…

この「さくらんぼ」を見ると、「これも一木造り?」「可能なの?」と驚かされます。

こちらも同様に補強部分となるランナーを付けて作成され、2本だと構造的に折れやすくなるので、ここは意識的に3本にしているのだとか。

次元の高さに、ただただ唖然としてしまいます。

福田亨さんの作品

「吸水」
「吸水」

こちらは福田亨さんの作品「吸水」です。板の上に水滴があり、そこに三匹のアゲハチョウの姿が見えます。よく見ればトリックアートより大きな衝撃を受けるかも!

例えば、当然ながらココで見える水滴は「水」ではありません。何かを塗ったり、付けたりもしていません。この台座の部分は一木で掘り出されています。

では、この水滴に見えるのは何か?

驚くべきことに…水滴に見える部分を残し、板を掘り下げているのだとか。さらに盛り上がっている部分に研磨を重ねてツヤをあげて水滴に見えるよう表現しているのだという。

さらに、福田さんの作品は一切着色していないのも特徴で、アゲハチョウの黄・黒・青も全て生の木の色を使っています。

要するに色味の違う木を途方もなく薄くし、はめ込んだもの。

福田亨さん
福田亨さん

でも「アゲハチョウの青い部分は?青い木なんてあるの?」って思いますよね。

福田さん曰く、この青い部分は朽木(腐った木)に菌が発生している部分を薄く切り取り乾燥させたモノを使用してるのだとか。いやいや、本当にスゴイです。

最後に…

今回は『超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』にて展示されている4人の作品の一部を紹介しましたが、木彫以外にも、漆工。金工、陶磁など。現代アートだけでなく、そのルーツとなった明治工芸の逸品も展示されています。

開催期間は9月3日(日)まで!

絶対に見に行く価値ある企画展、実際に目で見ると驚きの連続です。

あべのハルカス美術館
場所:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16F
電話番号:06-4399-9050
<『超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA』>
開催期間:~9月3日(日)
開館時間:火~金は10:00~20:00
(※月土日祝 は10:00~18:00)
入館料:一般1,600円/大高生1,200円/中小生1,200円
公式ホームページ(外部リンク)
地図(外部リンク)
取材協力:あべのハルカス美術館

はらぺこライター

アメリカや東南アジア、インドなどへの一人旅、タイの首長族の村に泊まった体験談など2005年から始めたブログをキッカケに旅行サイトから声がかかる。トラベルjpでは新人賞、年間アクセス1位賞、SNSで拡散されたソーシャル賞を受賞。またグルメサイトで連載、吉本興業の公式ライターなどを経て現在に至る。 当Yahoo!ニュース エキスパートでは主観的な目線で旅やグルメをテーマに記事を書いている。

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