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【泉佐野市】昭和ノスタルジーが色濃く残るラーメン屋台「大統領」。愛され続けた“伝統の味と人情”の今

旅する日々の記憶と記録。matka08ライター(泉南市・泉佐野市)

夜中に響くチャルメラの音。

「夜鳴きそばといえば大統領」。泉州地域で育った昭和世代の方は、この合言葉に共感いただけるのではないでしょうか。

そのラーメン屋台「大統領」実店舗は今も泉佐野にあり、創業者のご子息 伊藤 秋彦さんと奥様の早苗さんが”伝統の味と人情“を守り続けています

南海「泉佐野」駅から徒歩5分。50年以上共に歩んできた年季が入った「屋台」がお店の目印です。

手書きのメニューは、令和のお値段とは思えないほどのやさしさ。

屋台奥に飲食スペースがあり、3人がけの長机が2つ、4人がけの机が1つ置かれています。

昭和レトロな雰囲気の店内は、まるでココだけ時間が止まっているかのよう。BGMで流れる山口百恵さんの懐メロが、より気分を盛り上げます。

「うちのメニューはこれだけなんです 笑」と、早苗さん。

*料金すべて税込
*料金すべて税込

「『ひらてん』と『もちきん』は、その日によってあったり、なかったりするの。今日はありますよ~」。

昭和30年代創業のラーメン屋台「大統領」は、全盛期は泉州地域に15人ほどの引き手がいたのだそう。“チャルメラが鳴ったら「大統領」が来た!” と、子ども心にワクワクした想い出を泉州で育った友人たちは口にします。

「24時間営業のコンビニが出来てから、商売は衰退しましたね。夜中にいつでも食べたいものが買えるから」と秋彦さん。その後引き手も減り、軽トラで営業を続けるもコロナの大打撃も受け、今の営業スタイルになっていったとのこと。

現在、引き手(軽トラで営業)はフランチャイズ化され、泉佐野市岸和田市貝塚市3台が稼動。19時~深夜1時まで営業していた店舗も、コロナを機に12時~22時までの営業時間に変更したそうです。

「当時は泥酔したお客さんのお相手をすることもありましたが、今ではすっかり客層も変わり、ご家族連れや会社員の方が多くなりましたね。そうそう、千代松市長も食べに来てくれたんですよ。とても気さくな方でした」。

お話の途中、ふらっと子ども連れのおかあさんが来店されました。おでんをお持ち帰りされるようです。

味がしゅんでる熱々のおでん。1本80円で気軽にお持ち帰りできるお店も今はそう多くはないはず。わたしも取材後、持ち帰りいただきましたが甘く懐かしい味のおでんを食べながら古き良き時代を想い出し、目頭が熱くなりました。

寒い冬に熱々をフーフーしながら“食べ歩き”したくなるようなおでん。「あー、しゅんでるなー!」と思わず言葉を発してしまいそうになる、そんなおでんです。

おでんを容器に詰め、おやつをサッと差し出す早苗さん。“人情屋台”の名残を感じさせるさりげないやりとりが、どこか懐かしく心に沁みます。

鶏ガラと豚ガラで丁寧にとった澄ましスープに、自家製チャーシューを作る際に出る秘伝の中華だれ(醤油ベース)を加えたラーメンスープは“伝統の味”そのままだそう。

早速いただいてみることに。

手際よく屋台で準備をはじめる秋彦さんと早苗さん。

今では、こんな屋台での作業風景もあまり見かけなくなりました。

塩ラーメンと勘違いされるというスープは、見た目より濃厚で滋味深い味。途中白湯スープのようなまろやかさも感じられ、とろとろの自家製チャーシューたまごメンマもやしナルトのりねぎの豪華なトッピングは目にも鮮やかです。わたしは、泉州育ちではないため「そう、そう、これが大統領の味!」とお伝え出来ないのが残念ですが、この記事を読んで懐かしいと感じた方に一度食べてみてほしい守り続けた“伝統の味”は今もここにあります

お持ち帰り用のラーメンは、「生麺のまま」or「調理後にお持ち帰り用の丼にセットしたもの」のいずれかを選べるそうです。調理する場合は、麺はかために茹でてくれるとのこと。

店主の伊藤 秋彦さんと底抜けに明るい奥様の早苗さん。

実は早苗さん、「元芸人さんですか?」と思わず突っ込んでしまうほどのおしゃべり上級者。次から次へと飛び出す“おもしろエピソード”にお腹を抱えて笑うこと数時間。早苗さんとのおしゃべり目当てに訪れる方もいるというから「大統領」のアイドル的存在です。

「知り合った頃はおとなしかったんやけどな~」と横で微笑む秋彦さん。下がりっぱなしの目尻が、おしどり夫婦であることを証明しています。

3年前に生死をさまようほどの大病を患ったという秋彦さん。お店をたたむことを考えなかったのかとお尋ねすると、「心臓が7割残ると知り、“できる”と思った。ただ『大統領』を残したい、その一心のみです」。

復帰後は後継者問題も含めて悩んだといいます。そこで白羽の矢が立ったのが妹さん親子。お手伝いを申し出てくれたそうです。

現在、火曜日と木曜日は妹さんと甥っ子さんが担当。火曜日と木曜日にだけ登場する“スペシャルメニュー”もあるそうで、アイデアを出し合いながら盛り上げてくれているのだとか。

そんな中、またふらっとお客さんが…

「みーちゃんやん~♪」と、早苗さん。

「この辺りのねこちゃんたちは幸せです。みんなやさしいから。保護活動をされている方のご協力もあり、地域ねことして生活を共にしているねこちゃんたちもいるんですよ」。

岸和田で生まれ育った早苗さんと、生粋の泉佐野っ子の秋彦さん。

ふたりが織りなす空気感がとても心地よく、まるで別世界にいるようです。

昭和ノスタルジーが色濃く残るラーメン屋台「大統領」

愛され続けた“伝統の味と人情”は、「大統領」を残したい人々の想いで、今も大切に守られています

【基本情報】

店名:「大統領」
住所:泉佐野市若宮町7-1
営業時間:12:00-22:00
定休日:日曜
取材協力 「大統領」店主 伊藤 秋彦様、早苗様
*記事内容は取材当時のものです。

ライター(泉南市・泉佐野市)

なんでもない日々を旅するように暮らす日常写真家。「ローライ35s」という小さなフィルムカメラでささやかな日常を記録しています。私たちの町のちょっとうれしくなるあんなことこんなこと。皆様の日常がもっともっと楽しくなりますように。

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