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【泉南市】え?ここが『こども食堂』? 意外なスポットで振る舞われた「温かな団らん」/ 大人200円

旅する日々の記憶と記録。matka08ライター(泉南市・泉佐野市)

みなさんは「こども食堂」を利用したことはありますか?

唐突な質問に戸惑うかもしれません。

「そもそも“みなさんは…”って、そんな誰でも利用できる場所じゃないでしょ?」

という声が聞こえてきそうです。

みんなの「こども食堂」

「こども食堂」とは、貧困家庭や孤食の子どもに対して、地域住民のボランティアや自治体が主体となり、無料、または安価で栄養のある食事や温かな団欒を提供する場のこと。ところが、近年は、親や地域の人々、年齢に関係なく誰でも利用できる「こども食堂」が増えています。

「こども食堂」は、みんなの「食堂」

みんなで一緒にごはんを食べる”ことに大きな意味があるようです。

意外なスポットに「こども食堂」がオープン

2月10日土曜日、やって来たのは樽井にある由緒あるお寺「浄土真宗本願寺派 専徳寺」(明応3(1494)年創建)。

(画像提供 「ひとふで」)
(画像提供 「ひとふで」)

「こども食堂」がお寺で開催されると知り、「お寺でこども食堂?」と意外に感じましたが「お寺ごはん」は全国的にも広がりをみせています。

「お寺ってどんなところ?」「なんか安心感がある」など、気軽にお寺に足を運べるメリットや、“長きに渡り街を見守る由緒ある場所”という安心感が人気の理由のようです。

可愛らしい手づくり看板と素敵なお花がお出迎えしてくれました。

お寺にこんな “ウェルカムボード” があることも なんだか新鮮に感じます。

ご高齢のお母様を気遣う息子さん? でしょうか。お母様と見られる女性は、「専徳寺に初めて来た」とのこと。美しい境内では、ほころび始めた梅の花や、江戸時代の名工・奈良利の「天水桝」を支える 異なる表情の「力士像」の姿を見ることもできます。

ぷっくりとしたピンクの梅の花がかわいらしい
ぷっくりとしたピンクの梅の花がかわいらしい

一体一体 違う「力士像」の表情がユニーク
一体一体 違う「力士像」の表情がユニーク

お? “こども店長” 登場? この「こども食堂」を手掛ける「ひとふで」の籠原 紀子(かごはら のりこ)さんの娘さん しのちゃん です。

「ひとふで」とは、昨年開催された「タルイカイギ」から生まれた団体。

現在、「専徳寺」で整骨院を営む木村 胤城(つぐき)さんが代表を務める「カラビンカ食堂」と、籠原さんが代表を務める「白鳥(はくちょう)食堂」が所属し「こども食堂」を運営しています。

「お寺ごはん」は「ひとふで」主催で、ここ「専徳寺」の厨房を借りて開催されます。

前回取材をさせていただいた「タルイカイギ」で「こども食堂」の構想はお聞きしていたものの、まさかこんなに早く実現されるとは…。今回の開催は2回目で、昨年の12月30日に開催された第一回「こども食堂」では、「餅つき体験」や「豚汁」「たまご焼き」が振る舞われ、初めての試みにも関わらず50人ほどの地域の方が楽しまれたそうです。

厨房の様子

今日のメニューは、「うどん」「かやくご飯」です。

美味しそうな出汁の香りが充満する厨房で、慌ただしく準備をする籠原さんと楠(くすのき)さん。

写真左から 籠原さんと楠さん
写真左から 籠原さんと楠さん

お寺で開催される「こども食堂」は予約制ではない(先着30食)ため、どれほどの人が集まるかわからない中、食事の準備を進めていきます。

楠さんも「タルイカイギ」のメンバーの一人で、今日はお手伝いに駆けつけてくれました。

「こども食堂」で使用する食材は、地元で事業や農園をされている方、趣味で野菜を育てている方からの寄付によるもの。寄付してくださった方々の想いごと、心を込めて調理していきます。

かやくご飯のおにぎりも完成! (画像提供 「ひとふで」)
かやくご飯のおにぎりも完成! (画像提供 「ひとふで」)

笑い声や「おいしいね!」の声でお寺はだんだん賑やかに

食事スペースは厨房横の和室が用意されていましたが、今日はポカポカ陽気のため境内にもテーブルをセッティング。みなさん思い思いの場所でお食事を楽しまれていました。

参加費はこども無料、高校生以上は200円を先にお支払いします。

この料理が誰でも、大人(高校生以上)でも200円で食べられるよろこび。

もちろん「一食分節約したいわぁ」なんて家族も大歓迎。どんな動機であっても、この場所をみんなで利用することに意味があると感じます。

荘厳なお寺でいただく「温かいごはん」。

ゆるりとした時間がながれていきます

少しずつ参加者も増えはじめ、笑い声や「おいしいね!」の声で お寺はだんだん賑やかに。

(画像提供 「ひとふで」)
(画像提供 「ひとふで」)

大人の話に熱心に耳を傾けるしのちゃん。その表情は真剣です。

左の女性は「タルイカイギ」の主催者の一人「PAVOハンドメイド雑貨店」の中西さん。ご自身も砂川で「こども食堂」(くじゃく食堂@砂川老人集会場)を運営されていて、今回の「こども食堂」に食材の寄付もされています。

「こども食堂」同志の繋がりや支え合いもあり、街に優しさの輪が広がっています。

知っている人、知らない人、年齢や性別、職業に関係なく集まれる場所。

みんなで食べるごはんの美味しさや楽しさ、そんな「温かな団らん」を届けていきたい、と籠原さんは話します。

中にはこんな参加者も。

ご当地アイドルとしてご活躍中の「泉州バイオレット」の右近 彩花(うこん あやか)さんです!

泉南市のイベントでダンスを披露したり、ちびっこにダンスを教えたりと精力的に活動されています。

若いのに地域に貢献されていて立派だなぁと感じます。何より とても生き生きとしています。

3月31日(日)に開催予定の「海のマルシェ」にも出演するそうですよ!

みんなで応援しましょう! がんばって、彩花さん!

食事を終えた子どもたちが、境内で「だるまさんが転んだ」をして遊んでいました。

そんなルールあったっけ?? どうやら昭和世代のわたしは知らない「だるまさんが転んだ」の “新ルール” が出来ているようです !

そう、そう、こういうのもいい! 古くから伝わる遊びも現代風にアレンジされていて、しばらく眺めていたけれどおばちゃん(わたし)は ちんぷんかんぷん。

これに限らず、大人も子どもに教えてもらえることはたくさんありそうです。

「こども食堂」は大人が “心に新鮮な風を送り込む場所” でもあるのですね。

「こども食堂」への想い

ご事情があり、ひとりで子どもたちのお世話をする時間が多かった籠原さん。

子どもたちが寂しい想いをしているのでは、といろんな「こども食堂」や「マルシェ」に足を運ぶようになったといいます。

そこで、みんなでごはんを食べることの楽しさ、たくさんの笑顔に触れるよろこびを知り、異世代の方々が何気なく集まれる場所をつくりたいという想いを募らせていきます。

「子どもたちがお手伝いに参加できる場所もあり とてもよろこんでいます。

ある『こども食堂』では、『自分で盛り付ける』『靴を揃える』『挨拶をする』といった当たり前のことをちゃんと教えてくれて “ご近所コミュニケーション”が希薄になった現代社会で ご近所のおじちゃん、おばちゃん的な役割を果たしてくれる大人たちの存在をとても有難く感じました。

“おばあちゃんの家”みたいな『こども食堂』をつくりたいなぁ」と実体験も交えて話してくださいました。

参加者の声

ご当地アイドル 右近 彩花さんのご家族に 第2回「こども食堂」の感想を伺いました。

お母様は、JR新家駅前でレンタルスペース「mi.i(ミイ)」を経営されていて、今回の「こども食堂」に食材の寄付もされています。

お母様(右近 三恵子さん)
初めて子どもたちと参加させてもらいました。手作りの温かいごはんをすぐ運んでくれて、200円でいただけるなんて…。また来月も楽しみになりました!

長女(右近 彩花さん)
初めて「こども食堂」にお邪魔しました。子どもたちと話をして楽しかったし、ごはんも美味しかったです。

次女(右近 朋花さん)
いっぱい遊べて楽しかったし、うどんが美味しかったです。

昭和の“ご近所コミュニティ”を再現した場所

共働き家庭が増えた昨今、貧困家庭に限らず “一家団らん” の機会も少なくなってきたように感じています。また、悲しいかな、人との関わり方も一昔前とは違ったものに。わたしが幼い頃は、遊んでいて喉が渇いたら近所の家によくお茶を飲みに行っていました。ついでにお菓子も出してくれたりして、“お得気分”を楽しんでいました。「あの家は大好きな梅干しを出してくれる(梅干し好きのおてんば娘でした!)」「あの家のお父ちゃんは決まっておもろい話をしてくれる 」「あの家はお昼ごはんも食べさせてくれる!」など、幼心ながら優劣をつけていた“ちゃっかり娘”だった記憶もあります。

そこにある 家庭とは違うお茶の味や、部屋の雰囲気、“親ではない大人たち”の常識みたいなものが妙に新鮮でワクワクしたものです。

安心できる場所で異世代の人と関わることが出来て、みんなでごはんを楽しく食べられる場所。昭和の“ご近所コミュニティ”を再現した場所が「こども食堂」なのだと感じます。

今後の予定

「ひとふで」の活動は、現在「こども食堂」のみですが、今後は色々展開していきたい、と籠原さんは話します。

今後の活動については、「ひとふで」公式インスタグラム(外部リンク)で随時お知らせがありますので、まずはフォローを。

第3回「こども食堂」は、3月9日(土)12時~14時 「浄土真宗本願寺派 専徳寺」厨房で開催されます。

*申し込み不要(先着30食)

*参加費用 子ども無料/高校生以上200円(次回の子ども食堂の食材費として使用)

*アレルギー対応はしておりません。

次回のメニューは「ワンプレートランチ」(内容は当日のお楽しみ)だそうですよ!

梅の花の開花も進む頃、お寺でゆったりとしたひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか?

「できることをお手伝いしています」と縁の下の力持ち的存在の木村代表
「できることをお手伝いしています」と縁の下の力持ち的存在の木村代表

とびきりキュートな笑顔のしのちゃん
とびきりキュートな笑顔のしのちゃん

“おちょけ”のいとくん 笑 (画像提供 「ひとふで」)
“おちょけ”のいとくん 笑 (画像提供 「ひとふで」)

楽しかったね!  (画像提供 「ひとふで」)
楽しかったね! (画像提供 「ひとふで」)

【基本情報】
第2回「こども食堂」(カランビンカ食堂&白鳥食堂)
「ひとふで」公式インスタグラム(外部リンク)
開催日時:2024年2月10日(土) 12時~ 
場所:「浄土真宗本願寺派 専徳寺(厨房)」(泉南市樽井5丁目20-1/Googleマップ参照)
駐車場:あり
参加費用:こども無料、高校生以上200円
取材協力・画像提供 「ひとふで」代表 木村 胤城 様、理事 籠原 紀子 様
*記事内容は取材当時のものです。
*「こども食堂」は「みんなの食堂」です。地域の方であれば、どなたでも利用できます。



ライター(泉南市・泉佐野市)

なんでもない日々を旅するように暮らす日常写真家。「ローライ35s」という小さなフィルムカメラでささやかな日常を記録しています。私たちの町のちょっとうれしくなるあんなことこんなこと。皆様の日常がもっともっと楽しくなりますように。

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