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【泉佐野市】創業50年 注文が途切れない「無添加コロッケ」精肉店生まれの実力に「これは飲みものだ…」

旅する日々の記憶と記録。matka08ライター(泉南市・泉佐野市)

SNSで「コロッケは飲みものだ!」とユニークな主張をするお店に出逢いました。

「飲めるほど柔らかくてジューシーということ?」って普通は思いませんか?

でも、発言者の意図はそうではなく、意外な理由でした。

製造所直売コロッケ専門店「3代目 コロッケ」

今回ご紹介するお店は、旧国道26号線沿い 笠松にある創業50年 製造所直売コロッケ専門店「3代目 コロッケ」。(緑の4階建ての建物横の一軒家/Googleマップ参照)

精肉店を営んでいた先々代(ご両親)の味と製法を受け継ぎ、コロッケへ情熱を注ぎ続ける3代目オーナーの森田 美江さん。

「コロッケは主役じゃない」と言いつつも、そのこだわりと愛情はかなりのもの。

何よりも気になるのが、SNSで発信する「コロッケは飲みものだ!」の主張。

どうやらこの発言は、以前スタッフとして在籍していた とある男性によるものだとわかりました。

「コロッケは飲みものだ!」とある男性の真意

「世の中にはたくさんのコロッケがありますが、一度にそう多くは食べられないと思いませんか?」と森田さん。

開口一番にこう尋ねられ、そんなにコロッケをバクバク食べた記憶はないけれど、たしかに2個ほどで「もういいや」となるような気もします。

その時の記憶を辿ると、やはり「胸やけ」のような、カラダ全体に油がまわっちゃったかのような気持ちになるのは確かです。

「実は、『コロッケは飲みものだ!』と言い放った彼(元スタッフ)は、うちの『無添加コロッケ』を食べた感想としてそう話してくれたんです。素材の良さから胸やけなどもなく、何より“カラダが欲するコロッケ”だ、と。喉が渇いたらゴクゴクと飲みものを飲むように、このコロッケをカラダが自然に欲して、欲求のままに何個でもいけちゃうコロッケ、という意味合いだったんです」

ほー! コロッケに対してそんな感じ方をする人がいるのですね。

その男性は、“芸術的感性”の持ち主だと感じます。

国産原材料100%使用「無添加コロッケ」

「3代目 コロッケ」では、素材や製法に一切妥協はせず、一つ一つスタッフの手づくりで作業が進められていきます。

材料はすべて国産。衛生管理はもちろん、小ロットで調理し細部にまで目を行き届かせています。

(画像提供 「3代目 コロッケ」)
(画像提供 「3代目 コロッケ」)

じゃがいもは、主に泉州産・北海道産の「キタアカリ」を使用。なめらかな舌触りと甘く香りが良いのが特徴です。
ただ、「キタアカリ」は柔らかく崩れやすい品種でもあるため、加熱時間や調理方法の工夫が必要です。

「3代目 コロッケ」では、試行錯誤を重ねてじゃがいもの調理方法を「茹でる」から「蒸す」に変更。それにより絶妙な柔らかさと風味を出すことに成功します。

これも森田さんのお父様がずっと守り続けていた調理方法。「色々試したけど やっぱりその方が良かった」と森田さん。

じゃがいもは皮の近くに栄養分が多く含まれているため、皮むきは最小限に。 素材の美味しさを残す工夫に余念がありません。

(画像提供 「3代目 コロッケ」)
(画像提供 「3代目 コロッケ」)

玉ねぎは、泉州産をはじめとした国産たまねぎを使用。淡路産は甘みが出過ぎてしまうなど、産地によって味の特徴もあり、“玉ねぎ”はコロッケの味を大きく左右する存在、といいます。

国産100%の合い挽き肉は、野菜の旨味を最大限に引き出せる量に抑える潔さも、すべての素材に自信があってこその判断と感じます。

これらの材料をすべてあわせ、一つずつ手で丸めていきます。

一個43g。ご両親が営まれていた精肉店の味と製法を受け継ぐ上で一番苦労した点は「数値化」することだったそう。

商売をする以上、いつも同じ品質のものをお届けする必要があり、記憶にのこる味を辿り何度も試作を重ねます。

ここで秘密兵器登場? 

「コロッケ成型機」の登場です!

これに丸めたタネを詰めて、パンパンと叩いてならしていきます。

すごく手間のかかることを、一つ一つ丁寧に手作業で行っていきます。

それも、のんびり、ゆっくりと。どなたかの“家庭の台所”にお邪魔しているかのようです。

一時期は「工業化」も考えた、と話す森田さん。

「“型抜き機”での成型も試しましたが、柔らかすぎて風味が変わってしまった。これではダメだと思いました」。

ここでも、ご両親(先々代)が貫いてきた「手間を惜しまない」ことの大切さに気付かされます。

「効率化」「守り続けたいこと」の狭間で揺れ、試行錯誤を重ね選択したものが“先々代が貫いてきたこと”だった、というまるで“自然の摂理”のような流れ。

抗うことでブラッシュアップされた部分もあり、その時間は決して無駄ではなかったと感じます。

自社で精製しブレンドした油でサクッと揚げていきます。

驚いたのが「新しくない油」を使う方がいい、ということ。

肉や野菜の旨味が溶け出た油を使うことで、風味豊かなコロッケになるそうです。

「秘伝のたれ」ならぬ「秘伝の油」といったイメージです。

適宜、油かすは捨て、油の継ぎ足しを行います。

一度に投入するコロッケは2個まで。油の温度は170度~180度。

5分ほどでコロッケが上がってくる、というので静かに待ちます。

5分経った頃、コロッケが上がってきました! 「ほらね、この子たち良い子でしょ?」と森田さん。

衣は薄く、驚くほどサクサク! そしてクリームコロッケのようにじゃがいもがふんわりジューシーです。こちらは、野菜の甘みたっぷりの「白コロッケ」

「飲みもの」って、この“ジューシーさ”のことでは? と思うほど「サクサクふわふわ」な食感です。そして自然の甘みが凝縮されていてとても美味しい!

「3代目 コロッケ」のメニューは、「白コロッケ」/1個 90円(税込)「黒コロッケ」/1個 90円(税込)の2種類のみ。お持ち帰り用の「冷凍コロッケ5個入り」 各種450円(税込)もあります。

そして、こちらは少しスパイシーな味わいの「黒コロッケ」

スパイシーといっても、そこまで辛さはなく、試作を重ねて厳選したコショウを使用しているとのこと。

じゃがいもが黄色いのは「キタアカリ」の特徴ですが、コショウと合わさることで色味も濃くなるようです。こちらも野菜の甘みは十分に感じられてとても美味しい! そして、ちょっぴりオトナ味。

お酒のつまみには「黒コロッケ」をおススメします。

(未成年者の飲酒は法律で禁じられています。お酒は二十歳になってから)

実は、この後、部屋を移動して色々とお話を伺ったのですが、お皿に盛られた「白コロッケ」と「黒コロッケ」を食べる手が止まらず、口をもごもごさせながら取材をするという、前代未聞の取材シーンとなったのでした。

ちなみに「無添加コロッケ」は冷めてからも美味しいのが特徴。

帰宅後、持ち帰ったコロッケを温めもせずにバクつきましたが、少し衣はしっとりするものの、やはり同じような具合で飲み干すように食べてしまいました。

「白コロッケ」は“まん丸”、「黒コロッケ」は“楕円”のようなカタチをしています
「白コロッケ」は“まん丸”、「黒コロッケ」は“楕円”のようなカタチをしています

森田さんが「コロッケは主役じゃない」というように、このコロッケも決して派手さはなく、「昔ながらのコロッケ」という感じ。

それなのに食べる手が止まらないのは、厳選された素材を使用し、精肉店から受継いだ製法を大切に守り続けたことが、結果 その美味しさを際立たせているのだと感じます。

森田さんとお話をしていると、所々に“「コロッケ」は「コロッケ」以上にならなくてもいい”という強い意志を感じます。

昔、食卓に並んでいた「おかず」「おやつ」「おつまみ」としての「コロッケ」の役割を超える必要はないのだと。

裏を返せば、”生活に寄り添う必要があるからこそ、手を抜けないんだ”

そんな風にも感じ取れます。

さいごに

福祉事業所で介護福祉士として働く傍ら、「3代目 コロッケ」のオーナーも務める森田さん。“泉佐野市はとても働きやすい街” と話します。

「3代目 コロッケ」は、ふるさと納税の返礼品にも登録されており、市の職員さんをはじめ、多くの方から途切れることなく注文をいただいているそうです。

食べた方から「無添加コロッケはなかなかない」「最高!」「冷凍コロッケは好きじゃないけどこちらのは美味しい」など、お礼状もいっぱい。

「私自身、“添加物”が嫌で自分が食べたくないものを作りたくないんです。安心安全で、お母さんが楽できて、お父さんやお子さんの『おつまみ』や『おやつ』になるコロッケをこれからも届けていきたい」。

ご両親の後を継ぐように揚げ物屋を営んでいた2代目オーナーのお兄さんが他界した悲しい過去も。「この街に助けられ商売が出来ている」と50年の歴史を振り返りながら前を見据えるその姿に真摯で純粋な心を感じました。

創業50年 製造所直売コロッケ専門店「3代目 コロッケ」。

シンプルイズベスト”の究極がココにあります。

【基本情報】
店名:「3代目 コロッケ」
公式ホームページ(外部リンク)
公式インスタグラム(外部リンク)
住所:泉佐野市笠松2丁目1-16
Tel:072-415-3006
店頭販売時間:11:00~13:00/16:00~17:30
定休日:日曜/第1・3・5土曜日
駐車場:4台
取材協力 「3代目 コロッケ」オーナー森田 美江 様
*記事内容は取材当時のものです。
*お電話でのご予約や、全国発送も受け付けています。詳しくは公式HPをご確認ください。

ライター(泉南市・泉佐野市)

なんでもない日々を旅するように暮らす日常写真家。「ローライ35s」という小さなフィルムカメラでささやかな日常を記録しています。私たちの町のちょっとうれしくなるあんなことこんなこと。皆様の日常がもっともっと楽しくなりますように。

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