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クルトガ機能をON/OFFできる三菱鉛筆「ユニ アルファゲル スイッチ」のしくみを切断解説!

高畑正幸

文具王/文具のとびら編集長

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文具王の高畑正幸です。このコーナーでは、いろんな文房具を紹介し、解説をして行きたいと思っているのですが、単に便利だから買え!ということではなく、文房具という素材を通して、その製品の仕組みやデザイン、ものづくり的なことについて製品の観察や分解をしながら深読みするという行為そのものを楽しみたい。という試みだったりします。少々マニアックがすぎるかもしれませんがよかったら最後までお付き合い下さい。

ということで、今日解説するのはコチラ。

三菱鉛筆【ユニ アルファゲル スイッチ】
三菱鉛筆【ユニ アルファゲル スイッチ】

ユニ アルファゲル スイッチ」三菱鉛筆から2021年02月10日に発売のシャープペンシルです。大まかな特徴としては、下記の通り。

商品特徴

  1. 適度な柔らかさを持つ衝撃吸収素材アルファゲル搭載で、長時間の筆記でも疲れにくい
  2. クルトガエンジン搭載で、筆記事に芯が回って尖り続けるので、一定の濃さ・細さで書き続けられる
  3. クルトガ機能をロック(HOLDモード)することが可能。芯先が回転しないので安定した筆記が可能

つまり、疲れにくくて文字が綺麗に書けるんだけど、筆記に集中したいときはクルトガ機能を使わない選択もできる、という三菱鉛筆のシャープペンシルが持つ機能のイイトコドリ的な欲張りモデルです。

三菱鉛筆としては、これまで一番のセールスポイントにしてきたクルトガエンジンをあえてオフにする機能を付けるという展開で、パッケージには、クルトガ機能をオフにするホールドモードのメリットとして、「芯の回転を抑えることで、先端の動きを抑制。早くたくさん書くときにどんどん書ける」と書いてあります。え?今までクルトガってどんどん書けるのがメリットじゃなかったの?しかもそれって普通のシャープペンシルじゃん!というツッコミを入れたくなりますが、とにかくまあ、クルトガをあえて使わない良さもあるというのを自ら認めているのは面白い所です。

では実際、このシャープペンシルの使い心地はどんな感じか見ていきたいと思います。

アルファゲルグリップ

アルファゲルのグリップ。
アルファゲルのグリップ。

アルファゲルは、タイカという素材メーカーが開発した衝撃吸収性に優れた柔軟な素材で、三菱鉛筆では、随分以前から筆記具用のグリップの素材として利用していて、「アルファゲル」で1つのブランドを構成しており、実際、このシャープペンシルの場合、「クルトガ」ではなく「アルファゲル」が商品名になっています。あくまでこの柔軟なグリップの持ち心地ありきの製品ということです。
また、この素材の良さを活かすため、グリップ径は11.7mmシャープペンシルとしては若干太めの設計になっています。この太さは、一般的なシャープペンシルとしては一回り太く、他社製品でいえばグリップの太さを人間工学的に設計したことで人気となったパイロットのドクターグリップのくびれた部分よりわずかに細い感じです。重量は17.62g。シャープペンシルとしてはやや重めで高機能シャープペンシルとしては一般的な重さです。どちらかというと、速さや精密さよりも、長時間にわたって多くの文字を書く際の手や肩などへの負担をかけにくい設計と言えます。

グイグイ握っても力を上手く分散してくれる安心感のあるグリップ
グイグイ握っても力を上手く分散してくれる安心感のあるグリップ

実際、しばらく書いてみると、どんな持ち方をしていてもグリップの方が合わせてくれるのと、つい、力を入れたり爪を立てたりしても反作用が直接帰ってこない感じで、長時間筆記でもギリギリと締める感じにはならないので、その点ではかなり楽な気がします。ただ、太く柔らかいので、手の自由度は少し減る感じで、書く動作のイメージは鈍くなるように思います。

クルトガ機能のON/OFFで、書き心地も筆跡も全く違ってくる。

ホールドモードについては、「芯の回転を抑えることで、先端の動きを抑制。早くたくさん書く時にどんどん書ける」とありますが、私の感覚としては、芯を固定すると芯が片減りしてしまい、接地面積が広がるので、筆圧が分散し、同じ濃さを維持しようとすると自然と手に力が入ってしまうので、疲れやすくなります。従って、早くたくさんの文字を書くのであれば、芯が回転して先端の太さが一定に保たれクルトガモードの方が適しているように感じます。実際に筆記して比べてみるとその差は歴然としています。

上がクルトガモード。下がホールドモードで筆記
上がクルトガモード。下がホールドモードで筆記

では、ホールドモードはどんなときに有効なのか、

私の私見ですが、ホールドモードは図やグラフを描く時に適しているように思います。ホールドモードにすると、ペン先の回転を抑えるだけでなく、クルトガエンジンの構造上必ず発生するペン先の沈み込みや、ブレやガタ付きも無くなります。このため、ペン先を狙い通りの場所に置いて、引く時にペン先がヨレるような動きがないので、思い通りの線を引きやすくなります。これは、ノート取る場合なら、図やグラフなどを描く時に有効です。

図を描くときはホールドモードで。
図を描くときはホールドモードで。

ターゲットは中高生

もちろん、図や絵を描くことが主な用途であれば、最初から製図用シャープなどを選べば良いのですが、現在シャープペンシルの主なユーザーは間違いなく中高生であり、ノートを取ったり答案を書いたりするのが主な用途であることを考えると、毎日学校や塾でかなり長い時間握ります。その多くは文字書きで、ときどき図やグラフなどを書く使用シーンが容易に想像できます。その状況では、アルファゲルのグリップで長時間握っていても疲れにくく、クルトガ機能によって文字がスッキリ細く書き続けられるペンで、時々正確な線を引きたいときにはクルトガ機能をオフにしてペン先をホールドできるという仕様は理にかなっているように思えます。

分解して構造を見る

ではいったい、中身はどうなっているのか、分解と切断によって中の構造を観察してみましょう

電動小型丸鋸でカットする。
電動小型丸鋸でカットする。

プラスチック部分は電動の丸鋸でカットしました。

ボディを半分にカットして内部を見えるようにした状態
ボディを半分にカットして内部を見えるようにした状態

アルファゲルのグリップは3層構造。中層が柔らかい
アルファゲルのグリップは3層構造。中層が柔らかい

グリップはアルファゲルの3層構造。比較的柔らかい層を硬めの層で挟んだかたちで、柔らかさは持たせつつもしっかりしたコシがあります。以前のアルファゲル筆記具には、もっと柔らかいグリップのものもあり、長時間強い力で使い続けると、ヨレるなど不具合がありましたがこれなら大丈夫そうです。

主軸は細いが、かなり頑丈
主軸は細いが、かなり頑丈

このしっかりした厚みのグリップのおかげで、グリップ部分の内部は非常に細い空間しかありません。しかもしっかり握ることが前提の筆記具ですから、強い筆圧に耐える必要があります。なのでここに通っている主軸は非常に頑丈な金属製です。

主軸の中にクルトガエンジンに直結した中軸。
主軸の中にクルトガエンジンに直結した中軸。

芯を掴んで固定するチャックは主軸には固定されておらず、そのさらに内側を通る筒状の軸の先端に付いています。この中軸が後部に内蔵されているクルトガエンジンによって回転することで、芯先を回転させる構造になっています。またこの軸の内部にシャープ芯が通るため、この軸は最後端まで伸びていて消しゴムで塞がれています。

中央オレンジのマークが付いているのがクルトガエンジンのコアとなるギア。前後からギアに挟まれている。
中央オレンジのマークが付いているのがクルトガエンジンのコアとなるギア。前後からギアに挟まれている。

クルトガエンジンは、ボディ中央部。グリップの後ろに内蔵されています。このエンジンは、歯車が前後の歯車に押しつけられることで回転するもので、芯先が紙面に押しつけられたときに少しずつ回転します。

クルトガモードとホールドモードを切り替えるクリップ。回転することで前の部品を押し出す。
クルトガモードとホールドモードを切り替えるクリップ。回転することで前の部品を押し出す。

そしてその後ろにあるのがスイッチ機構。クリップを回転させることでらせん状になっている部品が前に押し出され、クルトガエンジンを後ろから押さえつけるようになっています。これによって筆圧をかけても中軸が沈み込むことなく、芯先が全く動かなくなります。

と、このような仕組みになっています。

文具王的な見所

全体の構成。多くの機能が狭いスペースに無駄なく詰め込まれている
全体の構成。多くの機能が狭いスペースに無駄なく詰め込まれている

文具王的な見所としては、全体的な機能のレイアウトです。本来ならばクルトガエンジンと芯をつかむチャックはなるべく近くに配置したい所ですが、分厚く大きなグリップが必須なので、その内側の細い空間に丈夫な軸を通し、さらに細くて長い軸をグリップよりも後ろのクルトガエンジンで回すという構造。そしてその機構を後ろから押さえつけて止めるクリップの回転機構。必要な条件と内部のスペースを無駄なく上手に配置し、必要な強度に合わせた材料選定と高い加工技術で製品としてそつなく納めています。

たかがシャープペンシルの小さなボディにここまでいろんなからくりを詰め込むのは、もはや日本独自の文化と言っても過言ではないでしょう。昨今の高機能シャープペンシルの精緻な仕組みには感動すら覚えます。

Youtubeでは動画でも解説中

文具王のYouTubeでは実際に書いたり、切断して分解するところなども見る事ができますのであわせて見ていただけると構造がよくわかると思います。

#文房具 #文具

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