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子供の学力やIQより重要な能力とは?子供の頃の読書量がなぜ重要なのか【絵本の読み聞かせと子育て】

高木美紀絵本の蔵書1000冊

 皆さんは「EQ」という言葉をご存知でしょうか?物事をやり遂げる力や向上心のように学びの土台になる力のことで、心の知能指数を意味しています。EQは非認知能力とも呼ばれ、近年、注目されている能力です。困難な状況でも前向きな行動や思考ができ、自己肯定感をや他者を思いやる心を持っていることなど、IQや学力テストでは測ることができない内面的なスキルを意味し、豊かな人生を歩むために重要な能力とされています。目標に向かって意欲的に行動し、失敗した場合でも柔軟な対応やアプローチを行う適応力、そして他者を理解する協調性や社交性が挙げられます。これらの力は人生において様々な分野で必要とされ、高い知能指数や学力があっても、自己評価が低かったり、安定した精神状態が保てない場合、能力を十分に発揮することはできません。そのため、IQを生かすためには高いEQが必要不可欠です。自己肯定感や心の安定があってこそ能力を最大限に発揮できます。EQをしっかり高めることが、目標を実現したり幸せに生きる土台となるのではないでしょうか。

EQ(非認知能力)とは?

 EQとは、目標に向かって意欲を持って取り組んだり、うまくいかない場合はやり方変えたり工夫したり、数値では表せない能力のことを言います。EQは、幸せな人生を切り拓くために重要な能力とされています。
自己を高める力・・・自己肯定感、自尊心、学習意欲、集中力、やり抜く力、主体性、好奇心、向上心
感情をコントロールする力・・・自制心、理性、回復力、精神力、忍耐力、楽観性、持続力
社会的能力・・・コミュニケーション力、共感力、思いやり、リーダーシップ、協調性、道徳心
クリエイティビティ・・・創造性、創意工夫、直観力など

子どもの頃の読書量が多い人はEQ(非認知能力)が高くなる!

 2021年8月に国立青少年教育振興機構が公開した「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」の報告書によると、子どもの頃の読書量が多い人は、意識、EQ(非認知能力)と認知機能が高い傾向があると明らかになったそうです。最近ではスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスやPCを使った読書が急増していますが、同調査によると、それらのデジタルデバイスを利用した人より、紙媒体で読書をしている人の方が、EQ(非認知能力)が比較的高い傾向にあるようです。

【参考】

国立青少年教育振興機構 子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究~「読書離れ」の実態と、「読書好き」を育てるヒント~〈令和3年3月発行〉報道発表資料

国立青少年教育振興機構 子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究~「読書離れ」の実態と、「読書好き」を育てるヒント~〈令和3年3月発行〉報告書

子供のEQを育むための身近な方法は「絵本の読み聞かせ」です!

 そして、子供の読書習慣を身につけるための土台が、絵本の読み聞かせであると考えられています。絵本の読み聞かせは、子供の言語能力や認知能力、社会性の発達を促進する効果があるとされ、さらに、読書量の増加、学力の向上、自律神経の安定などの様々な効果があると考えられています。。親子で絵本の登場人物の気持ちや感想を共有することは、EQを高めるための良いトレーニングになるとされています。子供を膝に乗せてゆっくりと読み聞かせをしてあげると親子のスキンシップにもなり、子供の安心につながると考えられています。

絵本の読み聞かせがEQを高める!
①自己肯定感の向上:親子で絵本を読み聞かせる時間を過ごすことで、子どもたちは自分が大切な存在であるということを認識し、自己肯定感が高まります。
②個性・才能を引き出す:様々なジャンルの絵本に触れることで、子どもたちは自分自身が興味・関心を持つものを選び出し、個性・才能を引き出すことができます
③共感力の育成:物語の中での疑似体験を通じて、子どもたちは人の気持ちを理解する力を養い、共感力を育てることができます。
④ポジティブな思考:絵本の世界で、成功や幸せなイメージをインプットすることによって、子どもたちのポジティブな思考が育まれ、より良い未来を想像することができます。
⑤チャレンジ精神:ポジティブなイメージを持つことで、子どもたちは困難があっても柔軟に対応できる力を身に付け、チャレンジ精神を養うことができます。
【参考文献】『子どもの脳と心がぐんぐん育つ 絵本の読み方 選び方』パイ インターナショナル 著 :仲宗根敦子 監修:篠浦伸禎

 そしてEQを育むためには、様々なジャンルの絵本にたくさん触れさせてあげることが大切であるとされています。子供の知的好奇心を広げるために図鑑も良い影響があるそうです。何より大切なことは、子供が夢中になることを見つけることだと言われています。たしかに、子供が何かに夢中になっているときのパワーは大人も圧倒されてしまうときがありますよね。今回は、母である私の絵本好きが高じて、胎教から集めた我が家の1000冊の絵本の中から、EQを育むためにおすすめの絵本を3冊ご紹介いたします。

『のろまなローラー』 福音館書店 作: 小出正吾 絵: 山本 忠敬

『のろまなローラー』 福音館書店 作: 小出正吾 絵: 山本 忠敬
『のろまなローラー』 福音館書店 作: 小出正吾 絵: 山本 忠敬

 大きなトラックやりっぱな自動車たちに、のろまとバカにされても、ローラーは気にすることなく、ゆっくり着実に自分の仕事をこなしていきます。何を言われても、自分の仕事を黙々と頑張るローラーの姿は、健気で子供たちの心にもきっと響くと思います。地道にゆっくりゆっくり前に進む事も、速く走れることに負けないくらいのかっこよさがあって、のろまだからこそ立派な道ができたのです。色々な人がいて、みんなそれぞれ違うから、他人と比較しても仕方がないし、ゆっくりだけど自分の進むべき道を進んでいくローラーがかっこいいのです。ゆっくりでも、のんびりでも、誠実に自分の仕事をやり遂げることの大切さを伝えてくれる素敵な絵本です。

『こんとあき』 福音館書店 作: 林 明子

『こんとあき』 福音館書店 作: 林 明子
『こんとあき』 福音館書店 作: 林 明子

 あきがうまれたときからずっと、あきのことをそばで見守ってきたぬいぐるみのこん。ある日、古くなったこんの腕がほころびてしまい「さきゅうまち」に住むおばあちゃんに直してもらうために、こんはあきを連れて列車に乗って旅に出ます。小さなぬいぐるみのこんとあきの二人旅は、途中で様々なハプニングに見舞われます。そんな中でも、こんは自分のことよりあきを心配して一生懸命にあきを守ろうとします。小さな体で「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とあきを励まし続ける姿が本当に健気で胸を打ちます。林明子さんの描く子供の姿は、表情や仕草がどのページも可愛らしくて、絵本の世界にスッと引き込まれてしまいます。こんとあきと一緒にハラハラドキドキしながら「さきゅうまち」への旅をぜひ楽しんでみて下さい。

『ぐるんぱのようちえん』福音館書店 作: 西内 ミナミ 絵: 堀内 誠一

『ぐるんぱのようちえん』福音館書店 作: 西内 ミナミ 絵: 堀内 誠一
『ぐるんぱのようちえん』福音館書店 作: 西内 ミナミ 絵: 堀内 誠一

 ひとりぼっちのぐるんぱは、大きくなってもぶらぶらして、いつもめそめそ泣いていました。そんなぐるんぱが、仲間に背中を押されて新しい一歩踏み出していきます。ぐるんぱは、そこから色々なことに挑戦してみますが、何をやっても失敗ばかりで上手くいきません。それでもぐるんぱは、あきらめずに頑張って挑戦していきます。何度も何度も失敗を繰り返していくうちに頑張っていたぐるんぱも、ついにしょんぼり落ち込んでしまいます。しかし、失敗ばかりで挫けてしまいそうになっていたぐるんぱでしたが、ついに自分の居場所が見つけたのです。そして、最後に気付いたのです。今まで失敗したことは決して無駄じゃなかったと。子供たちがいつか何かにつまずいたとき、思い出してほしい絵本です。

 今回は、EQを育むためにおすすめの絵本をご紹介いたしました。お子様が何度も繰り返し読みたくなるような、素敵な絵本にたくさん出会えることを心から願っています。

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絵本の蔵書1000冊

元塾講師の2児の母です。絵本と児童書が大好きで、気が付けば蔵書量1000冊「日本一、本が好きな子供を育てる」を目標に子育てしてきました。そんな我が家の1000冊の絵本の中から、おすすめの絵本をご紹介します。

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