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読書が算数の力を伸ばす!16歳のときの家の本の量が、子供の学力に比例する!?算数の芽を育てる絵本  

高木美紀絵本の蔵書1000冊

算数は一度苦手意識を持ってしまうと、厄介なものです。お子様が算数に抵抗感を持たないように、小さい頃から数に触れる環境を作ってあげたい、数に慣れさせてあげたいと考えるご家庭も多いかと存じます。とは言え、ドリルやお稽古事を小さな頃からやらせた方がいいのか?それが逆効果になってしまったりしないか?…などなど、算数へのアプローチの仕方はあれこれ悩んでしまいますよね。

実は、子供の算数の学力については、興味深い調査結果があります。

16歳のときの家の本の量は、子供の様々な能力に大きな影響!読書で算数の学力に変化が!

 オーストラリア国立大学と米ネバダ大学で明らかにされた興味深い研究結果があります。16歳の時に家にどれだけの本があったかは、大人になってからの読み書き能力、算数・数学、ITスキルに比例しているということが、大規模調査の結果で明らかになったのです。読書量が多ければ、読解力や語彙力が伸びることは想像しやすいですが、算数・数学にも影響を及ぼすというのは、非常に興味深い結果です。この研究は、2011〜2015年に31の国と地域で、25〜65歳の16万人を対象に実施された「国際成人力調査」の結果を分析し、学術誌ソーシャル・サイエンス・リサーチで発表されてます。
 また日本でも、ベネッセが行なった調査で「読書量が多いほど算数の偏差値が高い」傾向が見られたという結果が発表されています。2016~2017年にかけ、4万2696人の小学5年生を対象にベネッセが独自調査し「読書量と学力テスト(国語、算数、理科、社会)の結果を分析する」というものでした。その結果、本を10冊以上読んだグループはどの教科においても偏差値が平均1.9ポイント上昇したのです。この調査結果で注目したいのが、算数の結果です。「読書量が多い」グループと「まったく読書をしない」グループの偏差値に大きな差があらわれたのが算数の結果だったのです。算数の結果では、読書量が多い子供は、偏差値が「+3.5」である一方で、無しの子どもは「-1.3」と、4.8ポイントの差が開いており、学力の変化に一定の影響が見られました。算数で影響が大きく見られた理由として考えられるのは「文章中に与えられた問いや条件を正確に読み取る力」が、本をたくさん読むことによって鍛えられたのではないかと分析されています。

参考
Newsweek日本版|子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査
ベネッセ教育情報サイト|読書が算数の学力に影響?—読書量と学力の関係を考える

 本の力ってすごいですね。読書が読解力を伸ばすことにつながるのはイメージしやすいですが、算数や数学の力まで伸ばす効果があるという実験結果には驚きです。子供時代に子供の可能性を広げる力になる本や、希望になる本にたくさん出会わせてあげたいですね。

 何より読書は、知的好奇心をぐんぐん育んでくれます。算数が苦痛な勉強になってしまう前に「算数っておもしろいな」「もっと知りたいな」という知的好奇心がわいてくる分野に育んであげられたら、子供の可能性や世界が広がることにつながると思います。そこで、今回は算数の芽を育てるために役立つ絵本をご紹介いたします。

「はじめてであうすうがくの絵本」福音館書店 作:安野光雅

「はじめてであうすうがくの絵本」福音館書店 作:安野光雅
「はじめてであうすうがくの絵本」福音館書店 作:安野光雅

 タイトルに「すうがく」という言葉が入っているので、敷居が高いように思ってしまいますが、そんな心配は無用です。クイズ感覚で、ドリルでは味わえない楽しい数学の世界を体験できます。なかまはずれを探したり、せいくらべをしたり、親子で遊びながら数学の世界に親しむようなイメージの絵本です。安野光雅さんの緻密で美しい絵も、グッと引き込まれてしまいます。ページ数の多い絵本なので、少しずつ楽しみながら、進めていくのがおすすめです。安野光雅さんの数学へのアプローチの仕方は面白いので、子供時代にぜひ触れさせてあげたいです。親子でぜひ、安野光雅ワールドの数学を楽しんでみて下さい

「10人のゆかいなひっこし」 (美しい数学 1) 童話屋 作:安野 光雅

「10人のゆかいなひっこし」 (美しい数学 1) 童話屋  作:安野 光雅
「10人のゆかいなひっこし」 (美しい数学 1) 童話屋 作:安野 光雅

 こちらも、安野光雅さんの絵本です。最初と最後に説明文があるだけで、本編は文字がなく、絵だけで進んでいくお話です。10人の子供たちが、ページをめくるたびに一人、二人といなくなってしまいます。右のページの家に引っ越しをして、左の家の子供たちの数は減り、右の家の子供たちの数は増えていきます。10人の子供たちが、左の家から右の家へお引っ越ししているのです。まるで本の中で、絵が動いているみたいで面白いです。さらによく絵を観察してみると、人だけではなく、家具も少しずつ移動してるのです。この細やかさは、安野光雅さんらしくて、大好きです。お家の窓がくりぬかれていて、ちょっとした仕掛けですが、何だかワクワクしてしまいます。文字がないので、ストーリーは自由に想像しながら、1から10という数字の足し算、引き算の概念を捉えていくお話です。子供達も、ストーリーの展開がページを進めるごとにわかってくるので「次はこっちのページに何人いるよ」とか、予想したりしながら楽しめます。

「たすひくねこ」 マイクロマガジン社 作:にわ 監修:大迫ちあき

「たすひくねこ」 マイクロマガジン社 作:にわ 監修:大迫ちあき
「たすひくねこ」 マイクロマガジン社 作:にわ 監修:大迫ちあき

 5匹のねこから始まって、ねこが増えたり減ったりしながら物語は進んでいきます。今、ねこが何匹いるのか、たし算ひき算の概念に触れる絵本です。監修者の大迫ちあきさんのアドバイスでは、数量や大きさなどに結び付く言葉『さんすう言葉』を補いながら読み聞かせてあげるのが良いとのこと。「何匹いるかな?」「どっちの方が、大きいかな?」など、お子様とコミュニケーションを取りながら読み進めてあげると楽しいですね。ねこたちのイラストがとても可愛いのも魅力の絵本です。ねこたちが徐々に減っていくエピソードやセリフがユニークで、ストーリーも楽しい絵本です。

「王さまライオンのケーキ はんぶんの はんぶん ばいの ばいの おはなし」徳間書店 作・絵:マシュー・マケリゴット 、 訳:野口絵美

「王さまライオンのケーキ はんぶんの はんぶん ばいの ばいの おはなし」徳間書店 作・絵:マシュー・マケリゴット 、 訳:野口絵美
「王さまライオンのケーキ はんぶんの はんぶん ばいの ばいの おはなし」徳間書店 作・絵:マシュー・マケリゴット 、 訳:野口絵美

 「はんぶんのはんぶん、ばいのばいのおはなし」とタイトルにあるように、分数と倍数の概念が、ケーキを通して展開されていく物語です。ケーキで、数の変化や量の変化が描かれているのでとてもわかりやすいです。分数が苦手というお子様にもぜひ読んでみて欲しいです。小学生以上のお子様におすすめですが、半分や倍という概念をケーキで捉えていくので、小さなお子様もイメージはしやすいかと思います。年長さんくらいのお子様からチャレンジしてもみても良いかもしれません。アリと王さまライオン以外の登場人物が、身勝手で自分を良く見せようとしてばかりで嫌な感じですが、ラストは気分よく終わってくれるので、ぜひストーリーも楽しんで読んでみて下さい。算数の概念がテーマになっている絵本ではありますが、ストーリーも王さまとアリのラストシーンが素敵なお話です。

「1,2,3どうぶつえんへーかずのほん」 偕成社 作:エリック・カール

「1,2,3どうぶつえんへーかずのほん」 偕成社 作:エリック・カール
「1,2,3どうぶつえんへーかずのほん」 偕成社 作:エリック・カール

 子供達が大好きな「はらぺこあおむし」でお馴染みの、エリックカールの数の絵本です。文字はありません。動物園に向かう蒸気機関車。その貨車に乗った動物の数、動物を乗せ1ページごとに増えていく車両から、1~10までの数を学んでいく絵本です。学ぶという言葉より、数の概念を感覚的に捉えるようなイメージかもしれません。文字がないからこそ、小さいお子様にも、言葉で理解する教科書のような算数の世界とは異なる捉え方で、数の概念に触れられると思います。我が家の子供たちは、全部のページに隠れている、小さなねずみに夢中で、見つけると「ここ!ここ!」っと指さしながら、嬉しそうに楽しんでいました。そして、何よりエリックカールの豊かな色彩で描かれた世界が美しくて、ずっと眺めていたくなってしまうような素敵な絵本なんです。数字や数量の概念の導入時期のお子様におすすめの絵本です。

 今回は、算数の芽を育てる絵本をご紹介いたしました。教科書とは違った算数の世界を、ぜひ親子で楽しんでみて下さいね!お子様にとって、一生の宝物になるような素敵な絵本と、たくさん出会えますように。

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元塾講師の2児の母です。絵本と児童書が大好きで、気が付けば蔵書量1000冊「日本一、本が好きな子供を育てる」を目標に子育てしてきました。そんな我が家の1000冊の絵本の中から、おすすめの絵本をご紹介します。

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