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「山奥なのに刺身」「冷めたてんぷら」・・・温泉宿の料理でがっかりしない方法

高橋一喜温泉ライター/編集者

温泉が恋しくなる季節である。年末年始に向けて、旅行の計画を立てている人も多いだろう。

温泉旅行の楽しみのひとつといえば「食」だ。地元の特産物に舌鼓をうてば忘れがたい思い出になる。

「せっかく旅に出たのだから、その土地の特産やおいしいものを食べたい」という旅人は少なくないだろう。筆者も温泉に出かけるときは、必ず現地の名物をチェックしていく。

だが、残念ながら宿泊した旅館の食事にがっかりすることが少なくない。「これなら家の近くのレストランや居酒屋のほうがよかったな・・・」と嘆いたことがこれまで何度もある。

てんぷらはアツアツだから美味しい

代表的ながっかり例は、料理が冷めていること。

温泉宿の夕食の定番といえば、てんぷらだ。もちろん、揚げたてさくさくのてんぷらは美味しい。大好物である。

揚げたてのてんぷらは最高においしい
揚げたてのてんぷらは最高においしい

だが、どんなに食材がよくても、冷めきったてんぷらはおいしさが半減してしまう。それなのに、冷めた天ぷらを出す旅館は少なくない。

特に大規模の旅館やホテルだと、いっせいに宿泊客が食事をとるので、ある程度つくりおきをして、一気に提供しなければならない。オペレーション的に揚げたてさくさくが難しいのは理解できる。

だが、そもそもなぜ、温泉宿の料理といえば、てんぷらなのだろうか。かつててんぷらはご馳走だったのかもしれないが、いまやてんぷらはチェーン店で揚げたてを食べられるくらいポピュラーな食べ物である。よほど食材や揚げ方にこだわらないかぎり、わざわざ旅先で食べるものでもないだろう。

筆者は職業柄、冷めた料理を出すような宿を避けられるだけの経験は積んでいるが、それでもまだ冷めたてんぷらに出くわすことがたまにある。そのたびに「なぜ、ここまで来て冷たいてんぷらを食べているのか・・・」と寂しい気持ちになる。

普通の飲食店で冷めたてんぷらなど出したら、一気にお客は離れるはずだ。宿だから冷めたてんぷらが許される、というのも腑に落ちない話である。

山奥の温泉宿なのに刺身?

がっかり料理の2つめは、山の宿で出てくる海の幸だ。山深い場所にある温泉宿なのにまぐろや甘えびなどの刺身が出てくることがある。地元で採れた山の幸を期待していると、拍子抜けしてしまう。

ただ、フォローしておくと、そういう宿は旅人のニーズを無視しているわけではなく、地元客を相手にした商売をしている可能性が高い。

近くに海のない地域に住む人にとって、たまに出かける近くの温泉宿は、いわゆるハレの場である。ふだん食べている山菜やきのこ、郷土料理よりも刺身のほうが、ごちそうとしてふさわしいのだ。つまり、宿はお客さんのニーズに応えている、ということになる。であるなら、とやかく文句を言うのは無粋である。

山奥の温泉宿で海の幸を食べたくないなら、利用者のほうからそういう宿を避ける必要がある。

家族経営の小さな宿がねらい目

そこで、「温泉宿の料理にがっかり」を避けるポイントを紹介しよう。ひとつは大規模旅館は避けること。

宿泊料金が高くなるほど料理が充実するのは間違いないが、リーズナブルに土地の美味しい食事をいただきたい、というのが多くの人の本音だろう。

素朴でもいいから地元の食材を活かした料理を食べたいということであれば、かえって家族で経営しているような小さい旅館のほうが満足度は高いことが多い。地元の食材を積極的に取り入れたり、手料理にこだわったりしている傾向がある。

小さい宿だと情報が少ないので、一か八かで投宿を決めざるをえないこともあるが、食事がおいしい〝当たり〟の宿との思いがけない出会いも、温泉めぐりの楽しみのひとつである。

「食事は外で」も選択肢

宿泊する温泉地に料理を期待できる宿が見当たらない場合は、「泊食分離」を選択するのもひとつの手だ。つまり、宿は素泊まりにして、食事は外で食べるのである。筆者も温泉旅の半分くらいは泊食分離のスタイルにして、宿の近くの食堂や居酒屋に繰り出す。

城崎温泉は飲食店も充実している
城崎温泉は飲食店も充実している

それなりの規模の温泉街であれば飲食店も営業しているので、その中から自分の食べたいものを選ぶといいだろう。少なくとも半強制的に冷めた料理を食べさせられることはない。

地方の温泉地の飲食店情報はかぎられるので、これも一か八かという面もある。それでも思いがけず美味しい地元の料理に出会えることもあるし、店主や他のお客さんと交流が生まれることもある。

自分で選択して食べたお店や料理であれば、味がいまいちでも納得できるし、それは旅のほろ苦い思い出となるはずだ。

料理は温泉旅行の満足度を左右するものだ。旅行の計画を立てる際は、料理にこだわって宿選びをしてみてはいかがだろうか。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3700超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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