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移住や二拠点生活を諦める前に読んでほしい。温泉宿を「別荘」にするという考え方

高橋一喜温泉ライター/編集者

近年、「二拠点生活=デュアルライフ」という言葉をよく見聞きするようになった。

コロナ禍やテレワークの浸透などで働き方が多様化したことにより、それに合わせたライフスタイルを柔軟に考える人が増えているように感じる。

二拠点生活だけでなく、ワーケーションや移住なども、その延長線上にあるといえよう。

温泉宿で二拠点生活を実現するという方法もある
温泉宿で二拠点生活を実現するという方法もある

二拠点生活が負担になることも

二拠点生活は、言葉のとおり生活の拠点を2つもつことである。たとえば、平日は都市部で働き、週末は地方の拠点へ移動して余暇を楽しむ、というように2つの拠点を行き来する。

ひと昔前で言えば、「別荘」が二拠点生活に当てはまる。ただ、別荘の場合は「避暑を目的としたワンシーズンのみ」といった利用形態が多く、実際オフシーズンの別荘地は人がいなくて閑散としている。

また、「別荘」はそれなりに裕福な人がもつというイメージも強い。実際、別荘を建てて管理するだけでも大変な金額が必要になる。一般人には手が出ないというのが現実であった。

二拠点生活は従来の別荘よりも、ずいぶんと敷居が下がっている。たとえば、仕事のある東京をおもな拠点にして、週末や長期休暇を過ごすために自然豊かな地方都市に部屋を借りる。地方なら家賃も抑えられるし、物価も安くなる。何より自分が好きな街に生活拠点をもつことの精神的充足感は強いだろう。

とはいえ、この場合もそれなりに資金が必要になる。二拠点になる分、住居費は2倍になるし、家具や電化製品も2軒分購入する必要がある。往復するための交通費もバカにならない。

また、想像以上に移動は身体的にも精神的にも負担が大きい。毎週末もうひとつの拠点で過ごすつもりでいても、だんだんと移動すること自体が億劫になりかねない。これでは放置された別荘と変わらない。

第二の拠点となる「定宿」を見つける

もっと気軽に二拠点生活を実現できないか……そんなニーズを満たすのが筆者が実践する「温泉ワーケーション」である。

「温泉ワーケーション」は、温泉地に連泊(理想は1週間以上)で滞在しながら、仕事と休暇を両立させるライフスタイルである。

普段は都市部で働く一方で、まとまった期間、テレワークを駆使しながら地方の温泉地で過ごす。舞台は温泉地の旅館やホテルとなるが、やっていることは二拠点生活とさほど変わらない。

長期滞在が難しいなら、自分のお気に入りの温泉宿を見つけて、週末ごとに滞在してもいいだろう。いわゆる「定宿」を別荘として活用し、第二の拠点とするのである。

もちろん、将来的な移住を前提に温泉宿を選んでもいい。興味のある町の近くの温泉宿に定期的に通って、その町に本当に住みたいかどうかを判断するのだ。

筆者も実際、各地で温泉ワーケーションを実行し、結果的に2021年、東京から札幌へと移住することになった。何度か北海道の温泉に滞在し、大自然と都市機能が共存する札幌を選んだ。温泉ワーケーションは、移住や二拠点生活のきっかけとなり得るのだ。

筆者は自然豊かな札幌へ移住した
筆者は自然豊かな札幌へ移住した

「温泉ワーケーション」の3つのメリット

「温泉ワーケーション」による二拠点生活のメリットは、大きく分けて3つある。

1つめは、フレキシブルに拠点を決められること。

「この場所が最高!」とテンションが上がって、その土地に第二の拠点となる家を確保しても、「住んでみたらいまいち」「飽きてしまった」ということもあり得る。

その点、「温泉ワーケーション」なら、どこの温泉地を拠点にするかは自由だ。拠点となる宿を複数もつこともできる。夏向けや冬向けなど季節ごとに拠点となる常宿を変えてもいいだろう。

2つめは、予算をリーズナブルに抑えられること。

家賃や生活用品にお金がかからない点は大きい。また、自分の予算に応じて宿のグレードを決めることができるので、湯治宿のような格安の宿を拠点にして、コストを抑えることも可能だ。

さらに、最近は旅館やホテルのサブスクサービスも続々と誕生している。OtellやHafH、ADDressなどは毎月定額で宿泊できるので、これらのサービスをうまく利用すれば、二拠点生活どころか、全国各地の多拠点生活をリーズナブルに実現することも可能だ。

3つめは、いつでもやめられること。

「二拠点生活を始めてみたが、自分には合わなかった」ということもあり得る。傷口を広げる前に撤退することも選択肢に入れておきたい。

札幌の春は花が咲き乱れる
札幌の春は花が咲き乱れる

このように、二拠点生活や移住の「お試し」という位置づけで、温泉ワーケーションから始めてみてもいいだろう。

「二拠点生活に憧れるけど、現実にはムリ」とあきらめている人もいるかもしれない。だが、温泉ワーケーションを活用すれば、実質的に二拠点生活を実現することも可能だ。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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