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不便だから価値がある!ソロ温泉の達人があえて「スマホ圏外の温泉」に向かう理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

筆者が提唱する「ソロ温泉」の目的には、「ひとりの時間を過ごす」「何もしない空白の時間をつくる」「人間関係のスイッチを切る」などがある。あえて、ひとりぼっちになる環境を志向するのである。

こうしたソロ温泉の目的をとことん突き詰めるのであれば、「不便」な温泉にあえてチャレンジするという選択肢もある。不便である分、観光客が多くなく、自分自身とじっくり向き合うことができる。

スマホ依存ではありませんか?

現代人にとって、「ないと不便なもの」の代表といえば、スマホだろう。たしかにスマホは便利だが、一方で私たちはスマホ依存といえる状況にある。

暇をもて余すと、すぐにスマホを手に取って、なんとなくSNSや動画を見てしまう。だらだらとスマホを見続けて、「時間がもったいなかった」と後悔する人も多いだろう。

だからこそ、ときどきスマホから解放される必要がある。そして、自分自身と向き合い、深く思考したり、本を読んで過ごす時間を愉しんでみてはどうだろうか。

だが、手元にスマホがあると、つい無意識のうちに手に取ってしまう。そこで、おすすめしたいのがスマホのつながらない「圏外」でソロ温泉を敢行することだ。

旅先に温泉しかなければ、ひたすら温泉につかり、自分自身と対話する以外にない。不便な温泉地は、日常から自分を切り離し、心身をリセットするのに最適な環境である。

圏外の宿でデジタルデトックス

スマホ圏外の宿は年々少なくなっているが、あえてそういう宿に狙いを定めると、充実したソロ温泉旅となる。

たとえば、青荷温泉(青森県)はランプの宿として知られ、スマホの電波はおろか、電気も通っていない。当然、テレビもコンセントもない。風情のある浴室とピュアで透明な源泉もすばらしく、人間関係をはじめさまざまなスイッチをオフにするにはもってこいの環境である。

そのほか「日本三秘湯」のひとつである谷地温泉(青森県:ロビーでのみWi-Fi利用可)、トロッコ電車でしかアクセスできない黒部峡谷の黒薙温泉旅館(富山県)などもスマホ圏外の宿である。

圏外ではないが、近年では〝スマホ断ち〟をサービスとして取り入れている宿もある。

星野リゾートが展開する「星のや」は、「脱デジタル滞在」をテーマにしたプランを提供している。宿泊者はチェックインと同時にデジタル機器を宿に預け、自然の中の散策や乗馬などを体験する。デジタル機器を受け取るのはチェックアウト時だ。

人気リゾートホテルでこのようなサービスが提供されているのは、一定のニーズがある証しだろう。

「不便」だから得られるもの

「不便益」という言葉がある。読んで字のごとく、不便さがもたらす益のこと。「不便だからこそ良いことがある」というわけだ。

たとえば、キャンプに行って、わざわざ飯盒でご飯を炊くのもそうだ。お店でご飯を買ってきたほうが便利だが、薪から火をおこし、時間をかけてご飯を炊くことで、おいしさが倍増するように感じる。

「スマホを使えない」という不便な環境に身を置くことで、日常では得られないものがあるはずだ。「空白の時間」を愉しんでみよう。

高橋一喜|温泉ライター
386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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