Yahoo!ニュース

温泉旅行なのに疲れるのはなぜ? ソロ温泉の満足度は「6時間」の過ごし方で決まる

高橋一喜温泉ライター/編集者

1泊2日の温泉旅行......せっかく温泉で日頃の疲労を解消しようと思ったのに、かえって疲れて帰ってきた、という経験はないだろうか?

温泉に癒やされに行ったのに、逆に疲労をためこんでしまったら本末転倒だ。

その原因は、時間の過ごし方にある。

温泉を堪能する時間は限られる

温泉宿に滞在できる時間は意外と短い。15時チェックイン、翌日10時チェックアウトの1泊だと、計19時間の滞在となるが、そのうち7~8時間は寝床にいる。

さらに食事の時間や就寝準備、チェックアウト前の身支度の時間などを除けば、本当にゆっくりできる時間は正味6時間くらいである。意外と短い。

この残された6時間のあいだにどれだけ温泉を満喫し、リラックスできるか温泉旅の充実度を決定づけることになる。

もし観光のスケジュールをぎっしり入れてしまい、宿に到着するのが17時を過ぎたとしよう。チェックインを済ませると、「夕食は18時から」とのこと。急いで浴衣に着替えて時間を気にしながら入浴。部屋に戻ると、すでに夕食のしたくが始まっている。

1時間半ほどかけて食事をたいらげると、満腹感でしばらく動けず。複数の浴室があることを思い出し、重い体に鞭打って21時頃に温泉へ。戻ってくるやいなや、旅の疲れと温泉効果であっという間に入眠。

目が覚めると、朝7時過ぎ。ぐっすり眠れたのはいいが、朝食は8時からだ。ゆっくりする間もなく、浴室へ。朝食をいただいたら、すでに9時過ぎ。もうチェックアウトに向けて準備をしなければ……。

温泉に入って、おいしいものを食べられれば一般的な温泉旅の目的はほぼ果たしているともいえるが、とくにひとりでの温泉旅はとことん温泉と向き合い、ゆっくりとするのが目的である。温泉宿についてバタバタと余裕がないようでは、不完全燃焼で終わってしまう。

チェックインを早めに済ませる

筆者が提唱するソロ温泉(ひとりでの温泉旅)の目的は、ひたすら湯船につかり、心身を休めることだ。だから、温泉宿に着いたら、ただ湯につかる。何度もつかる。それに徹する。そして、PCやスマホ、人間関係ともしばらく距離をとる。

こうした「空白の時間」が、忙しいビジネスパーソンには必要だ。ソロ温泉に出かけるときは、できるだけ長く、宿でゆっくりする時間を確保したい。

だからこそ、早めに宿にチェックインするのが望ましい。チェックイン開始時刻ちょうどに到着するのがポイントである。

多くの宿は15時からが通例だが、顧客サービスの一環で13時、14時からチェックインできる宿も増えている。

筆者も投宿する場合は、できるだけチェックイン開始時刻に合わせて到着するように心がけている。むしろ少し早めに現地に到着し、あたりを散策してからチェックイン開始時刻ちょうどに訪ねるようにしている。

15時にチェックインできれば、夕食が18時からであっても、3時間は確保できる。これくらいあれば、1時間くらい湯浴みができ、入浴後の余韻も楽しむことができる。

温泉につかっている時間も好きだが、入浴後のぽかぽかと火照った体のまま、ぐうたらする時間も好きである。冷えたビールがうまいこと! 

外にふらっと出かけて涼風にあたるのもいい。寒い時期ならこたつに入って、ボーっとするのもいい。入浴後の読書も至福のときである。うとうとしてきたら、ちょっと昼寝するのもいいだろう。

夕食までの時間を自分でコントロールできれば、そのソロ温泉は半分成功したのも同然である。

温泉旅館に泊まると、食事やチェックアウトの時間が決まっているので、旅館のペースに合わせざるをえなくなる。それでは、心身は休まらない。

チェックインを早めに済ませることで、ゆっくりと温泉につかり、時間的にも精神的にもゆとりがもてる。ソロ温泉では、この「ゆとり」の有無がカギとなるのだ。

温泉以外を削ぎ落とす

大切なのは、温泉に入る時間をできるかぎり確保することだ。つまり、宿での滞在時間の最大化を図ることが重要になる。

2泊、3泊できれば十分に時間をつくることはできるが、現実的には1泊の旅が多いだろう。その場合は、早めにチェックインし、チェックアウトぎりぎりまで滞在する、という戦略が必要である。

そのためにも、湯浴み以外の余計な旅のスケジュールを削ぎ落とす。旅に出ると、どうしてもスケジュールを詰め込みたくなるが、名所観光やグルメは二の次である。

もちろん、筆者も観光やご当地グルメは好きだが、そうした「温泉旅行」と「ソロ温泉」は別物と分けている。空白の時間をつくるには、「ソロ温泉」に徹することが必要なのだ。

高橋一喜|温泉ライター
386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

高橋一喜の最近の記事