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「ネット予約できない宿に名湯あり」。失敗しない旅館選びのコツ

高橋一喜温泉ライター/編集者

宿泊する温泉宿を探すとき、多くの人は旅行予約サイト(OTA:Online Travel Agent)を使う。楽天トラベル、じゃらん、一休などが代表格だろう。

だが、筆者の経験では、OTAに登録されていない小さな宿にこそ、あまり知られていない「名湯」が眠っていることが多い。

常連で成り立つ宿

旅館はOTAに登録すれば、広く集客することができる。だが、OTA経由で予約が入った場合、宿はOTAに手数料を支払う必要がある。

OTAで集客するかどうかは、その宿の考え方や規模、マーケティング戦略にもよるが、OTAで集客しないということは、広く集客しなくても安定的に経営が成り立つということである。

常連さんがリピートで繰り返し泊まるような人気宿は、OTAに登録するメリットはないともいえる。

狙い目は、そのような常連さんや口コミだけで経営が十分成り立つ宿だ。そのような宿は、たいていキラリと光るものをもっている。

「湯の質」が高い傾向

筆者は「ソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)に出かけるなら、大資本の宿ではなく、家族中心で経営しているような小規模な宿がいい」と主張してきた。

できれば8部屋以下、多くても15部屋以下の宿がおすすめである。

キャパシティーが小さければ当然、館内で他の客と顔を合わせることも少ないし、かなりの可能性で湯船を独占できる。湯船にひとりでつかる「独泉」は、ソロ温泉の醍醐味である。

また、小規模の宿は温泉の質が高いケースが多い。宿泊客が少なければ、湯船を大きくする必要がない。だから、冷泉でないかぎりは、湯を循環ろ過させることなく、かけ流しにできる。

同じ温泉地内でも、規模が大きく知名度の高い大型旅館は循環ろ過している一方で、小さくて知名度の低い旅館はかけ流しにされている、といったケースは多い。

ネット予約できない宿に名湯あり。源泉の質を重視するのであれば、OTAで表示される宿だけでなく、登録されていない宿にも注目する必要があるのだ。

料理自慢の宿も多い

さらに、「小規模の旅館は料理自慢」という傾向も無視できない。大型の旅館は大量に食事を用意するために、画一化された定番メニューになりがちである。

コスト削減のために業務用の料理がそのまま出されるケースもある。それゆえ、大型旅館の料理は印象に残りにくい。

一方、家族経営の宿では、料理の作り手は主人や女将である。手づくりのメニューになるのはもちろん、地元の特産を使った個性あふれる料理が並ぶことも多い。素朴ながら印象に残る。

もちろん、小規模の宿は建物や設備が古いケースも多いので、快適さや豪華さを求める人には向かない。

しかし、温泉と静かに向き合うソロ温泉では、ネット予約できないような宿の中から、自分の好みや感性にぴたりと合う宿を探すのも、ひとつの愉しみである。

高橋一喜|温泉ライター

温泉ソムリエ/386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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