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【ソロ温泉の魅力】仕事が早く終わったので、思いつきで箱根の旅館へ

高橋一喜温泉ライター/編集者

ソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)の魅力のひとつは、気軽であることだ。自分が温泉に入りたいと思えば、身一つでそのまま温泉へ出かけられる。

「ああ、温泉に入りたい気分だなあ」というときは、その日のうちに温泉地へ旅立つことも可能だ。

仕事が早く終わったから箱根へ

筆者が東京に住んでいた頃の話だ。

ある平日の午後、私は小田急多摩線の永山駅(多摩市)のホームにいた。永山は、新宿駅から約40分の距離に位置するベッドタウンである。

時刻は15時。仕事の打ち合わせが予想外に早く終わった私は、スマホを取り出した。

アクセスしたのは、旅館の予約サイト。「箱根」と「湯河原」のエリアで当日予約ができる旅館を検索すると、それぞれ30軒以上がヒットした。

宿泊プランや温泉の質、料金などをすばやくチェックしてから、箱根の強羅温泉にある一軒の宿を予約。パソコンを開いてから約5分で今夜の宿が決定し、そのまま電車に乗り込んだ。

そもそもその日は、温泉に出かける予定はまったくなかった。着替えやお泊まりセットなど、普段の旅行の際に携行するグッズも何ひとつ持っていない。

でも、思っていた以上に仕事が早く済んだうえに、小田急線は箱根湯本駅が終点である。小田急永山駅からは、1時間30分ほどの距離(特急を使わない場合)。湯河原も1時間40分ほどだ。このような条件が重なって、とっさに「そうだ、温泉に行こう!」とひらめいたのである。

1時間後には温泉地に

思い立ったときに、すぐに温泉に行けるのは、日本人の特権である。地域差はあるものの、たいていの都市には1時間圏内に立派な温泉地が存在する。

たとえば、東京駅から新幹線を使えば、1時間後には熱海や軽井沢などの温泉に入れる。新宿駅から小田急の特急ロマンスカーに乗車すれば、1時間半後には箱根の温泉に浸かることもできる。

極端なことを言うと、平日であっても、一日の仕事が終わる17~18時に温泉地に向かい、翌朝、温泉地から直接出社するのも不可能ではない。さすがに翌朝出社するのは現実的ではないが、金曜日の夜に出発したり、翌日に半休をとって午後から出社したりすれば、ゆっくりと温泉を堪能することができる。レイトチェックインプランを提供する宿を活用してもいいだろう。

日頃、忙しく働いているビジネスパーソンの間で、たまには仕事を早めに切り上げて、そのままソロ温泉に向かうというスタイルが定着すれば、少しは仕事の疲労やストレスが軽減されるのではないだろうか。

しかも、土日祝日は、大勢がいっせいに行楽地へ移動するため、道路や電車が混雑するし、泊まりたい宿も満室だったりする。帰りは帰りで渋滞が必ずといっていいほど発生し、温泉に癒されにいったはずなのに、くたくたになって帰ってくるという笑えないケースも少なくない。それならば、金曜日の夜に出発して、少し早めに帰途につけば、もっと有意義な時間を過ごせるのではないか。

ふらっと、仕事帰りにソロ温泉に行きたい人にとって心強いのは、最近は一人旅を歓迎してくれる宿が増えていることだ。インターネットで予約すれば、一人でもあれこれ気を遣う必要もない。

翌日は午後から都内で仕事

話を元に戻そう。筆者が箱根湯本駅に到着したのは16時30分。そこから箱根登山鉄道に乗り継いで、終点の強羅駅に着いたのは17時20分。山間をゆるりと走る電車の車窓から箱根の山々を眺めていると、すっかり旅気分になっている自分に気づく。つい先ほどまで仕事をしていたのがウソのようだ。

予約した宿は、強羅温泉の温泉旅館。強羅駅には、すでに迎えの車が到着していたので、チェックインは17時30分。夕食まで、まだ時間はある。まずは温泉に浸かろう。源泉は、大涌谷から引いた白濁の湯。かけ流しのすばらしい湯に入り、そのまま地元の食材を活かした料理に舌鼓を打った。

温泉で癒された翌日は、心も体も軽く感じる。私は朝9時に宿をチェックアウトし、新宿行きの特急ロマンスカーに乗った。13時から都内で仕事があったからだ。温泉効果で、いつもより仕事がはかどったのは言うまでもない。

ソロ温泉は、いつでも、誰でもできる。すべてあなた次第だ。仕事終わりに家とは逆の方向の電車に乗ってみてはいかがだろう。

高橋一喜|温泉ライター
386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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