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おひとりさまにオススメ! 本物の温泉好きが「貸切風呂」にこだわる理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

温泉の湯船にひとりでつかることは、ソロ温泉(ひとりでの温泉旅)の醍醐味である。温泉愛好家は、これを「独泉」と呼ぶ。

ひとり、温泉につかる時間。上質な源泉であれば、その湯とじっくり向き合う。自然の中にある露天風呂であれば、景色を愛で、木々や川、鳥の声に癒される。

そんな時間をただ何も考えずに過ごしてもいいし、あれこれと思いを巡らせてもいい。

日々、人混みの中で心をすり減らしているビジネスパーソンにとって、独泉の時間はなかなか味わえない貴重な時間である。

「独泉」は非日常の時間

しかし、必ずしも独泉の状態で入浴できるとはかぎらない。大型の旅館やホテルであれば、ひっきりなしに人が出入りする。週末ともなれば、独泉にありつける時間は限られるだろう。

ただ、他の入浴客もソロであれば、よほど混雑していない限りはさほどまわりは気にはならない。複数湯船があるなら、空いているほうの湯船につかれば独泉状態となる。

しかし、にぎやかなグループや団体客と鉢合わせすると調子が狂う。極端な例では、日本酒を浴室に持ち込んで酒盛りするアジア人や、桶を投げ合う高校生などマナーから大きく逸脱するグループに遭遇したことがある。

そこまでではなくても、仲間といっしょに浴室中に響く大声で会話をするグループや、黙浴のマナーを守らずにずっと会話をしているグループもよく見かける。

ソロ温泉でひとりの時間を愉しみたい場合は、自分のほうから独泉となる手立てを考えるほかない。

そこでおすすめしたいのが、貸切風呂(家族風呂)である。

貸切風呂(家族風呂)は、ひとり旅とは無縁のように感じるかもしれないが、独泉の時間を確保するには有効な手段である。

高まる「貸切風呂」のニーズ

小さな子供がいる家族、介助が必要なお年寄、タトゥーを入れている人、ラブラブ期のカップルなど、貸切風呂はニーズが高いためか、最近では大浴場とは別に貸切風呂を設ける温泉旅館が増える傾向にある。

貸切風呂は追加料金が必要になるケースが多いが、なかにはサービスの一環として貸切風呂を宿泊料金込みで提供している宿もある。これらは中小規模の温泉宿でよく見かける。

たとえば、湯河原温泉「オーベルジュ湯楽」は創作イタリアンのコース料理が美味しいと評判の人気宿であるが、時間制で貸切風呂を利用できる(繁忙期を除く)。

2つの貸切湯船のうち、ひとつは20畳ほどある広々とした露天の岩風呂。竹林などの緑に囲まれており、秋は赤や黄色に染まった湯河原の山々が見渡せる。頭上を見上げれば、たわわに実った柿の木がある。

70度以上あるアツアツの自家源泉が打たせ湯のように、ドボドボと音を響かせながら湯船に注がれている様は圧巻。源泉が高温のため、加水をしているが、源泉かけ流しである。

数百円で貸切も

独泉にこだわりたいなら、このように追加料金なしで貸切露天を提供している宿を探すのも一手だろう。

特に、九州の温泉には「貸切(家族)風呂」が文化として根づいている。旅館にかぎらず、家族風呂限定の日帰り施設や、まるでカラオケボックスのように個室が並ぶ温泉施設もめずらしくない。しかも、他の地方の家族風呂よりも料金が手ごろで、施設によっては数百円で貸切にできるところもあるくらいだ。

予算に余裕があるなら、有料の貸切風呂を利用するのもありだろう。追加料金が発生する場合、1000円~3000円が相場である。部屋付き露天風呂と比べれば安価で済む。

1泊2日のうち入浴できるのは3~4回程度であるから、そのうち1回くらいは貸切風呂で確実に独泉を愉しむという考え方もできる。

貸切風呂は湯の質が良い

貸切風呂にはもうひとつメリットがある。比較的、源泉の質が良いことである。

貸切風呂は総じて湯船が小ぶりなので、循環せずにかけ流しにされるケースが多く、「大浴場は循環式だが、貸切風呂はかけ流し」という場合もある。湯船が小さい分、湯の鮮度や清潔感が保たれやすいというメリットも無視できない。

ひとりの時間を大切にするソロ温泉では、貸切風呂を上手に活用したい。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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