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カバンにタオルを忍ばせて……プチ家出がしたくなって「ソロ温泉」へ出かけてみた

高橋一喜温泉ライター/編集者

「ああ、もういやだ!」

「ここから逃げ出したい」

「今はひとりになりたい……」

誰でもそんなネガティブな気分に陥るときがあるだろう。そんなときこそ、ひとりでの温泉旅(=ソロ温泉)に出かけてみてはどうだろう。

ケンカ後、そのまま「ソロ温泉」へ

筆者は急に思い立って、ひとりで温泉に出かけることがある。それはたいていが「仕事がうまくいかないとき」か「家族とごたごたがあったとき」である。

ここだけの話、妻とケンカしてそのまま温泉へ出かけたことも一度や二度ではない。いわゆるプチ家出である。

そんなときは、朝、自宅にあるタオルを1枚かばんの中に忍ばせて家を出る。そして電車に乗り込み、数時間後にはお気に入りの温泉につかる。

これが最高に幸せである。もちろん温泉につかる行為も気持ちいいのだが、仕事や人間関係、面倒なことから一時的に逃れた解放感に浸れる。ひたすら湯につかっていると、ささくれ立っていた心もだんだん丸くなっていく。

プチ家出の場合は、日帰りで帰路につくことが多いが、心が「重症」なときは1泊していく。

温泉宿に宿泊すれば、たいていのことは「なんでイライラしていたのだろう」「よく考えれば解決できる問題だ」と冷静になれるものだ。まさに温泉地に「緊急避難」する感覚である。

現実逃避といえばそれまでだが、ソロ温泉が私にとっては現実と向き合うために必要なステップである。

有給をとってソロ温泉

しかし、「プチ家出で温泉に行きたくても、なかなか行動に移せない」という人も少なくない。

現実には、仕事を急に休めないという人は多い。筆者のようなフリーランスの立場だとわりと時間の融通はきくが、会社勤めであれば簡単にサボるわけにはいかない。

さすがに仮病を使ってソロ温泉に出かけることは推奨できないが、週末に温泉に行く計画を立てたり、仕事に支障が出ない直近のタイミングで有休をとったりすることはできるだろう。

おすすめは有休をとって平日に温泉へ出かけることである。温泉地の場合、平日と休日では人の混雑具合いが全然違う。静かに心を落ち着かせたいのであれば、断然平日がおすすめである。

この場合、すぐにソロ温泉に出かけられないのは難点だが、出かける計画を立てるだけでも心は解放的になるものだ。

仕事や人間関係と距離をとる

ソロ温泉(プチ家出)に二の足を踏む人からは、「ひとり旅はさびしいのでは?」という声もよく聞く。

実際、ひとりだと孤独を感じ、旅を楽しめないという人も多いだろう。あるいは誰かといっしょにいて、話を聞いてもらうことですっきりするタイプの人もいるだろう。イライラを解消する手段は、人それぞれである。

無理して温泉に出かけても、かえって気疲れするだけなので、ソロ温泉を押しつけるつもりはない。

だが、ソロ温泉の魅力を知っている筆者からすれば、ひとりの時間をつくることによって、感情や考えがすーっと整理されていくように感じる。普段の人間関係やしがらみから逃れ、距離をおいて自分を見つめ直せるのがソロ温泉の魅力である。

ひとり旅には向き不向きはあるだろうが、多くの人は、ふと「ひとりになりたい」「人間関係に疲れた」と感じるときがあるはずだ。そんな心のもやもやを抱えているときこそ、プチ家出(=ソロ温泉)をしてみる絶好の機会である。選択肢のひとつに入れておいてほしい。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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