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入浴だけではもったいない! 温泉好きが必ず「温泉を飲む」理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

温泉は「飲む野菜」

温泉には、さまざまな効果があるとされている。皮膚からさまざまな温泉成分が取り込まれるだけでなく、温熱効果によって体温が上がり、自己免疫力を取り戻すこともできる。

このように「温泉=入浴するもの」というイメージは間違っていないが、「温泉=飲むもの」でもある。

いわゆる「飲泉」である。

飲泉とは、その名の通り、温泉を口から飲むこと。

温泉地に行くと、飲泉所が設置されていたり、浴室の湯船に飲泉用のコップが置かれていたりするのを見かける。

三朝温泉の飲泉場
三朝温泉の飲泉場

味は泉質によってさまざまだが、塩分が溶けこんでいる湯は塩味だし、鉄分が溶けこんでいる湯は金属の味がする。まろやかな塩味で飲みやすい湯もあれば、飲みこむのを躊躇したくなる強烈な味の湯もある。

いずれにしても、味がするのは温泉にミネラル成分が溶けこんでいる証しである。だから筆者も、飲泉ができる温泉施設では、積極的に温泉を飲むようにしている。

ヨーロッパの温泉地は日本に比べて泉温が低い源泉が多い。そこでは、盛んに飲泉が行われ、入浴よりも飲泉がメインの温泉地もあるほどである。

温泉につかって肌から温泉成分を吸収するよりも、口から飲んだほうがダイレクトに体内に温泉をチャージできるので、より高い効能を期待することができる。ドイツでは温泉が「飲む野菜」と表現されるほどである。

船小屋温泉の飲泉所
船小屋温泉の飲泉所

飲める温泉は本物の証し

直接、温泉を体内に取り込めるということは、その温泉は本物であり、鮮度が高い証しでもある。循環ろ過で塩素殺菌していたり、体に悪い不純物がまざる可能性のある源泉は、保健所から飲泉の許可が下りない。当然、そんな湯を飲めば体に毒である。

日本の温泉地にも飲泉のできる温泉施設は存在するが、保健所の許可が必要なこともあって、それほど多くはない。経験則からいって全体の1~2割くらいだろうか。

四万温泉(群馬県)や三朝温泉(鳥取県)、長湯温泉(大分県)、湯平温泉(大分県)などは飲泉で有名な温泉地で、気軽に源泉を味わえる飲泉所が設置されている。昔ながらの湯治宿にも、飲泉が可能なところが多い。

温泉地で飲泉所を見かけたら、ぜひ、ひと口味わってみてほしい。体の内と外から温泉効果を得られ、心身ともに整っていく感覚を得られるかもしれない。

ただし、飲みすぎには要注意。温泉にはさまざまな成分が溶け込んでおり、適切な量を守らないと、体に害が及ぶ可能性もある。飲泉所や脱衣所などに掲示してある用法用量には必ず目を通すことが大切だ。

高橋一喜|温泉ライター

386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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