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ひとり旅こそこだわりたい! 「温泉宿の公式サイトを鵜呑みにしてはいけない」理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

温泉宿を選ぶとき、何を参考にしているだろうか? インターネット検索に頼る人は多いだろう。

すでにお目当ての宿があるなら、その宿の名前を入れて検索する。すると、多くの場合、その宿の公式サイトにたどり着く。

まだ宿が決まっていない場合は、「〇〇温泉 旅館」などと温泉地とセットにして検索する。この場合、その温泉地の旅館がいくつかアップされ、目ぼしい宿はやはり公式サイトを見ることになるだろう。

つまり、公式サイトを確認することなく、宿泊する旅館を決めるケースは少ないということだ。

だが、この公式サイトが曲者である。宿の顔である公式サイトは多かれ少なかれ「お化粧」しているからだ。だから、その内容を鵜呑みにしてはいけない。

料理や浴室は盛られやすい

宿を選ぶときは、公式サイトは疑ってかかる必要がある。基本的には、よそ行きに着飾っているという前提でいたほうが安全だ。

いちばん避けたいのは「ホームページのイメージと全然違う!」という事態。いくら温泉でゆっくりできたとしても、「こんなはずじゃなかった」ともやもやした気持ちが強いと、旅のテンションも下がり、ネガティブな思い出に支配されてしまう。

宿の立場からすれば、よく見せたいのは当然だ。嘘にならない範囲で、華やかに、キレイに、スタイリッシュにホームページを飾る。

たとえば、料理は最も「盛られ」やすい。海の近くの温泉地であれば、船盛りの刺身やカニやイセエビ、アワビなどの高級食材がずらりと並んだ写真が掲載されている。だが、実際には品数が少なく貧相で、高級食材も高額プラン限定であったりする。

温泉も「盛られている」と考えたほうが無難だ。公式サイトに掲載される浴室や湯船の写真は、いちばんよく見える角度、時間に撮影されたもので、画像にも加工が施される。特に夜の浴室写真はムードを演出しやすいので要注意。

期待しすぎると、現地に行って「こんなに狭かったっけ?」「イメージしていた雰囲気と違う」とがっかりすることもある。

サイトでは源泉の利用状況がわからない

とはいえ、浴室や湯船の写真はあくまで「イメージ」と捉えれば、想像と大きく異なるような事態は避けられる。だが、問題は源泉の利用状況である。具体的には、源泉がかけ流されているかどうか、そして、どれほど鮮度が高いかである。

ソロ温泉(ひとりでの温泉旅)は、温泉が主役。源泉の状態は事前に把握したうえで、できるだけ「いい温泉」に入りたい。

単純化していえば、公式サイトで「源泉かけ流し」など湯へのこだわりを積極的に謳っている宿は、その言葉を信じてもいいだろう。温泉の質に誇りをもち、それをアピールすべき部分だと自覚している証拠である。

感覚的には、このように源泉かけ流しを堂々と謳っているのは、全体の3割以下だろうか。

一方で、7割超の公式サイトは、湯の利用状況について明示していないか、「循環ろ過式」であると表示している。

循環式であることを明示しているケースは良心的である。その理由まできちんと説明し、できるかぎり湯の鮮度を気にかけていることが伝わるような姿勢だと、一度行ってみたいという気にもなる。実際、循環はしていても、源泉の個性が失れていないケースもあるからだ。

源泉の湯使いについて何も触れていない宿は、9割方、循環ろ過式だと考えていい。源泉かけ流しではないから、あえて触れていないと思われる。

本当に「源泉かけ流し」か?

厄介なのは、「源泉かけ流し」と公式サイトで謳っているのに、実際は湯の鮮度がいまいちであるケースだ。

「源泉かけ流し」という言葉は法律で定義されているわけではないので、さまざまな解釈があり、「例外」が生まれる。

たとえば、湯口からは源泉を投入しているが、湯船の中で循環ろ過しているケース。正確にはかけ流しと循環の「併用式」であるが、宿は「源泉かけ流し」と主張できる。いくら源泉が投入されていても、湯船の中で循環されていれば、湯の性質は大きく変わってくる。

また、「源泉かけ流し」とは謳わず、「源泉100%」「天然温泉100%」などと表現するサイトも見かける。この場合、「加水で湯を薄めていない」だけで、実際には循環ろ過して、湯の個性が失われているケースもあるから紛らわしい。

要は、公式サイトを見るだけでは、宿の温泉の実態をつかむのは難しいということだ。

もちろん、受け入れる宿にもいろいろ事情があるし、温泉の質以外の部分で多くのファンをもつ宿もたくさんある。

だが、温泉入浴が主役である「ソロ温泉」では、温泉の質は生命線である。ミスマッチが起これば、両者にとって不幸である。

そのため、旅行者は宿のウェブサイトを鵜呑みにすることなく、最低限の「見極める目」をもつことが大切なのだ。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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