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【入浴前? 入浴後?】意外と知らない! 温泉施設で体を洗うタイミング

高橋一喜温泉ライター/編集者

みなさんは、温泉に入浴する際、どのタイミングで体を洗っているだろうか?

筆者が観察する限り、入浴する人の半数くらいは湯船につかる前にしっかりと体を洗ってから入浴している。

体を清潔にしてから入浴することは、マナーとしては申し分ない。いまだに体を洗うどころか、かけ湯もすることなしに湯船につかる不届き者がいることを考えれば、すばらしい入浴法といえるだろう。

特に多数の人が利用する銭湯や温浴施設では、入浴前に体を洗うのは常識である。ただし、旅館などの温泉をじっくり楽しむ場合にかぎっては、「入浴前に体を洗うこと」は正解とは言い切れない。

温泉成分と肌への刺激

筆者が温泉に入浴する際は、まず十分にかけ湯をし、汚れた部分を洗い流してから湯船につかる。そして、温泉を楽しんだあとに体や頭を洗うようにしている。つまり、しっかりと体を洗うのは「入浴前」ではなく、「入浴後」である。

理由は2つある。

ひとつは、肌への刺激が強すぎること。

温泉には、ただの水とは違って想像以上に薬理成分が含まれている。そのため、肌への刺激が強く、入浴前にボディソープとタオルでごしごしと肌の角質をとると、温泉成分の刺激に負けることもあり得るのだ。

たとえば、「ナトリウム‐炭酸水素塩泉」といった泉質の温泉は、肌の古い角質をやわらかくする「乳化作用」が働く。簡単にいえば、温泉がせっけんのような作用をもっているのだ。

したがって、体を洗うなら、入浴前ではなく、温泉で肌の角質がとれやすくなった入浴後が適しているのである。

温泉の香りを楽しむ

もうひとつの理由は、温泉の香りを楽しめないこと。

温泉は五感で楽しむものだ。いわゆる「硫黄の香り」など、個性的な香りを放つ温泉は少なくない。

ところが、入浴前にボディソープやシャンプーで体や頭を洗うと、どうしてもその匂いが肌や髪の毛に残ってしまい、温泉の香りを感じにくくなってしまう。せっかく温泉に入りに来たのだから、温泉の香りもぜひ楽しんでほしい。

以上の2つが、温泉入浴後に体を洗うことをおすすめする理由である。もちろん、「入浴後」に洗うのが絶対の正解ではないし、温泉施設の利用状況や人の混雑具合などケースバイケースで判断すべきである。かけ湯も怠りなく、十分に行うべきなのも当然だ。

ただ、1泊2日でゆっくり宿の温泉を楽しみたいという場合などは、体を洗う前に温泉を味わい尽くしてみてほしい。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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