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ひとり旅がおすすめ! ソロ温泉は「チルい」の最高峰

高橋一喜温泉ライター/編集者

明日から三連休。行楽の秋に向けて、温泉旅行の計画を立てている人も多いかもしれない。

そこで筆者がプッシュしたいのが、ひとりでの温泉旅、つまり「ソロ温泉」である。

忙しない非日常から切り離されて、ひとりで湯と向き合い、何もしない「空白の時間」を満喫する。それは日常では味わえない贅沢な時間である。

そんなソロ温泉は最高にチルい。

「チルい」の意味とは?

チルい――。若者の間でよく使われている流行語だという。本当に使用されているのか半信半疑だったが、先日、初めて「チルい」という言葉が使われる現場に遭遇した。

ちょっと雰囲気のよいカフェで隣に座った若者(男女2人組)が「このカフェ、チルいよね」と言ったのだ。

辞書のトップメーカーである三省堂が発表した「今年の新語2021」で「チルい」が大賞に選ばれている。なんと、2016年あたりから「チルする」「チルってる」「チルアウト」「チルい」という言葉が若者たちを中心に使われていたという。

それはともかく、「チル」という言葉をあらためて調べてみると、「ゆっくりとくつろぐ」「まったりと過ごす」という意味で使われるという。

三省堂の辞書『大辞林』の編集部では、このように定義している。

チル・い(形)

〔「チルアウト」の「チル」を形容詞化した若者言葉〕リラックスした様子である。落ち着いて気分がよい。「―・い曲でまったりする」〔チルは「チルな空間」「お気に入りの店でチルする」のように形容動詞や動詞としても用いられる〕

カフェを「チルい」と表現した若者は、「まったりと落ち着く空間だ」という意味で使っていたと思われる。近年よく使われる「エモい」は動的な感情表現であるのに対し、「チルい」は静的な状態を表しているようだ。

「チル」の言葉の意味を知って、筆者にとって「チルい」とは何かを考えてみた。それは、まぎれもなく温泉に入っているときの状態だろう。

特にソロ温泉で、ひとりで何も考えずに、ただひたすら湯につかっているときが、最高にリラックスし、落ち着いた状態となる。

静かに過ごす「チル旅」

さらに、「チルい」という言葉を取り上げたウェブサイトをいくつか覗いてみると、こんな解説を見つけた。

「チルという言葉には、『1人の時間を大切にしたい』という思いが反映されています。SNS映えやSNSによる人間関係の維持に疲れた人たちが、チルに移行し始めているのです」(@DIME)

この記事の中では、若者の間でチルするためにアイテムを消費したり、お金を使ったりする「チル消費」が進んでいるとも述べられている。

「チルを求める人は、旅行先を選ぶ際も『チル旅』を楽しめることを重視する傾向にあります。チル旅とは、日々の喧騒を忘れて静かに過ごせる旅行のことです。あちこちの観光名所を訪れたり、買い物やアトラクションで楽しんだりする要素は、チル旅にはありません。自然に触れながら穏やかな時間を過ごすのが、チル旅のコンセプトです」

チル旅は「ソロ温泉」のコンセプトと重なる部分が多い。

「ソロ温泉」では、ひとりで温泉地に行ってひたすら湯船につかる。観光やグルメなど一般的な観光旅行の要素を削ぎ落とし、さらにはスマホと距離をとって、仕事や人間関係のスイッチも切る。「空白の時間」をつくることが究極の目的である。

忙しない日常から切り離された「空白の時間」は、「チルい」と近い概念といえるかもしれない。

若者や子育て中の人も「ソロ温泉」へ

これまで「ソロ温泉」に惹かれる人は、仕事や人間関係に疲れている30~50代のビジネスパーソンというイメージをもっていた。

だが、20代を中心とした若者も、SNS疲れなどからひとりの時間を欲しているのかもしれない。だとすれば、ソロ温泉は20代の若者にもオススメしたい旅のスタイルである。

もちろん、ソロ温泉は子育て世代にも、ぜひ実践してもらいたい。特に子どもが小さいうちは、最も「空白の時間」を得るのが難しい状況といえる。

だからこそ、ときに子どもをパートナー、あるいは実家に預けて、ひとりの時間を確保したい。子どもと離れ、ひとりの時間を過ごすことは、子どもへの愛情を再確認する機会となるかもしれない。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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