温泉好きの間で常識となっている定説がある。

「いい温泉地は外湯（共同浴場）が充実している」

歴史のある温泉地の多くに、おもに地元の人が毎日のように通う外湯（共同浴場）が存在する。温泉街が形成される初期から存在する共同浴場は、温泉街のシンボル的存在であり、地域コミュニティの中心でもある。まさに元気のある温泉街の象徴と言ってもいい。

外湯は地域の人が普段から使用している温泉なので、総じて源泉の質が高く（かけ流しが多い）、大事にされている。

そんな外湯にお邪魔して、湯浴みを楽しむのも温泉旅の醍醐味である。

そこで、外湯（共同浴場）を巡るのが楽しい温泉地を5カ所紹介したい。

野沢温泉（長野県）

標高600ｍに位置する情緒あふれる温泉街には、旅館や土産物屋、飲食店などが並ぶほか、13の外湯が存在し、無料（寸志）で利用できる。趣きある旅館のほか、民宿やペンションなども多く、リーズナブルに滞在することも可能だ。

渋温泉（長野県）

渋・湯田中エリアは渋、湯田中、角間、安代など10以上の温泉地がひしめく一大温泉郷。その多くに外湯が存在する。なかでも渋温泉街の石畳は情緒あふれる。９つの共同浴場をめぐる「外湯めぐり」が名物で、宿泊客は無料で外湯に入浴できる。浴衣姿の入浴客がそぞろ歩きを楽しむ光景も絵になる。

別府温泉郷（大分県）

「温泉のテーマパーク」ともいえるほど多彩な入浴施設がそろう別府は、街全体が温泉街。街を歩ければすぐに外湯に当たるくらい日常生活に溶けこんでいる。その数は100を超える。入浴料金も無料や100円などもあり、気楽に外湯をはしごできるのもうれしい。

飯坂温泉（福島県）

福島市内の温泉街で、松尾芭蕉が『奥の細道』の旅の途中に立ち寄った歴史をもつ。「鯖湖湯」や「波来湯」をはじめ共同浴場が充実しているのが魅力で、共同浴場をいくつか巡りながら、温泉街を散策するもの楽しい。源泉の温度が高めなので、総じて熱めの湯だが、シャキッと心身が引き締まる感覚が気持ちいい。

伊東温泉（静岡県）

全国屈指の源泉湧出量を誇る東伊豆の名湯。熱海や箱根ほど混雑していないので、落ち着いて湯巡りを楽しめる。「七福神の湯」と呼ばれる共同浴場が温泉街に点在し、いずれも源泉かけ流し。東海館をはじめ文化的な観光スポットや飲食店が多いのも魅力である。