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誰もが知る温泉は避けるべき? 「ひとり旅に適した温泉地」の特徴とは

高橋一喜温泉ライター/編集者

日常から離れて「ソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)」に出かけたい。寒さが和らいだ今の季節は、温泉旅行の計画を立てている人もいるのではないだろうか。

ソロ温泉にまだ慣れていない人の目的地として、まず候補に挙がるのは、誰もが知っているような有名温泉地だろう。

箱根温泉(神奈川県)、草津温泉(群馬県) 、道後温泉(愛媛県)、熱海温泉(静岡県) 、有馬温泉(兵庫県) 、城崎温泉(兵庫県)、由布院温泉(大分県)などが代表的な温泉地としてメディアなどで候補として挙げられがちだ。

もちろん、これらの温泉地はどこも独自の歴史や文化、環境をもち、湯力もある。日本を代表する温泉地ばかりである。

ただ、「ソロ温泉」に向いているかという観点からいうと、少々疑問が残る。

じつは、ソロ温泉と有名温泉地は相性があまりよくない。ソロ温泉に向いている温泉地はどこだろうか?

人が多いと「孤独」を感じる

せっかく温泉に出かけるのだから、温泉旅ならではの情緒を感じたい……という人は多い。誰もが知っている有名な温泉地は、いずれも温泉街が形成されていて情緒もある。

ソロ温泉は温泉そのものを堪能するのが重要な目的であるが、雰囲気のよい温泉街を散策すれば旅の充実度は倍増する。入浴後に浴衣と下駄で温泉街を歩けば非日常感を味わえる。温泉の魅力を多面的に感じられるという点で適している。

だが、温泉街が充実し、観光客が多い温泉地は、ソロ温泉の舞台としては少々にぎやかすぎる。

都心に比べれば、静かな環境かもしれないが、週末の温泉地はかなりにぎやかである。有名な温泉地は、ひとりになるというよりも、家族や友人といっしょに訪ねると楽しい温泉だといえる。

ひとり旅に慣れている人であれば、少々にぎわかな温泉地でもまわりのことはさほど気にならないかもしれないが、旅に慣れていない人は、どこに行ってもカップルやグループばかりが目につくと、かえってさびしさを募らせてしまうかもしれない。

特に食事の際にわびしさを感じる恐れがある。大温泉地の大型旅館だと、大きな広間で他の宿泊客といっせいに食事をとるパターンもある。会話で盛り上がっているグループが近くにいると気まずい。特にビュッフェ形式だと、孤独を感じやすい。

外で食事をするにしても、大きな温泉街の人気店だと外に客が並んでいることもあり、やはり一人だと入りづらい。

有名温泉地は、一見華やかでひとりでも楽しめそうな気がするが、案外、孤独を感じる機会が多いのだ。

狙い目は落ち着いた温泉地

狙い目は、それなりに街並は充実しているけれど、観光客がそれほど殺到しない、落ち着いた温泉街である。鄙びているくらいがちょうどいい。

たとえば、草津温泉よりも「四万温泉」「沢渡温泉」、箱根温泉よりも「湯河原温泉」、熱海温泉よりも「伊東温泉」、城崎温泉よりも「三朝温泉」、由布院温泉よりも「湯平温泉」「長湯温泉」のほうがソロ温泉には向いている。

また、宿泊する宿も大型の旅館やホテルよりも、家族で経営しているような小さな宿のほうが落ち着いていて居心地が良い。

ちょうどいい塩梅なのは、野沢温泉や渋温泉などである(ともに長野県)。温泉地の情緒を感じられるが、にぎわいもほどほどの温泉地である。

「にぎやかすぎない」ことを基準に温泉地を探すと、充実したソロ温泉を楽しめるはずだ。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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