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まだ外国人観光客にバレていない「東北のレトロな温泉地」5選

高橋一喜温泉ライター/編集者

最近、温泉地に行くと目立つのが外国人観光客の姿である。先日、首都圏のある温泉地を訪ねたところ、「観光客の半分以上が外国人では?」と思うくらいにぎわっていた。

地方のマイナーな温泉地であっても、「こんなところまで外国人観光客が!」と驚かされることもある。

コロナ禍などで大きなダメージを負った温泉地にとって、インバウンド需要はありがたいに違いない。外国人に日本の文化である温泉の魅力を知ってもらえるのも、個人的には大変うれしい。「ようこそ日本の温泉へ!」と声を大にして言いたい。

一方で、最近ではオーバーツーリズムという言葉が話題になっているように、外国人観光客が多く押し寄せ、居心地の悪さを感じてしまうこともある。特にひとり旅で静かな時間を求めて来る人にとって、温泉地の雰囲気は大切である。

そこで、今回はまだ外国人観光客には気づかれていないけれど、源泉も風情も魅力的な鄙びた温泉地を東北エリアに絞って紹介したい。

温湯温泉(青森県)

黒石市にある小さな温泉街。「ぬるゆ温泉」と読む。とはいえ泉温は60度くらいあり、よく温まるので「温湯」と呼ぶようになったとか。温泉街には共同浴場を中心に、明治から大正時代にかけて建てられた木造宿が並び、ひなびた温泉場の風景を醸し出している。旅館に宿泊している人は、共同浴場に通うのが温湯温泉のスタイル。

肘折温泉(山形県)

山あいに湧く静かな温泉地だが、伝統的な湯治場の景観が今も残る。長期の湯治客が多いのも特徴で、日用品や食料品をそろえた商店もある。早朝、温泉街に朝市が立つのも見どころのひとつ。リーズナブルに宿泊できる宿が多く、プチ湯治体験を楽しむのもよし、連泊でゆっくり過ごすのもよし。

小野川温泉(山形県)

米沢市の奥座敷として栄えてきた温泉地。地名が小野小町に由来するほど歴史も深い。温泉街の端から端まで5分ほどで歩ける規模であるが、旅館や土産物店が並び、湯の街らしい風情が漂う。名物のラジウム玉子や温泉まんじゅうの食べ歩きも楽しい。中心に位置する共同浴場「尼湯」は、アツアツの湯が源泉かけ流し。塩分のきいたよく温まる湯である。

鎌先温泉(宮城県)

白石市にある600年の歴史を誇る温泉地。大正時代に建てられた木造旅館など4軒の宿で構成され、いずれも緑色に濁った源泉をかけ流しで堪能できる。もともと湯治が盛んな温泉地だっただけに、昔ながらの風景が今も残っている。老舗旅館「湯主一條」の木造建築は圧巻で、国の有形文化財。

川渡温泉(宮城県)

鳴子温泉郷の一角を占める川渡温泉は田畑に囲まれたのどかな温泉地で、湯治場の素朴な風情が魅力。散歩をしていると、日本人なら「なぜかなつかしい」と思える風景に出合える。リーズナブルな湯治宿も健在で、ひとり旅や湯治の初心者にもおすすめ。うぐいす色の濁り湯も気持ちいい。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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