ショートフィルム

私たちの知らない日本の入管の現実 ”難民”女性が迫る不審死の闇

高倉天地

ドキュメンタリーディレクター

QRコード

スマホ版Yahoo! JAPANのフォローで最新情報をチェックしてみよう

 今年4月、茨城県牛久(うしく)市にある東日本入国管理センター前のデモで、私は一人のナイジェリア人女性に出会った。自身も入国管理局(以下、入管)の収容施設に2度収容されたことがあり、いつまた収容されるか分からない状況の中、一番大きな声を上げていた。彼女の名前はエリザベス・アルオリオ・オブエザ。入管収容施設に17年間通い、収容者と面会し、勇気づける支援活動を続けている。自身を「フリーダムファイター(自由の為に権力と闘う人)」と呼ぶエリザベスの闘いに迫った。

 2018年4月13日、インド人の男性が東日本入国管理センターで自殺をした。そのちょうど1年後にデモが行われると聞き私は現場に向かった。そこには、デモに参加する20人くらいの日本人、そして外国人が1人だけいた。エリザベスだ。仮放免(かりほうめん)という立場で、入管に抗議することはリスクがある。「入管のこと怖くないの?」と尋ねると「怖くない」と答えた。

■「見えない監獄」仮放免とは?
 エリザベスはビザを持っておらず仮放免という制度の中で生活が著しく制限されている。一番の問題は就労の禁止だ。働くことができなければ、金を稼ぐことができず、衣食住を満たすことはできない。病気になっても保険に入っていないので、医者にかかることさえ難しい。さらに、住んでいる都道府県から出たい場合には事前に認可を得なくてはならない。仮放免は「見えない監獄」、「収容所に入っても地獄、出ても地獄」と言う人もいる。エリザベスは、月に4万円ほど支援団体から援助してもらって何とか生活している。誰かの助けがないと生き続けることができないのだ。

■ナイジェリア難民
 エリザベスが日本に来たのは1991年。ナイジェリアは1960年の独立以降、共和制と軍事政権による支配が交互に繰り返され、政情は安定しなかった。民族や宗教の対立が今も続き、治安回復の目処は立っていない。国外に逃れたナイジェリア難民は24万人、国内避難民は200万人もいるといわれている。

■収容者の数 死者の数
 報道によると、国内に17ある入管収容施設に現在、1200人余りが収容されている。そのうち、6ヶ月以上の長期収容者は5割を超える。3〜4年収容されている外国人も少なくない。
 2007年以降、収容施設内での死者は計15人。うち5人は自殺。しかし、長年、収容者の支援に当たっていたエリザベスによると、病気を患った状態で施設外に出され、病院に行けず死亡したケースはいくつも見てきたという。こういった事例に関しては、統計の範囲外で実態は明らかになっていない。
 
■国連の勧告
 国連の拷問禁止委員会は2007年と2013年に入管収容施設の審査を行い、長期収容は「精神的拷問」に当たると指摘。収容の抑制と上限期間の設定などを勧告した。しかし政府は「勧告は、法的拘束力を持つものではない」と現状を維持している。

■認定率は0.25% 難民の受け入れが極端に少ない日本
 そもそも大量の収容者や長期収容、仮放免者が溢れる背景には、難民の認定率が極端に低いという事情がある。UNHCRによると日本の法務省は2018年に1万6596人の難民申請を処理したが、認定したのは42人。認定率はわずか0.25%だった。カナダの認定率は56.4%、米国は35.4%だ(2018年実績)。

■大村で亡くなったナイジェリア人について
 このドキュメンタリーに出てくるナイジェリア人のソニーさん(報道では「サニー」と表記)の死因は、病気だったのか。それとも、昨今、入管施設内で頻発しているといわれる収容者が食事を取らずに抗議するハンガーストライキを彼も行っていたのか。そして入管側はそれらに対して適切に対応したのか。真相は何も分かっていない。2019年7月2日、29日の閣議後記者会見で山下貴司法務大臣は「入管庁で調査チームを立ち上げ、調査している」と説明した。その後の動きを注視していきたい。

■行動したいけどどうしたらいいか分からない人へ
 まずは知ることが大切だと思う。支援団体や入管問題、難民問題をあつかっている弁護士のTwitter、ブログをフォローしてみるのもいい。私も恥ずかしながらこの問題に向き合い始めてまだ半年も経っていない。さらに興味を持った人は、「FREEUSHIKU」などの支援団体に連絡し相談すれば収容者に面会することもできると思う。入管の収容施設では“名前と国名”が分かれば収容者に面会することができる。私も面会に行き、悲痛な表情で収容者の口から語られる現実から、この問題の重さを知った。無力感に襲われるかもしれない。しかし面会をすることは、国民が入管行政を見張っているという強いメッセージとなり、状況の改善に繋がるはずだ。大切なのは国民の意識が変わること。そうすれば国も無視し続けることはできない。

====
本作品は【UPDATE DOCUMENTARY PROJECT】で制作された作品です。
【UPDATE DOCUMENTARY PROJECT】の他作品は下記URLより、ご覧いただけます。
http://original.yahoo.co.jp/collection/movie/feature/updatedocumentary/
====

受賞歴

中国のトラックドライバーに密着にした「NHK BS1スペシャル 爆走風塵」(2017年)で衛星放送協会ドキュメンタリー部門最優秀賞、ギャラクシー賞奨励賞 受賞。

クレジット

監督・撮影・編集 高倉天地

…続きを読む

シェア

いいね

  • いいねする

作品への感想


ショートフィルムの新着作品

すべて見る

こちらのクリエイターもおすすめ

すべて見る

タグから探す

すべて見る