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大阪市内で流通する天然水の源流を探ったら、鳥取・奥大山にたどり着いた! エコな雪室にも大感動

高田強編集者・ライター・広告ディレクター(大阪市)

大阪市内を流れるの水の源流!

 大阪市内に注ぐ淀川をさかのぼっていけば、京都の八幡市橋本あたりで桂川、宇治川、木津川の3つの川が合流し淀川となっていることがわかります。この宇治川をたどればみなさんご存じの琵琶湖にたどり着きます。ちなみに木津川は京都と奈良の県境を蛇行して三重県の名張方面に。桂川をさかのぼれば京都市内の西側を北上し、京都の風景として有名な嵐山の渡月橋や保津川くだりなどに利用され、ダムマニアには有名な日吉ダムに到着。桂川としてはさらにさかのぼれて、最終的にかやぶきの里として国の重要伝統的建造物群に指定される美山の方にたどり着きます。

大阪市内で飲めるミネラルウォーターの源流!

 そんな大阪市の流れている水とは別にいま口にしている水のことを考えてみました。

 今年同様、猛暑だった昨年。飲料業界でも予想を上回る需要に、生産の調整に追われていました。

 そんなことから知ったのが、日本で一番たくさん飲まれているペットボトル飲料である「サントリー 天然水」が南アルプス産、北アルプス産、奥大山産、阿蘇産と実は4種類あること。よく見るとラベルにも水源地が書かれています。需給状況に応じてそれぞれの水源地(水工場)から全国に出荷できる体制になっていますが、主に出荷されるエリアがあって、大阪市内では基本的には奥大山産が供給されています。

 ただし、昨年の猛暑のタイミングで出荷の調整から大阪市内のコンビニでも北アルプス産の「サントリー 天然水」の550ペットボトルが並びました。そのことは昨年、この yahoo!クリエイターズの記事にも投稿しました。

大阪市内で飲める奥大山とはどんなところ?

 大阪市内で飲める「サントリー 天然水」ですが、気になったので、サントリーに取材を申し込んで奥大山の工場見学に行ってみました。

 車で向かったのは、鳥取県。工場までは大阪の梅田から車で約3時間。

 途中で津山ホルモンうどんを食べたりしたので、4時間弱かけて着いたのが、「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場」。

 この工場ですが、中国地方の最高峰である標高1,709mの大山がそびえる大山隠岐国立公園のすぐ近く、西日本最大級のブナ林が広がるエリアにあります。この工場の地中のかなり深くから、汲み上げた地下水がサントリーの天然水になるそうです。

工場見学ツアーに参加!

 こちらの工場では、一般が参加できる工場見学ツアーを週5日ほどのペースで開催しています。

生産ラインの見学前に天然水について説明!

 工場見学ツアーのスタートはゲストルームから。プロジェクションマッピングなどを使い、奥大山に降った雨や雪がどのようにして ”おいしい天然水” に変わっていくかの説明を聞きます。

 奥大山に降った雨や雪は森の大地に深く浸み込んで地層を移動。20年以上かけて磨かれ、天然のミネラルをもらって ”おいしい天然水”の原水に生まれ変わるそうです。

 ”おいしい天然水”に生まれ変わるために重要なのが、枯葉や木くずの混じった地表の“ふかふかな土”。実際の土を使い、水が浸透する様子の実験も見せてもらえます。

 20年以上かけて育まれた天然水を特別な井戸から汲み上げた後、徹底的な水質チェックを経て、ろ過、高温殺菌されペットボトルに封入。奥大山の山そのものが ”天然水の工場”ということがわかります。

天然水の製造ラインを見学!

 「水を汲み上げるだけじゃん!」と思われそうですが、汲み上げた地下水はキメ細かいフィルターを通してろ過。ミネラル分や味わいを損なうことなく、高温で瞬間的に殺菌しています。その水がボトリングされて出荷準備が整うまでの様子を見学。解説や質問に答えてもらえます。

 こちらがペットボトルに水が詰められて、レーンを流れていくところです。

 興味深かったのは、かなり最初の工程である「ペットボトルをつくる」。

 こちらの工場では、ペットボトルに詰めるだけでなく、ペットボトルを作るところから工程をはじめています。写真下の試験管のような形をした「プリフォーム」と呼ばれる容器を工場内で膨らませ、ペットボトルを瞬間的に成型。

 写真のような金型内で膨らませることで、瞬時にペットボトルを作ります。

 このプリフォームのサンプルは手に取ってじっくり見せてもらうことが可能。実際に触ってみると「この小さなモノが2リットルの容器になるの!?」と感じます。

 できあがったペットボトルの検査をし、キレイに殺菌洗浄。それから1分間に1050本(550mlボトルの場合)というスピードで天然水が注がれていきます。殺菌されたキャップの取り付け、ラベル付け、最終チェックを経て、印字が入り、そして箱詰めされて出荷といった一連の流れをガラス越しに見ることができます。

 生産ラインを見学した後は、いったん工場の外へ。

 歩いて向かった先はなんと雪室(ゆきむろ)。巨大なクーラーボックスのような仕組みの部屋で、取材時は8月の終わりごろだったのですが、なんと昨年の2月に運び込んだ雪がまだ残っています。

 巨大なクーラーボックスのような仕組みの部屋で、取材時は8月の終わりごろだったのですが、なんと昨年の2月に運び込んだ雪がまだ残っています。本来は2〜5度ともっと低いそうなのですが、この日は気温が30度を超えていたので、雪室は6度。それでも凍えるような寒さ。

 奥大山は真冬になると2~3メートルも雪が降り積もることから、そのタイミングで雪室に雪を貯蔵。雪室から生まれる冷たいエネルギーを工場から出る温排水の冷却などに利用しています。自然を生かしたエコなシステム。この部屋を体感するだけでも価値がありました。

 雪室の見学後は、ゲストルームに戻り、“あえて木を切ることで森を守る”などのお話を改めて聞きます。

 そして最後に試飲タイム。奥大山の「サントリー天然水」と、さらにもう1本を「THE STRONG 天然水スパークリング」「サントリー天然水 ヨーグリーナ」「朝摘みオレンジ&サントリー天然水」の3種類の中から選んで試飲。作られた場所で飲む「サントリー天然水」は、いつもの味わいですがなんだかありがたい気がします。

国内工場で汲み上げる地下水の2倍以上の森を健康にし、水を育む。

 見学ツアーを担当する工場の向田隆宏さんにいろいろ聞いてみました。

◆大阪で飲まれている「サントリー天然水」を作っている奥大山ってどんなところなんですか?

「奥大山一帯は、広大なブナの森が生い茂る場所で、その森の下、地中深くには清冽な天然水が、たっぷりとたくわえられています。降雪量の多さに支えられた豊富な水量とそれを守る美しい自然環境が魅力なんです」

◆タダでおいしい水を手に入れてるように思っていたのですがいろんなことをされているんですね。

「奥大山の自然環境が守られてこその『サントリー天然水』なので、森を守るさまざまな活動を行っています。先ほど説明させていただいた“ふかふかの土 ”にするため、森を管理する専門のスタッフがいるのはもちろん、森林組合員などの地元の方と一緒になって活動をしています。奥大山やその他の3工場の周辺だけでなく、2004年から全国22か所、総面積約1万2000ヘクタールの森林で“ふかふかの土 ”による“森づくり”を進めています」

◆想像もつかないくらいの広さの森を守っているんですね。

「はい。サントリーでは、全国の森を保全、涵養することで、国内工場で汲み上げる地下水の2倍以上の天然水を育んでいます」

 大山だけでなく、奥大山の山々自体がミネラル豊富な水を生み出す、ある意味工場。20年かけて作り上げた水を大阪で飲んでいるんですね。

 車で20分ほどの場所には、おいしいジャージーソフトクリームで知られる「道の駅 蒜山高原」などの観光スポットもあるので、この秋のレジャーとして「サントリー天然水」の生まれ故郷を見に行ってみてはいかがでしょうか。

サントリー天然水 奥大山ブナの森工場 見学ツアー
住所/鳥取県日野郡江府町大字御机字笠良原1177
予約電話番号/0859-75-6114(受付時間/9:30~12:00、13:00~16:30)
休業日/火・水曜日 ※時期により変更あり
休業期間/1・2月の工場は見学なし

サントリー天然水 奥大山ブナの森工場HP

編集者・ライター・広告ディレクター(大阪市)

関西ウォーカー、SKYWARD(JAL機内誌)、おとなの週末などの雑誌やwebサイトで、関西圏の飲食店やエンターテイメントについて、記事を書いています。ほかに、電鉄、食品、製薬会社、商業施設、テレビ局発行のフリーペーパーなども製作。カンテレ「よーいドン!」やMBS「魔法のレストラン」などのテレビ番組のグルメ情報コーナーでのコメント出演をちょくちょくしています。

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