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性的しらふ(性依存症とカウンセリング)

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


私は、盗撮や痴漢、のぞきや下着泥棒や露出などのカウンセリングをしています。
月に幾人かの相談がありますが、多くのクライアントは、1~2回のカウンセリングで来なくなります。

何故でしょうか?

ほとんどのケースは、捕まった直後にカウンセリングルームにご来室されます。
捕まって釈放直後なので、気分はどん底です。本人は、真剣に、「何とかしなければならない」と思っています。「もう2度としまい」「絶対にやめよう」という気持ちも強いです。

直近に、起訴・裁判という初めての体験が待ち受けています。
追い詰められた気分で、カウンセリングを受けている状態です。
よって、この状況で、再犯することは、ほぼありません。

けれど、不起訴や罰金刑が決定され、一段落すると、「何度もくり返し性犯罪を起こしてきたが、ついにバレて、最低最悪な体験をしてしまった。自分は、こんなに深く後悔・反省しているのだから、もう2度としないのではないか?」という根拠のない自信を持ち始めます。

それで、「もう性依存は治ったのではないか」「治ってないとしても、自分で治せるのではないか」という発想になります。

自分の力で治せると過信するのですね。
本当は、非常に難しいことなのに…です。

あと、弁護士にもたくさんのお金を支払ってしまったし、罰金も支払ったし、「お金がない」「カウンセリング代がもったいない」という気持にもなるのでしょうね。
それで、カウンセリングに来なくなります。

カウンセリングに通う時間と労力とお金をケチったばかりに、再犯にいたり、刑務所に行った人は数多くいらっしゃいます。カウンセリングに通っていれば、防げた犯罪が、また起きてしまったかと思うと、私は大変に胸が痛くなります。

こんな時、私は、カウンセリングの回数券を、最初に買わせれば良かったと思います。
ちなみに私のカウンセリングルームには、回数券などというものはないのですが、こんなことが起きると、真剣に導入を検討したりします。

さて、
もしも私が、お酒で大失敗したら、「もうお酒をやめよう」と、誓うと思います。
けれど、アルコール依存症の人は、そうは思いません。「これからは、気をつけてお酒を飲もう」「飲み過ぎないように、注意して飲もう」と思うだけです。
上記が、アルコール依存症の人が、心の病と言われる所以です。

同じように、
盗撮や痴漢で警察につかまった人は、
「もう性的興奮を覚えるようなものに近付くのはやめよう」とは思いません。
「これからは、害のないエロ画像をインターネットで見て楽しもう」と思うだけです。

エロ画像を見て性的興奮を覚えている状態というのは、
いわゆる、お酒を飲んで酔っ払っている状態と同じです。

酔っ払うだけでは罪ではありません。
悪酔いして、暴れるようになるからいけないのです。
性的興奮を覚えるだけでは罪ではありません。
自制心を失い、性犯罪を起こしてしまうからいけないのです。

性依存症者というのは、アルコール依存症者で例えれば、酔っ払うと悪酔いしてしまう人と同じです。彼らは、アルコール依存症が、飲んだら悪酔いしてしまうのと同じように、性的興奮を覚えると、自制心を失い性犯罪を起こす確立が高まるのです。

であるのなら、「アルコール依存症を治す方法=お酒を断つ」と同じように、「性的興奮を覚えないようにしてはどうか?」というのが、性的しらふでい続けようという考え、治療方針です。

性依存症者は、もう2度と、エロ画像を見てはいけないし、風俗にも行ってはいけません。自分の奥さんや恋人以外には、性的興奮を覚えてはいけないし、性的なものに近付いてはいけないのです。もちろん、短いスカートを履いている女性に目を奪われてもいけません。

でも、これは、実際に行おうとすると、なかなか辛いことですし、極めて難しいことです。私は、心理カウンセラーとして、そこまで厳密に禁じようとは思っていません。

彼らが、ストレスと上手につきあい、適切なストレス解消法を身につけ、コミュニケーション能力を高め、欲求のコントロールおよび適切な自己表現が出来るようになれば、性依存症は改善されるのではないか思うからです。

それと、ちょっと専門的な話になってしまいますが、依存は、大脳辺縁系の暴走が本質的な問題だ、と私は考えています。そして、その問題は、不適切な条件反射を抑えることで解消されます。

今日は、性的しらふについてお話させていただきました。

痴漢や盗撮などの性依存症は、罪や罰や本人の反省や周囲の説教で治るようなものではありません。これ以上、自分の人生を汚さないためにも、被害者を出さないためにも、一刻も早く専門家の許を訪れることをおススメいたします。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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