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HSPと発達障害の違い(繊細さんと過敏症)

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


私は、生まれ育った地元愛知に、カウンセリングルームを開設して25年が経つカウンセラーですが、「心の病系にも流行り廃りがあるなぁー」ということを実感しております。

20年ぐらい前は、AC(アダルトチャイルド)が流行っていました。ご来室されるクライアントの多くが「私は、ACです。私が生きづらいのは、私が親から愛されなかったからです」なんてことをおっしゃっておられました。

そして今、流行っているのは、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)です。ご来室されるクライアントの多くが「私は、HSPです。私が生きづらいのは、私が繊細さんだからです」なんてことをおっしゃります。

HSPを直訳すると、
「とても感受性が高い人」という意味になりますが、
「繊細で生きづらい人」という意味で捉えてらっしゃる方も数多くいます。

HSPには、いくつかの大きな特徴があります。
1.強い刺激に圧倒されやすい。
2. 他人の気分に左右されやすい。
3.大きな音や雑然とした光景のような強い刺激を、わずらわしく感じる。
4.大きな音を不快に感じる。
5.繊細な香りや、味・音・芸術作品などを好む。
6.美術や音楽に深く感動する。
等々です。

この記事を書いている私(竹内成彦)もHSPですが、
私は自分のことを、単純に過敏症だと思っています。その表現が1番自分にしっくり来ます。大きな音が苦手。チカチカする光が苦手。臭い匂いがダメ。癖のある味が苦手。ザラザラチクチクした物に触れるのが嫌い。怒っている人や泣いている人を見ると、その気持ちに引きずられる等々。
私は、自分のことを、繊細さんだと思ったことはないし、口に出して言ったこともないです。自分には鈍感なところも一杯あるだろうし、自分のことを繊細さん呼ばわりすると、周囲の人が快く思わないだろうと思うからです。

無能唱元さんが、何かの本に書いてらっしゃったことがあったのですが、
自分で自分のことを、人前で「お人好し」と言ってはいけないのだそうです。何故なら、その言葉を聞いた人は、自分のことを「意地悪な人」と言われているようで、不快に感じるだからだそうです。確かに、「意地悪な人」と言われて、喜ぶ人はいないですからね。
それと同じように、自分で自分のことを「繊細さん」呼ばわりはしないほうがいいです。何故なら、その言葉を聞いた人は、まるで自分が「鈍感」呼ばわりされているようで、不快な気持ちになることが予想されるからです。

たとえ自分が、本当にHSPだったとしても、自分を繊細さん呼ばわりして、周りから嫌われるようでは、踏んだり蹴ったりです。ただでさえ生きづらいのに、それに拍車がかかるようでは、ホントたまったものではありません。

私(竹内成彦)は、HSPは、
気質というよりは、限りなく体質に近いと思っています。

感覚処理感受性を提唱した臨床心理学者のエレイン・アーロン先生は、HSPには4つの特徴があるとおっしゃっています。
1.物事を深く処理する。
2.刺激に圧倒されやすい。
3.共感的、感情的な反応が高まりやすい。
4.些細な刺激にも気が付きやすい。
上記、2や4が大きな特徴ですが、1や3も見逃せない大きな特徴です。←ここ重要です。

私のカウンセリングルームにも、よく、「私は繊細さんなので、人付き合いがうまくいかないのです」なんてことをおっしゃるクライアントが訪ねて来るのですが、圧倒的にコミュニケーション障害であることが多いです。

HSPは、人の声が耳に響いたり、人の感情に左右されやすい特徴を持っているのであって、「自分が人からどう思われるか? が、気になる」というような人ではありません。

HSPは、治るものでも治すものでもなく、その特徴を活かすものなのですが、コミュニケーション障害は、治るものであり、治せるものです。治す努力もせず、自分を繊細さん呼ばわりして、周囲の人に気を遣わせるのは、如何なものかと思います。

私は、当事者として、心理カウンセラーとして、
声を大にして、「コミュニケーション障害は、良くなるものですから、コミュニケーション障害の方は、大いに希望を持って下さい」と言いたいです。

次に、
発達障害のひとつである、「アスペルガー症候群=自閉スペクトラム症=ASD」について言及したいと思います。
先天的な脳や神経系の障害である発達障害のひとつである「自閉スペクトラム症)」のある方は、周囲の人と同じ感覚情報を受け取っていても、脳が異なる捉え方をすることが多いです。
刺激に対する感覚を脳が過敏に受け取ってしまうことで、些細な刺激であるにも関わらず、日常生活に支障をきたすほどの苦痛を感じてしまうのです。また、好きな感覚を得るために、常同行動(飛び跳ねる、手をひらひらさせる、繰り返し大きな声を発する等)をすることが多々あります。

生活に困難さが生じるほど、感覚が非常に敏感であることを「感覚過敏」と言います。
反対に、感覚に著しい鈍感さがあることを「感覚鈍麻」と言います。
自閉スペクトラム症は、感覚過敏もしくは感覚鈍麻を持っていることが多いです。

この記事を書いている私(竹内成彦)は、「自分はHSPなんかではなく、自閉スペクトラム症の感覚過敏かなあ…」と思うことが多々あるのですが、私の場合は、自閉スペクトラム症をお持ちの方と違って、共感能力を大いに有しているので、「やっぱり自分は、自閉スペクトラム症の感覚過敏ではなく、HSPではないか?」と思う次第です。

さて、HSPと発達障害(自閉スペクトラム症)の違いですが、
HSPと自閉スペクトラム症の感覚過敏を見分けるのは、専門家でも難しいです。
ただ、ハッキリしていることがあります。それは、クライアントに向かって「あなたは、HSPだと思います。繊細さんだと思います」と言うと、クライアントは喜ぶことが多いのですが、「あなたは、発達障害です。アスペルガー症候群です」と言うと、怒り出すことが多いということです。

どうやら世間の皆さんは、HSPに関しては、比較的ポジティブな印象を持っているようですが、発達障害・自閉スペクトラム症・アスペルガー症候群に関しては、ネガティブな印象を持っているようです。

ポジティブ=積極的で前向きで明るい
ネガティブ=消極的で後ろ向きでで暗い

思うにそれが、HSPと発達障害の最大の違いかと思うのですが、この記事を読まれた皆さんは、どう思われるでしょうか?


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございました。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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