Yahoo!ニュース

悩みの正体は、イラショナル・ビリーフ(非合理な思い込み)やリミッティング・ビリーフにあった。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


イラショナル・ビリーフとは、アルバート・エリスという臨床心理学者が提唱した、「論理療法」の中に出てくる言葉で、非合理的な信念、非合理な思い込みのことです。

論理療法では、「人は目で見える世界に住んでいるのではなく、目で見える世界をどう受け取っているか、その受け取り方の世界に住んでいる」という考え方に立っています。

そして、その受け取り方には、まともな受け取り方と、おかしな受け取り方があり、「おかしな受け取り方(イラショナル・ビリーフ)を数多く持っている人は、人生が苦悩に満ちたものになる」と考えています。


イラショナル・ビリーフの代表的なものには、次のようなものがあります。
① 「ひとりっこは我がままだ」「男は浮気する生き物だ」(レッテル貼り)
② 100点でないのなら0点、白でなかったら黒。(オール or ナッシング、白黒思考)
③ 相手は私を嫌っているに違いない。相手は私を馬鹿だと思っている。(心の読み過ぎ)
④ 自分の考えに賛成する意見にだけ注目し、反対意見は無視する。(心のフィルター)
⑤ 〇〇するべきだ。〇〇するより他ない。(べき思考)
⑥ 嘘つきな金持ちを1人見ただけで、「金持ちは嘘つきだ」と決めつける。(過度の一般化)
⑦ 雨が降ったのも、子どもが不登校になったも、全部私のせいだ。(個人化・責任転嫁の逆)⑧ 親から愛されなかった私が、幸せな結婚など出来るわけがない。(感情的決めつけ)
⑨ 事態が悪化することを予想、その通りになり、「やっぱりな」と思う。(マイナス化思考)
上記は、イラショナル・ビリーフのわかりやすい例かと思います。


ここで、日本人が持ちやすい10のイラショナル・ビリーフ をご紹介します。
① 全ての人から愛されなければならない。
② 事をなすには、完全無欠であらねばならない。
③ 人を傷つける人は、人から責められるべきである。
④ 思い通りにならないと、頭に来るのは当然である。
⑤ 人間は、外界の圧力で落ち込んだり腹を立てたりするものである。
⑥ 何か危険が起こりそうな時は、心配するのが当然である。
⑦ 困難や責任は、立ち向かうより避けるほうが楽である。
⑧ ものごとはうまく運ぶべきで、直ちに最良の解決策を見出さねばならない。
⑨ 過去は重要であり、感情や行動に、今も影響を及ぼしているのは仕方ない。
⑩ 人の拒否・非難にあったから、自分はダメな人間である。

少し解説したいと思います。
①は、しんどいです。全ての人から愛されるのは、基本無理です。10人いれば、2人ぐらいの人から好かれ、1人ぐらいの人から嫌われ、7人ぐらいの人から興味を持たれない…というのが実情ではないでしょうか?
②も、しんどいです。完全無欠を目指せば、達成できない可能性に恐れおののき、結果、何も出来なくなってしまいます。
③も、しんどいです。人は、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまう生き物ですし、ここで「べき」という言葉を使われると怖くなってしまいます。正義感は、ときに害悪になります。
④も、しんどいです。生きていれば、思い通りにならないことが普通にたくさんありますし、その度に腹を立てていては、身が持ちません。こういう考え方を持っている人は、思い通りにならなくっても、特に腹など立てない…という人を見習って欲しいと思います。
⑤も、しんどいです。要するに、「落ち込むかどうかは、外界の圧力を、本人がどう捉えるか?」であって、外界そのものではないからです。
⑥も、しんどいです。「心配事の9割は起らない」という言葉を思い出してください。危険が起こりそう…という理由だけで、いちいち心配していては、こちらの身が持ちません。
⑦も、どうかと思います。避けるほうが楽な時もありますが、立ち向かったほうが問題解決に役立つこともあるからです。要は、「どちらがいい!」ということではなく、バランスです。
⑧も、しんどいです。ものごとはうまく運べたほうがいいに決まっていますが、「べき」と言われると身が縮こまります。直ちに最良の解決策を見出せない時も多々あるからです。
⑨も、しんどい考え方です。過去は重要かもしれませんが、もっと重要なのは未来です。「これから、何をどうすればいいか?」という目的志向を持てば、今持っている感情やこれから起こす行動に、良い影響を及ぼしてくれる筈です。
⑩もしんどい考え方です。人から拒否されたから、人から非難されたからと言って、自分はダメな人間である…と決めつけるのは早計です。10人いれば、1人2人の人から拒否や非難をされるのは避けられないことで、その陰には、2人3人の人から承認されているかもしれないという考えは、忘れてはならないことです。
最後に、上記のイラショナル・ビリーフが、「絶対にダメ」ということはありません。要するに、「極端になってはいけませんよ」ということです。

とまあ、先ほどから偉そうに言っている私ですが、私もつい、上記のイラショナル・ビリーフを、今も、持ちがちな人間です。イラショナル・ビリーフは、心の奥でひっそりと持ってしまいがちなので、ホント注意したいところです。何故なら、イラショナル・ビリーフ(不合理な信念)は、私たちを生きづらくさせ、人生を苦悩に満ちたものにしてしまうからです。


続いて、リミッティング・ビリーフをご紹介します。
リミッティング・ビリーフとは、私たちの物の見方や考え方や感じ方を制限する「思い込み」や「固定観念」のことです。リミッティング・ビリーフとは、知らない間に身につけた、ものごとをネガティブ(否定的)に捉える、強い「思い込み」のことです。
① 存在してはいけない。
② ありのままの自分であってはいけない。
③ 男であってはいけない、女であってはいけない。
④ 見えてはいけない。
⑤ 愛してはいけない。愛されてはいけない。
⑥ 人に近付いてはいけない。
⑦ 人を信じてはいけない。
⑧ 集団に属してはいけない。
⑨ 感謝をしてはいけない。
⑩ 成長してはいけない。
⑪ 男らしく、女らしくあってはいけない。
⑫ 子どもであってはいけない。
⑬ 親から自立してはいけない。
⑭ 自由に行動してはいけない。
⑮ 考えてはいけない。
⑯ 正気であってはいけない。
⑰ 健康であってはいけない。
⑱ 感じてはいけない。
⑲ 楽しんではいけない。
⑳ くつろいではいけない。
㉑ 重要な存在であってはいけない。
㉒ 欲しがってはいけない。
㉓ 成し遂げてはいけない。
㉔ 成功を感じてはいけない
全部で24個。上記は深刻ですね。私も書いていて、気が滅入って来ました。

多くの方が、
何故、イラショナルビリーフや
 リミッティング・ビリーフを持ち続けているのか?」 というと、
① 養育者や友人・知人に、間違った暗示をかけられてしまったから。
② 「ねばならない」と「かくあって欲しい」という、願望と事実を識別していないから。
③ 過去に執着する習癖があるから。
④ 他者の反応を気にし、自己主張しないから。
                 ということが考えられます。

あなたは如何ですか?
イラショナル・ビリーフやリミッティング・ビリーフを持ってやしませんか?

もしも、あなたが、イラショナル・ビリーフやリミッティング・ビリーフを抱え、
生きづらさを感じているようであれば、専門家の許を訪れることをおススメします。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

竹内成彦の最近の記事