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自律神経失調症とポリヴェーガル理論

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


自律神経失調症とは、不規則な生活習慣やストレスなどにより、自律神経のバランスが乱れるために起こる様々な身体の不調のことを言います。
※ 自律神経失調症というのは、公式な病名ではありません。

自律神経は、交感神経副交感神経という2つの神経によって成り立っています。交感神経は自動車ではアクセルに該当し、盛んに働いているときには血管を収縮させ、心拍数を高め、血圧を上昇させます。いっぽう、副交感神経は自動車ではブレーキに該当し、盛んに働いているときには血管を拡張させ、心拍数を下げ、血圧を下降させます。

興奮すると交感神経が、リラックスすると副交感神経が優位になります。昼間に働いている人は、通常、日中は交感神経が、夜間は副交感神経が優位になっています。今言った2つは、1日の中でシーソーのようにバランスを取りながら、絶えずどちらかが優位になることを繰り返し、私たちの心身を健全に保っているというわけです。

もしも、日中に副交感神経が優位に立っている人がいれば、ボーっとした状態で仕事しているでしょうし、夜間に交感神経が優位に立っている人がいれば、ゆったりと眠りに就くことは出来ないでしょう。

交感神経と副交感神経のうち、新たな発見をしたのが、アメリカの神経生理学者であるステファン・W・ポージェス博士です。博士は、「副交感神経は、さらに2つに分けられる」ということに気付き、ひとつを背側迷走神経、もうひとつを腹側迷走神経と名付けました。背側迷走神経は1人でリラックスするときに、腹側迷走神経は、他者と心地よく過ごすときに働いています。

ポリヴェーガル理論では、心や体の状態を、人間の体にある3つの自律神経系の働きから説明でき、トラウマを体験した人の療法を行う分野で注目されています。

私たちは、リラックスしている時、他者と心地よく過ごしている時、副交感神経を優位に働かせているのですが、活発な活動を始めたり、危険を察知すると、交感神経を優位に働かせます。交感神経は、闘争反応もしくは逃走反応を起こし、心臓ドキドキ、呼吸も浅く短くなります。そして、さらに危険な状態に陥ると、私たちは、交感神経でも対応できなくなり、副交感神経である背側迷走神経が優位になり、生命を維持することだけを目的とした凍りつき反応を起こします。

たとえば、恐怖の極みである性暴力被害を受けた時、女性が体を動かさなくなったり、声を出さなくなったり、気を失ったりするのは、人間が生き残るために持つ、神経系の自然な凍りつき反応を起こしていると言えるでしょう。

繰り返します。


リラックス状態でいるときは、副交感神経が優位になっています。
危険を察知したり恐怖を感じると、交感神経が優位になり、逃走・闘争反応を示します。
さらに、危険や恐怖を感じると、副交感神経である背側迷走神経が優位になり、動かないという凍りつき反応を示します。

副交感神経は、背側迷走神経と腹側迷走神経から成り立っている…と私は言いました。
背側迷走神経は、生まれながらにして誰もが持っているものです。
そして、腹側迷走神経は、生育過程で発達させていくものです。

人は、リラックスしている時は、副交感神経である背側迷走神経や腹側迷走神経が優位になっており、ストレスを浴びると、交感神経が優位になり、さらに、圧倒的なストレスを浴びると、今度はひきこもりなどの背側迷走神経が優位になります。

充実した人生を送るためには、交感神経がほどよく興奮している状態が不可欠と言えましょう。何故なら、私たちが、仕事に集中している時、友だちとワイワイお喋りしている時、スポーツを楽しんでいる時などは、交感神経が活性化しているからです。
私たちには、興奮としての交感神経の高まりと恐怖としての交感神経の高まりを、正しく区別できる能力が必要です。さもないと、私たちは、ほどよい興奮でも恐怖として認識してしまうからです。

私たちが、幸せになるためには、
そして自律神経失調症にならないためには、安心感を持つことが大切です。
そして、安心感を得るためには、副交感神経である背側迷走神経の働きを活発にさせ、同じく副交感神経である腹側迷走神経の働きを活発にさせる必要があります。何故なら、副交感神経と対称にある交感神経は、放っておいても、勝手にイライラしたり不安になったり、活発になってしまうから、わざわざ鍛える必要がないからです。


自律神経失調症にならないためには、安心することが大切です。

まずは、副交感神経の背側迷走神経を鍛えましょう。
1.規則正しい生活をすること。←これが何より大切です。
2.適度に運動し、身体に良い物を適量食べ、良質な睡眠を取ること。
良質な睡眠を取るためには、適度に身体を動かし、胃腸に負担をかけないことが重要です。
3.「動くときは動き、休む時は休む」と、メリハリをつけること。
4.ボーッとする時間も大切にすること。←余分なことを考えないことです。

これを機会に(この記事を読んだことを機会に)、休み下手から休み上手になりましょう。

続いて、副交感神経である腹側迷走神経を鍛えましょう。
1.船の汽笛の真似をして、「ぼぉーーー」という声を出すこと。
咽頭や喉頭や心臓に良い刺激が加わり、腹側迷走神経が鍛えられます。
2.道行く人々を、見るとはなしに見ること。
自分は周囲の人たちと、ゆるやかにつながっている…と認識することが大切です。
3.鏡に向かって、いろんな表情をすること。笑顔の練習をすること。
顔の表情筋を動かすと顔面神経が刺激され、腹側迷走神経が育ちます。
4.抑揚をつけて話す。元気よく挨拶する。
人とうまくつながっていくためには、心地よい話し方をすることが肝心です。
5.口笛を吹くこと。←口笛を嫌う人もいるから、1人でいるときにやってください。
腹側迷走神経が育っている人は、口笛が吹けない…ということはありません。
6.動物や子どもと触れ合うこと。
愛おしく温かい気持ちになれば、腹側迷走神経を育てることが出来ます。
7.お笑い番組を見て、大笑いすること。
顔面神経が刺激されます。興奮と恐怖を正しく分ける能力が磨かれます。
8.ガムを噛むこと。
ガムを噛むと顔面神経が刺激され腹側迷走神経を育てることが出来ます。
9.歌をうたうこと。できれば、誰かと一緒に謡うこと。
喉から横隔膜まで刺激されるので、腹側迷走神経に良い影響を与えることが出来ます。
10.バランスボールに乗ること。
血圧を調整する圧受容器を刺激し、ドキドキと高まった心拍数を穏やかにコントロールしてくれます。
11.胸のあたりに手をあて、感謝の気持ちを持つこと。←最強の方法です。
日々の自分の生活に、「どれだけの人が関わっているか」思いを馳せること。そうすることによって、腹側迷走神経が育ちます。

上記の副交感神経(背側迷走神経と腹側迷走神経)を活性化させる方法については、【「安心のタネ」の育て方】という本を、多いい参考にさせていただきました。

繰り返します。
副交感神経のひとつである背側迷走神経は、1人でリラックスするときに、同じく、副交感神経のひとつである腹側迷走神経は、他者と心地よく過ごすときに働いています。副交感神経がスムーズに働いていれば、私たちは自律神経失調症になることは、まずないでしょう。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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