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精神障害者保健福祉手帳の貰い方と、取得するメリット・デメリットについて。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


今日は、「精神障害者保健福祉手帳の貰い方と取得するメリット・デメリット」について、お話したいと思います。

心療内科や精神科で治療する病気の中には、慢性化して治療が長引いたり、完治が望めず、ある程度は付き合っていかなければいけない病気があります。

精神障害者保健福祉手帳とは、いわば、長期精神疾患を抱え、生活に支障のある患者さんが、福祉のサポートを受けるために必要な、証明書のようなものです。

障害者手帳の中では、もっとも歴史が浅く、1995年から始まった制度です。

症状の重さによって1級、2級、3級があり、障害者雇用制度や、自治体が定める税金・交通費の一部減額など、さまざまなサービスを受けることができます。

手帳の申請は、医師の診断書と共に、役所に書類を提出し、基準に応じた障害等級に該当する…と認められたときに交付されます。今この記事を書いている2023年度現在は、約100万人の人が、この手帳を持っています。更新は2年ごとなので、病気が良くなった場合は、手帳は返還することになります。

手帳を貰える可能性がある人は、次の条件を満たす人です。
1.初めて精神科・心療内科に通い出して6カ月以上が経過している。
2.早期に完治する可能性が低い。
3.生活への支障が生じている。
以上です。

手帳を持っている人は、統合失調症双極性障害うつ病てんかんであることが多いです。これらの病気は、治療が長引き、生活への支障も大きくなりやすいからです。その他、発達障害の方でも、日常生活や社会生活に、多くの支障が伴う…と判断されれば、手帳交付の対象となります。

1級から3級まで、どの等級になるかは、主治医の診断書によって、役所の専門機関が審査します。どのような病気にしても、まずは手帳の申請が可能な状態かどうか、主治医とよく相談してみては如何でしょうか?

続いて等級の説明をします。
1級は、精神障害によって、日常生活が著しく困難な方に適応されます。自立した日常生活は成り立たず、他人の援助を受けなければ、自分の着替えや食事も自発的に行えない状態で、ほぼ寝たきりのような生活の方が該当します。よって、自分1人で病院に通える人が1級に認定されることは、基本ありません。

2級は、精神障害によって日常生活に大きな支障があり、働くのが困難な方が対象です。生活で常に他人の助けを借りる必要はないものの、日常に様々な制限のかかる状態です。自分の意志や判断だけで、適切な家事・食事・買い物・入浴などを、問題なく行うことはできず、誰かの助けや助言が必要な方が該当します。

3級ば、精神障害によって日常生活および社会生活に支障がある方が対象です。一応の日常生活は単独で行えるものの、大きなストレスがかかると困難になる、日常の家事やデイケアの利用・精神障害者への配慮がある環境なら就労は可能だが、ストレスがかかると困難が生じてくる、などの方が該当します。

実際の手帳の貰い方ですが、

1.主治医の診断書
2.写真(上半身、縦4センチ横3センチ)
3.印鑑
4.免許証など身元を確認できるもの
5.個人番号確認書類
を持参して、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に行って、申請書類を提出すればオッケーです。手帳は、市町村によって違いますが、だいたい1カ月から3か月ぐらいで交付されます。

続いて、取得するとどんなメリットがあるのか? ということですが、精神障害者保険福祉手帳は、精神障害を持つ方が自立して生活し、社会参加するのを助ける制度なので、この手帳を持つことで、医療費の助成や公共料金の割引などが受けられます。

具体的なメリットに関しては、市町村によって違うのですが、
たとえば、私がカウンセリングルームを構えている愛知県名古屋市で言えば、
・地下鉄や市バスが無料で乗ることが出来るようになります。
・東山動物園や名古屋港水族館が無料で入れるようになります。
・障害者雇用で就職、転職活動ができるようになります。
・所得税・住民税の控除額が多く設定されるので、支払う税金が少なくて済みます。

次に、デメリットですが、
「ああ、自分は障害者になってしもうた…」と嘆くぐらいがデメリットです。他にはデメリットらしきものはないです。よって、嘆かない人や自己卑下しない人には、「デメリットはない」と言ってもいいのではないかと思います。
ときどき、「手帳を持っている人は、結婚できますか?」と聞かれることがあるのですが、それは相手次第です。相手の方が手帳を持っていることをよく思わない人であれば、結婚は難しいでしょうし、そんなこと気にしない人であれば、問題なく普通に結婚できます。さらに、結婚するときに、手帳を持っていることを言う人もいますが、言わない人もいます。
あと、「手帳を持っていると、就職が不利になりませんか?」と聞かれることがあります。就職は、メンタルクリニックに通っていること自体が不利になることは考えられますが、手帳を持っているからと言って、それが特別不利になるということは、言えないのではないかと思います。もっとも、就職活動は、メンタルクリニックでなくても、病院に通っていることは、やっぱり不利に働く思います。

精神障害者保健福祉手帳とは、長期精神疾患を抱え生活に支障のある患者さんが、福祉のサポートを受けるために必要な証明書のようなものなので、「貰える可能性のある人は、主治医とよく相談の上、役所に申請して、取得してみては如何ですか?」と、私は思う次第です。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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