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HSPは、性格傾向なのか? それとも体質なのか? 「繊細さん」ってホント?

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日は、「HSPは性格なのか?」というお話をしたいと思います。
HSPとは、ハイリー・センシティブ・パーソンの略で、敏感な人という意味です。
軽い人、重い人がいるのですが、人口の約20%がHSPと言われています。

ちなみに、ただいま(2023年7月17日、現在)、HSPという言葉が日本では大流行りで、「僕も私もHSPです」という感じです。私は、プロの心理臨床家を25年以上やっているのですが、20年ぐらい前は、アダルトチャイルドという言葉が大流行りでした。
当時は、「僕も私もアダルトチャイルドです」という感じでした。
最近は、「私はHSPなので、ノーと言うのが苦手です」「僕はHSPなので、つい約束を破ってしまいます」「私はHSPなので、遅刻することが多いです」等という言葉を聞くことが多く、少々げんなりしています。私的には、「あなたの何処が、HSPなんですか?」と問いたい気持ちです。問わないけど…。

HSPの方は、次の4つの特徴、全てを持っています。
1.考え方が複雑で、深く考えてから行動する。
2.刺激に敏感で疲れやすい。
3.人の気持ちに振り回されやすく、共感しやすい。
4.あらゆる感覚が鋭い。

今、あらゆる感覚と言ったのですが、
感覚とは、聴覚視覚臭覚味覚触覚心覚の6つとなります。

・うるさい音が苦手。賑やかな場所が苦手。
・眩しいところ、チカチカキラキラしているのを見るのが苦手。
・臭いに敏感。臭いにおいが極端に苦手。柔軟材にさえ反応する。
・味付けが濃い物が苦手。生ものを食べると、口の中がいつまでも生臭い。
・ザラザラ、チクチクしているものや、湿ったものに触れるのが苦手。
・泣いてる人や怒っている人、弱っている人を見ると、自分自身もその気持ちに引きずられる。

さて、
専門家と称する人の中でも、HSPのことを性格傾向と仰る方がいるのですが、HSPの当事者である私(竹内成彦)としては、「そうかなぁ…」って思ってしまいます。
HSPのことを性格傾向と仰る人は、蕎麦アレルギーを持ってらっしゃる人のことも、「そういう性格だ」と仰るのかなぁ…って思ってしまいます。

私は、HSPは体質だと思っています。
寒がりや暑がりの人がいるのと同じように、HSPは体質だと思っています。
だから、HSPの方は、そんな自分の体質を受け容れ、適切に自分の身を守り、
刺激の多いこの世の中を、たくましく生き抜いていかなければなりません。

具体的には、
刺激を浴び過ぎないよう注意する。
浴びてしまったら、早め早めに休憩する。
自分の特性を活かす形で生きていく、の3点です。

休憩のコツは、ひとり、静か、うす暗い、の3つの環境に身を置くことです。

あと、HSPの方は、食べ物に気をつけると過敏が少し和らぎます。
刺激物を摂取するのを避け、カルシウムやマグネシウムを積極的に摂るようにする…ということです。
これは、同じHSPの方から教わり、私自身、重宝しています。
※ 私は、サプリメントを飲んでいます。

そして、HSPの方は、自分の鋭い感覚が生きる仕事に就くよう心掛けていってください。そうすれば、疲れやすいHSPの方でも、一般の方と同じよう、遜色なく仕事できるかと思います。私は、心理カウンセラーなって良かったと思っています。

次に、

私(竹内成彦)は、当事者として、心理カウンセラーとして、HSPの人自身が、自分のことを「繊細さん」と呼ぶのは、出来れば、控えて欲しいなあ…と思っています。何故かと言いますと、HSPの方が、自分で自分のことを「繊細さん」と心の中で思うのは、もちろん構わないし、HSPの当事者同士、仲間内で言ってる分には構わないのですが、HSP以外の人に対して、「繊細さん」と口に出して言うと、反感を買う恐れが少なくないからです。
というのは、人は誰もが自分のことを、多かれ少なかれ繊細だと思っています。誰もが自分の心はガラス細工のように壊れやすく、他人の心はブリキ板のように頑丈だと思っています。
よって、HSPの方が自分のことを「繊細さん」と呼ぶと、その言葉を聞いた人は、「俺もそうだし…」と思いますし、さらに、自分が鈍感呼ばわりされたようで、気分を害してしまうからです。

いかがでしょう?

あなただって、あなたの目の前にいる人が「私は繊細さんなんですよ」とか「私はお人よしなんですよ」言ったら、まるで自分が「鈍感」呼ばわりされているようで、まるで自分が「お人悪し」呼ばわりされたようで、いい気持ちがしないのではないかと思うのですが、どうでしょう。

私は、当事者として心理カウンセラーとして、HSPの概念が世の中に正しく広まって欲しいと思っています。そして、HSPの方が生きやすい世の中になって欲しいと願っています。
だからこそ私は、くり返しになりますが、HSPのことを「繊細さん」と呼ぶのは避けて欲しいなあと思う次第です。私は、HSPは、敏感な人、過敏症、でいいのではないかと思うのですが、あなたはどう思いますか?

私は、「HSPには気を遣う」「自分のことをHSPって言う奴は面倒くさい」「HSPをアピールしてくる奴はウザい」「自分のことを繊細さんと呼ぶなんて図々しい」等と言われる世の中には、ホントなって欲しくないなあ…と思う次第です。

最後に

世の中には、「HSP」と「HSPじゃない人」の2種類の人間がいるわけではありません。世の中には、HSP傾向が強い人と弱い人がいるだけで、ほとんどの人は、その中間、グレーです。だから、「私はHSPなのか? HSPじゃないのか? どっちなんだろう?」と思い悩むのは時間の無駄です。そんなこと、どっちでもいいからです。

HSP傾向の強い人は、自分の特性をよく理解し、気をつけて生きていけばいいし、HSP傾向の弱い人は、そんなことに、いちいち気をつけて生きていかなくてもいい…ということです。

ちなみに、HSP専門カウンセラーは、「どっちかな?」って悩んでいる人に対しては、「あなたはHSPですよ」と言うことが多いです。何故なら、そう言ったほうが、そう決めつけたほうが、自分にとって良いお客さんとなり、自分自身が儲かるから潤うから得するからです。

ちなみに私は、ご来室されたクライアントに対し、「たぶん貴方は、HSPじゃないと思います」と言ったことにより、落胆されたり怒られたりしたことが幾度もあります。皆さん、「あなたが生きづらいのは、きっとあなたがHSPだからなのよ」と言われたいのかなあ…。

というわけで、長くなりましたが、今日は以上です。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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