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【うつ病とお薬のお話】うつ病は、薬で良くなるのか? 精神医学に詳しい心理カウンセラーがお答えします。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日は、うつ病とお薬の話をしたいと思います。

はじめに…、
気分が落ち込んでいる、何をしても楽しくない…といった精神症状が現れた場合は、ストレスになっているものを取り除き、そして、たくさん眠るに限ります。そうすれば多くの場合、そういった精神症状から解放されます。それでも、その精神状態が長く(概ね2週間以上)続く場合や、眠れない、何を食べても美味しくない…といった身体症状が現れた場合は、うつ病の可能性を考えたほうがいいでしょう。

ここで、うつ病とは何かを説明しますと、難しく言おうと思ったら、いくらでも難しく言うことが出来るのですが、ひとことで言うと、脳のエネルギーが欠乏した状態を指します。脳のエネルギーが欠乏しているから、憂うつな気分が続いたり、食欲や睡眠欲や性欲などが低下し、さまざまな身体症状が引き起こされるのです。

うつ病の治療において、もっとも大切なことは、ストレスの元となるストレッサーを取り除くことです。次に大切なのは、休養です。それでも良くならない場合は、お薬を飲むことを検討します。←この順番は大切です。「お薬1番」じゃぁないということです。

世の中には、心の病を薬で治療することに抵抗がある方もいらっしゃるかと思いますが、うつ病は脳の病気ですから、糖尿病や高血圧などの病気と同じように、適切な薬物治療が効果的です。

続いて、うつ病の治療に用いられる薬をご紹介したいと思います。
基本となるのが、抗うつ薬です。抗うつ薬は、脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の減少を、うつ病の原因と考えるモノアミン仮説に基づいて開発されました。
現在、日本で広く用いられている代表的な抗うつ薬は、SSRI、SNRI、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬の3種類で、新規 抗うつ薬と呼ばれています。
今言った、抗うつ薬は、古くからうつ病治療に用いられてきた三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬よりも副作用が少ないのが特徴です。

ただ、患者さんがうつ病ではなく、うつ病に似た双極性障害Ⅱ型の場合は、うつ病の薬が悪さをする場合があるので、そのあたりは十分な注意が必要です。
ここで言う悪さとは、普段以上に元気になり、夜 眠らなくても調子がよくなり、これまで温厚な性格だったにも関わらず、攻撃的になったりすることを言います。こういう変化は、本人に自覚がない場合が多いので、家族の方を含めた周囲の方は、よく見ていてあげてください。そして、症状が良くない方向に変化したことを、すぐに主治医にお伝えください。

続いて、うつ症状を訴える患者さんに、
医師は、非定型 抗精神病薬を出すことがあります。非定型抗精神病薬は、おもに統合失調症などの治療薬として用いられる薬ですが、うつ病にも効くことが少なくなく、試す価値は大いにあります。

その他、
うつ病治療に用いられる薬として、抗不安薬(精神安定剤と呼ばれることが多いです)があります。抗不安薬は、抗うつ薬や非定型抗精神病薬と違って、即効性が期待されます。また抗不安薬は、睡眠導入薬代わりにもなります。眠れない方は、上手に利用したいものです。

以上、3つの薬を簡単にご紹介しましたが、
現在、使用されている心の病の薬は、30年も40年も50年前の薬と違って、安全性の高い薬であることが多いです。どうぞ必要以上に怖がらないようにしてください。

続いて、
うつ病の薬物治療で注意したい4つのポイントをご紹介したいと思います。

ひとつめは、「規則正しく服薬しましょう」ということです。
うつ病の薬は、毎日欠かさずに薬を飲み続けることで、薬の血中濃度が保たれ、効果があらわれるものです。調子の良し悪しで、飲んだり飲まなかったりすると、思うような効果が得られませんから、飲み忘れにも注意して服薬しましょう。

続いて、ふたつめは、「指示された通りに飲みましょう」ということです。
抗うつ薬による治療は、最初は少量から開始し、症状や副作用を判断しながら徐々に量を増やしていくのが通常です。薬の量が増えたからといって不安になったり、自分の判断で量を減らしたりせず、指示された量を飲みましょう。薬に対して不明な点があったら、ためらわず医師に相談しましょう。自分で勝手に量を増やしたり減らしたりしないということです。

続いて、みっつめは、「気長に服薬を続けましょう」ということです。
抗うつ薬は、抗不安薬と違って、飲んだらすぐに効果があらわれるような即効性のある薬ではありません。個人差がありますが、効果があらわれるまで2週間~1カ月ほどかかることは珍しくないです。焦らずあきらめず、気長に服薬を続けましょう。

続いて、よっつめは、「自分の判断で服薬を中止しないようにしましょう」ということです。
うつ病は再発しやすい病気です。症状がなくなったように思っても、自分の判断で服薬を中止したり、量を減らしたりせず、主治医の指示に従って飲み続けましょう。

次に、抗うつ薬の飲みはじめにみられる副作用についてご紹介します。
SSRI やSNRI を飲みはじめた初期には、吐き気、おう吐、下痢などの消化器系の副作用がみられることがあります。通常、これらの症状は2週間程度で改善しますのでご安心ください。副作用が強い場合は、主治医に相談してみましょう。

その他、不安が増したり、イライラしたり、じっとしていられなくなった場合や、手足が勝手に動いたり、身体が固くなったり、発汗や発熱が生じた場合は、すぐに主治医に相談することをお勧めします。どうぞ、自分ひとりで悩まないようにしてください。

というわけで、今日は、「うつ病とお薬」というテーマで、お話させていただきました。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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