ショートフィルム

『日本の働き方に疲れた』彼女が中国美容業界で起業し、自由になったワケ

竹内亮

ドキュメンタリー監督 番組プロデューサー(株)ワノユメ代表

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今、中国の美容業界で注目を集める日本人がいる。美容学校で講師としてセミナーを開けば中国全土から学生が集まる、ビューティーアドバイザーの中平彩香さん(32歳)だ。

日本で働いていた頃は連日の過重労働に耐えながら、人目を気にして「自分を押し殺していた」という中平さん。当時偶然目にした“日本人エステティシャン募集”の中国の求人が、彼女の運命を大きく変えることになる。日本では夢だったエステティシャンの仕事を辞めるに至った彼女が、中国で自分らしさを取り戻し、現地で美容サロンを経営するまでに一体どんな出会いがあったのか?そして、日本と中国に見る働き方の違いとは?中国で活躍する彼女の日常を追いかけた。

世界有数の国際都市上海。エネルギー溢れるこの街には、中国人だけでなく多くの外国人が生活をしている。この街でビューティーアドバイザーとして活躍する中平彩香さんは2011年に中国にやってきた。

幼い頃から美容に興味のあった彼女は大学で管理栄養学について学んだ。大学卒業後は「誰かが美しくなるお手伝いがしたい!」とエステティシャンとして大手エステサロンに入社した。しかし、自分が抱いていた理想と現実のギャップに直面し、仕事をやめてしまった。

「エステ業界には戻らない」と決めていた彼女だったが、そんな時、中国のエステサロンで指導者になる日本人を探しているという話を聞き、興味本位で説明会に足を運んだ。

当日、その場で「今中国に行くかどうか決めてほしい」と決断を迫られた彼女は、これはチャンスかもしれない、と思い中国行きを決めてしまった。それが2011年のことだった。それから中国遼寧省に位置する都市瀋陽でエステサロンの指導者として働き始めた。そんな中国生活の中で訪れた上海旅行で、外灘の景色とそこで感じられるパワーに強く心惹かれ、「この街で働きたい」と上海での転職を決めた。

2013年に上海に転職をしてから2年後、2015年に彼女は会社から独立し、念願だった自分のエステサロンをオープンした。20代女性が海外で独立するなんて、と驚く人も多いだろうが、彼女自身にとっては自然なことだった。中国では大きな組織の一員として働くよりも、小さくても自分がトップに立ちたいと考える人が多い。そんな環境に背中を押され、彼女は独立の道を選んだのだった。

しかし、独立してから自分の甘さに気が付いたという。それまでは独立することがゴールになっていて、その先のことが見えていなかったと彼女は振り返る。苦しい時期もあったというが、そんな彼女を支えたのもまた、サロンを訪れるお客さんの存在だった。独立した当時の彼女は、まだ中国語もままならなかったが、それでも彼女を信頼し訪れるお客さんがたくさんいた。そんなお客さんとの縁に支えられ、彼女は上海で一歩一歩歩んできた。

 中国では今、不動産、自動車、通信、観光と並ぶ5大産業として、美容業界が急速な発展を遂げている。美容サービスを提供する店が増える一方、美容技術・接客力に乏しい店の乱立が問題視されており、日本式の高い技術、おもてなしの接客が熱視線を浴びているのだ。

 彼女は最近サロンだけでなく中国の美容学校で講師としても活躍している。これまでモノを重要視していた中国社会では、美容業界も「効果があればそれでいい」とサービスなどのディテールは軽視されていた。しかし、社会が豊かになるにつれサービスを重視するようになり、彩香さんのように日本式のサービスを教えられる人が必要になっているのだ。

時にはエステティシャンとして、時には講師として、忙しく日々を過ごす彼女はなぜ9年も中国にいるのか?それは中国が彼女にとって自分らしく生きられる場所だからだ。

自分のやりたいことは貫くタイプだという彼女だが、それでも日本にいた時は人の目を気にして自分のことを押し殺していたという。しかし、中国人は良くも悪くも人の目をあまり気にしない。そして自分のことをよく見ている。そんな人たちに囲まれ生活するなかで、もっと自分の生きたいように生きていいんだと思えたという。

彼女の心に「自由」を与えてくれた場所、それが中国だったのだ。

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