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【文房具情報とのつきあい方】大量の情報に対応する1冊!文房具屋さん大賞2024で現在のトレンドを知る

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手
文房具屋さん大賞2024 定価990円(税込み)

【文房具情報とのつきあい方】大量の情報に対応するこの1冊!文房具屋さん大賞2024で現在のトレンドを知る

 文房具の情報は次から次へと出てきます。そしてその全部を追いかけることは不可能です。仮にできたとしても、今度は文房具を使う時間がなくなってしまうでしょう(!)。なので、まず一冊のムックで情報をフォローしよう。今回はそういう話です。

 それが「文房具屋さん大賞2024」(扶桑社 990円税込み)です。

 文房具屋さん大賞のノミネート製品と各部門賞、それに大賞がまとまったムックです。 これ一冊をフォローするぐらいでちょうどいいのではないか。

 私はそう考えています。

文房具の情報は多すぎる

 最近感じるのがこのことです。

 その原因は、インターネットの存在です。このYahooニュースもその1つです。

あるいは、各種のデジタル情報系、ライフハック系のサイトなどでも、いろいろな文房具の情報が紹介されています。

 これだけ、デジタルが全盛になり、アナログなどは消えると言われているこのご時世に、皮肉なことにアナログな文房具の情報が競うように発信されているのです。

 だから、情報は逆に絞りたい。最低限のことだけ定期的に押えておき、必要に応じて検索などで補完したい。

 そのためには、「文房具屋さん大賞2024」のようなムックでちょうどいいと思うのです。

文房具屋さん大賞とはなにか

文房具屋さん大賞公式サイト

 日本を代表するような大小の文房具店・雑貨店・一部家電店が過去一年間に登場した各種文房具を文房具メーカーからの推薦で約1800点ノミネート。これを部門賞ごとに分類して評価、さらにデザイン賞、機能賞、アイデア賞の各賞を選んで、大賞を決定するというものです。そのプロセスは、本書のP4にあります。この図ですね。

審査のプロセスが明確

 まずここがポイントです。

 文房具屋さん大賞では、明確な審査のプロセスと各審査員の所属・お名前が公表されています。公平性と透明性があるわけです。全13社13名です。審査委員長はノベルティ研究所の高木芳紀氏です。

文具がジャンル別に細かく分かれている

 単に大賞が発表されているだけではありません。ジャンル別になっています。その内訳は以下のとおり。

「書く・消す部門」:ボールペン、シャープペン、多機能ペン、万年筆、カラーペン、消しゴム

「収納部門」:筆箱、卓上収納、ポーチ&バッグ、ファイル

「伝える・残す部門」:ふせん、レター、カード、メモ、ノート、スタンプ、手帳

「つける・留める・切る部門」:マスキングテープ、のり・テープ、シール、クリップ、ハサミ、カッター

 一口に文房具と言ってもいろいろあるのは、皆さんご存じの通りです。

 そしてそれが整然と分類されているのは、頭の中が整理されるような心地よさがありますよね。

 また、各ジャンルの上位のアイテムがかんたんですが、紹介されているのもおもしろいです。それぞれの製品の特徴とその違いがわかるからです。

開発者のコメントも面白い

 P10には大賞を受賞した「マットホップ」の開発者のコメントがあります。

 開発のコンセプトや苦労など、また想定ターゲットや、そこに届けるためにどこをとがらせているのかなどが語られています。

 たとえば、最初に投入された市場がアメリカである事。彼の地でのヒットを受けて日本の女子中高生向けに展開されたことなどが語られています。

 マットホップの世界観を作り込むために、市販の菓子のパッケージを徹底的に研究。開封線の点に至るまで細かく見たそうです。

 さらに、5年の開発期間はインクを一から作るには短いそうです。それが可能だったのは、メーカーであるぺんてるに、たくさんの顔料を均一に分散させる絵の具の技術があるからだったとのこと。

 ペンというジャンルからその文具を見ていただけでは分からない、そのメーカーの成り立ちと技術が、新しいジャンルの文具誕生に貢献する。こういう意外な事実が、この取材記事からは読み取れるわけです。

ブングジャム鼎談は、会話のひだを読め

ブングジャムの鼎談(ていだん)のページ。ぎっしり4ページ
ブングジャムの鼎談(ていだん)のページ。ぎっしり4ページ

 ブングジャムは、文具王・高畠正幸、きだてたく、他故壁氏の三氏による文房具を語るユニットです。このブングジャムは、リアルイベントもあります。また文具のフリーペーパー「Bun2」上でも鼎談のシリーズをずっとやっています。

 そしてこのムックにおける鼎談はいわばその出張版とも言えるわけです。非常にオトクです。ここを読むだけで元が取れると言えるでしょう。

 個人的にはこの3人の鼎談は、行間というより発言のひだを読む感じです。

 個々の発言のもとになっている経験を深読みしながら、そのぶつかり合い具合を楽しむといったら伝わるでしょうか。

この一冊でトレンドを知り、個別にリサーチする

 以上駆け足で、「文房具屋さん大賞2024」を見てきました。これ以外にもまだまだページはあります。

 ともあれ、文具の各ジャンルの最新トレンドが分かり、大賞製品の開発秘話がわかり、いろいろな読み物も楽しい。しかもそれがオールカラーで楽しめる。

 「文房具屋さん大賞2024」は、そういうムックです。

 もし、現在の文房具の状況を概観したいのなら、まずこの1冊を手に取るのをオススメします。そして、気になるジャンルのみ、自分でリサーチしたり調べたりするとよいと思います。

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は日経新聞「あとがきのあと」登場ほか、大学受験の問題に2回出題。その他『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も行う。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。自ら作詞作曲して手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。新曲「一般男性」も発表し、新知財プロジェクトも発表。人呼んで言葉のイノベーター。

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