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引退迫る「ノースレインボー」、機関車けん引で営業運転、青函トンネル越えた過去

鉄道乗蔵鉄道ライター

 JR北海道が運行するジョイフルトレイン「ノースレインボーエクスプレス」のラストランが2023年4月に迫っている。最終運行は、4月27日に出発するクラブツーリズムのラストラン貸切ツアーにより実施されるが、「ノースレインボーエクスプレス」は1992年の登場以来、札幌と北海道各地を結ぶ臨時特急列車として運行されてきたほか、函館から電気機関車にけん引され青函トンネルを超え青森や弘前を結ぶ臨時特急列車に使用されたこともあった。

1992年に「はこだてエクスプレス」としてデビュー

 「ノースレインボーエクスプレス」が登場したのは1992年のこと。当時は、JR北海道が従前より団体列車などに使用してきたキハ56系気動車改造の「アルファコンチネンタルエクスプレス」の老朽化が進んでいたことや、札幌―函館間を結ぶリゾート列車が計画されていたことから、「クリスタルエクスプレス トマム&サホロ」に次ぐ同社6番目のリゾート列車として、同社苗穂工場で新製された。

 運行開始は1992年7月18日の臨時特急「はこだてエクスプレス」で札幌―函館間を運行。登場時は3両の暫定編成で愛称名はなかったが、同年12月に2階建て車両を含む2両が追加され5両編成となり、この時、公募により列車の愛称名が「ノースレインボーエクスプレス」と決定した。

 1990年代は修学旅行などの大口の団体列車をメインに活躍をしていたが、2000年代以降は、札幌と北海道内各地を結ぶ様々な臨時特急列車に積極的に使用され富良野や網走、ニセコ方面などへの観光客輸送で活躍した。

 また、もう一つの大きな特徴は、「ノースレインボーエクスプレス」は、青函トンネル通過対策が施されていることで、北海道新幹線開業前は、電気機関車けん引により函館―青森間を結ぶ「ねぶたエクスプレス」や函館―弘前間を結ぶ「さくらエクスプレス」としても運転されていた。青函トンネル内は、火災対策の面から内燃機関を用いる営業列車(気動車やディーゼル機関車)の自走が認められていないことから、気動車である「ノースレインボーエクスプレス」は、電気機関車にけん引されて青函トンネルを越える営業列車として運転されていた。

「さくらエクスプレス」は、弘前―青森間のみ自走

2010年4月29日、弘前駅側線に待機する「ノースレインボー」(筆者撮影)
2010年4月29日、弘前駅側線に待機する「ノースレインボー」(筆者撮影)

 2010年のゴールデンウィーク中、筆者は、弘前―函館間で「ノースレインボーエクススプレス」を使用した臨時特急「さくらエクスプレス」に実際に乗車している。「さくらエクスプレス」は、青森県弘前市で行われる「弘前さくらまつり」に併せて、北海道新幹線開業前までは例年設定されていた臨時特急列車だった。弘前から函館に向かう列車は、弘前駅の発車時刻が15時31分で函館駅到着は19時11分、所要時間は3時間40分だ。

 「さくらエクスプレス」は、午前中の運用で函館から弘前に到着した後、一旦、弘前駅の側線で待機して、午後になり函館に折り返すという運用が組まれていた。筆者が、弘前駅に到着したのは発車の46分前。この日はあいにくの雨模様ではあったものの、側線に待機する「ノースレインボーエクスプレス」とE751系特急「つがる」、701系電車の並びを撮影することができた。

弘前駅に入線した「ノースレインボー」(筆者撮影)
弘前駅に入線した「ノースレインボー」(筆者撮影)

 列車が弘前駅へと入線したのは発車10分前の15時20分頃のこと。筆者は列車を待っていた数名の乗客と一緒に車内へと乗り込む。車内はハイデッカー構造となっていることから車窓からの見晴らしはすごぶるよい。そして、列車は、ディーゼルエンジンをうならせて弘前駅を発車。ここから青森駅までの37.4kmが自走区間だ。弘前―青森間は途中駅無停車で所要時間は約40分。途中、この年の12月に延伸開業を控えた建設途中の東北新幹線新青森駅の様子も車窓から見ることができた。

2010年12月開業を目指して建設の進む東北新幹線新青森駅(筆者撮影)
2010年12月開業を目指して建設の進む東北新幹線新青森駅(筆者撮影)

機関車連結シーンは一大イベント

 青森駅に到着したのは16時10分。ここでは15分間の停車時間の中で、先頭にED79形電気機関車を連結する。「ノースレインボーエクスプレス」は青森から函館までの約160kmを無動力状態で電気機関車にけん引されての運転となる。青森駅では、大半の乗客はホームへと降り、皆、思い思いに連結作業の様子にカメラを向け作業の様子を見守っていたことは印象的な光景であった。

機関車連結作業に興味津々(筆者撮影)
機関車連結作業に興味津々(筆者撮影)

 機関車の連結作業後、車内へと戻ると先頭車の展望席越しには機関車の赤い車体が広がっており、普段はなかなか味わうことのできない光景だ。

展望席から機関車側を望む(筆者撮影)
展望席から機関車側を望む(筆者撮影)

静かに青森駅を発車し函館へ

ED79形電気機関車を先頭に函館へ!(筆者撮影)
ED79形電気機関車を先頭に函館へ!(筆者撮影)

 発車時刻になり、列車は静かに青森駅を出発。気動車特有のエンジン音は全く聞こえなくなり、静かな乗り心地となる。印象は、かつて上野と札幌を結んでいた寝台特急「カシオペア」や「北斗星」などの客車列車そのものの乗り心地といったところだろうか。

電気機関車を先頭に走る車内の様子(筆者撮影)
電気機関車を先頭に走る車内の様子(筆者撮影)

 列車は単線の津軽線を北上し、途中の蟹田駅では函館発八戸行の特急「スーパー白鳥」と列車交換。蟹田駅の隣の中小国駅でJR東日本からJR北海道への管轄を跨ぎ、列車は複線の海峡線へと入った。

蟹田駅で789系特急「スーパー白鳥」と離合(筆者撮影)
蟹田駅で789系特急「スーパー白鳥」と離合(筆者撮影)

 青函トンネル区間を含む海峡線は、もともと新幹線規格で建設されたことから、線形が非常によく列車のスピードも格段に上がる。2016年の北海道新幹線開業時には、この海峡線がそのまま北海道新幹線に転用され、新幹線と在来線の共用区間とされた。海峡線を走る在来線の旅客列車は全廃されたが、在来線の貨物列車のみは運行が継続されている。

 青函トンネルを通過し、北海道へと渡ったのは18時過ぎのこと。北海道で最初の停車駅となる木古内駅付近では北海道新幹線の建設工事が進められており、車窓からは高架橋の基礎工事の様子なども見ることができた。

2010年4月29日、木古内駅付近で建設工事の進む北海道新幹線(筆者撮影)
2010年4月29日、木古内駅付近で建設工事の進む北海道新幹線(筆者撮影)

 木古内駅からは再び単線区間の江差線となり、津軽海峡を車窓に見ながら走ることおよそ1時間。列車は終点の函館駅へと到着。函館に着いたころにはすっかりと日が落ちていた。

函館駅到着後、すぐに電気機関車が切り離された(筆者撮影)
函館駅到着後、すぐに電気機関車が切り離された(筆者撮影)

※下記リンクで当時のブログ記事を公開しています。
▼電気機関車けん引で青函トンネルを越える気動車特急!さくらエクスプレス乗車記
http://www.noruzo-tetsudo.site/article/2010-sakuraexp.html

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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