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鉄道廃止の経済損失は最低でも5.7億円 「余市駅を存続する会」国交省マニュアルに基づく独自試算を発表

鉄道乗蔵鉄道ライター

 余市駅を存続する会は2023年4月25日、北海道新幹線札幌延伸に伴って廃止、バス転換の方針が決定された函館本線長万部ー小樽間のうち余市ー小樽間の存続を求めて、余市駅エルラプラザでフォーラム「余市の未来を考える 〜鉄路を活路に 余市を良い地に!〜」を開催した。

▼余市駅を存続する会ホームページ
https://yoichi-railway.com/
▼余市駅を存続する会ツイッター
https://twitter.com/JrJr47919919

フォーラムで独自試算を発表

余市駅エルラプラザで行われたフォーラム(写真:守山明)
余市駅エルラプラザで行われたフォーラム(写真:守山明)

 フォーラムには、住民約60名が参加したほか、約20名がインターネット配信を視聴。経済ライターの櫛田泉氏、余市駅を存続する会アドバイザーでJR北海道OBの吉村裕二氏、交通コンサルタント会社「ライトレール」の阿部等社長、北海道教育大学札幌校の武田泉准教授が登壇した。

 コロナ前の輸送密度が2000人を超えていた余市ー小樽間について、国土交通省の鉄道事業評価マニュアルに基づき 、バス転換を行った際の所要時間の増加分の経済損失を算定したところ少なくても5.7億円に上ることなどが発表された。

経済損失額は道庁試算赤字額を上回る

鉄道廃止による経済損失額は道庁試算赤字額を上回る(資料:余市駅を存続する会)
鉄道廃止による経済損失額は道庁試算赤字額を上回る(資料:余市駅を存続する会)

 経済ライターの櫛田氏は「バスドライバー不足が深刻化する中で本当にバス転換が出来るのか」「鉄道からバスへ転換すると、平均的に所要時間が20分程度増加する」と指摘。国土交通省の鉄道事業評価マニュアルに基づいて、所要時間増加分の経済損失額を算出すると少なくても5.7億円にのぼり、これは北海道庁が試算した余市ー小樽間の想定赤字額を上回る金額になると話した。

 余市駅を存続する会アドバイザーでJR北海道OBの吉村裕二氏も、自身が実際に余市―小樽間の保線業務に携わっていた経験から「北海道庁の試算額は、費用が明らかに過大に見積もられている」と話し、例えば、人件費だけで4億2000万円分の費用が見積もられており、1人500万円とすると80名分にものぼることを指摘。輸送密度、路線長とも余市ー小樽間と同程度の茨城県のひたちなか海浜鉄道は2倍の列車本数を運行しているにもかかわらず人件費の総額は1億3千万円で30名体制で運営出来ていることにも触れられた。

在来線廃止は国家の損失になりかねない

日中の余市駅の様子(写真:余市駅を存続する会)
日中の余市駅の様子(写真:余市駅を存続する会)

 交通コンサルタントの阿部等氏は、「余市ー小樽間には札幌都市圏の路線として十分に再生できるポテンシャルがある」「運行本数と駅を増やせば利用者を増やすことは可能で地域貢献ができる。廃止すべきではない」と話した。阿部氏は、北海道新幹線並行在来線対策協議会にも有識者として招聘されており、鉄道再生プランについての提言を行っていたことについては、2023年2月17日付記事(「余市ー小樽間」鉄道再生は可能、協議会で黙殺された有識者提案)でも触れたとおりだ。

 そして、北海道教育大学札幌校の武田泉准教授は、この3月に衆議院国土交通委員会で地域公共交通活性化再生法の改正に当たって参考人として招聘され意見陳述をしたことを踏まえて「地元自治体だけで議論し、在来線の廃止を決めるのは国家としての損失になりかねない」と締めくくった。

小樽市や蘭越町などからも参加者

 フォーラムには余市町だけではなく小樽市や蘭越町などの函館本線沿線からも参加者があり、「今からでも遅くはない。定期的にこうしたイベントを開催して鉄道存続の声を広めていくべきだ」との声が上がった。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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