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赤券時代の青春18きっぷで九州ー北海道を制覇、「JR5社分」入鋏スタンプを収集

鉄道乗蔵鉄道ライター

 「青春18きっぷ」。それは、春休み、夏休み、冬休みの各期間中の任意の5日間、JR全路線の普通列車が乗り放題となる切符で、根強いファンも多い企画きっぷだ。

 切符の券面は、1回~5回までのスタンプ欄が設けられており、乗車する日にこのスタンプ欄に駅員より入鋏スタンプの押印をもらって使用を開始するのが青春18きっぷの通常の使い方だ。

 2016年12月の販売分まで、この青春18きっぷには、駅みどりの窓口のマルス端末で発券されるマルス券タイプと、マルス端末のない駅で発券される通称赤券と呼ばれる常備軟券タイプの2種類が存在し、特に後者の赤券タイプの青春18きっぷは特定のファンに根強い人気を誇るものであった。

 筆者は、大学生だった2005年(平成17年)夏休みにこの赤券タイプの青春18きっぷの入鋏スタンプ欄を異なる5社分のJR社のスタンプで埋めてみたいという欲求にかられ、実際に挑戦をしたことがあった。

その挑戦は、1回目のJR九州を皮切りに、JR四国、JR西日本、JR東海、JR北海道の各駅で入鋏スタンプをもらい、JR5社分のスタンプを1枚の切符に収めようというものだ。

赤券をJR奈良線東福寺駅で購入

 赤券の青春18きっぷの販売は、主要駅での取り扱いもあったものの、基本的にはJR北海道、JR西日本、JR四国の3社のマルス端末のない駅に限られており、購入難易度が高い券種であった。

 主要駅であるJR北海道の札幌駅やJR四国の高松駅などでも赤券の取り扱いはあったが、いつも発売早々に売り切れとなっていた様子ではあったが、例えば、廃止前のJR北海道の石狩月形駅や清水沢駅、JR西日本の大阪近郊区間のPOS端末設置駅では青春18きっぷシーズンの中盤以降も在庫が残っていたことから、赤券購入の定番スポットだったように記憶している。

 筆者は、JR西日本の奈良線東福寺駅が、京都駅の隣という好立地で比較的遅くまで青春18きっぷの在庫がのこっていたことからJR西日本管内への遠征の際には赤券購入のためによく利用していた。

 そして、筆者は東福寺駅で無事に赤券の青春18きっぷを購入を済ませ、1回目の入鋏スタンプをもらうためにJR九州の博多駅へと向かうことにしたのであった。

1回目:博多(JR九州)

 2005年8月22日、スタートとなるのは九州最大のターミナル駅であるJR九州の博多駅だ。筆者は、前日から博多駅近くの東横インに宿泊し、出発に向けての準備を整えていた。

 この日の目的地は、大分県の別府大学駅。別府観光港を23時55分に出向する八幡浜港行のフェリーに間に合えばよく、博多駅の出発時間は10時28分。そうしたことから、ホテルにはチェックアウト時刻の10時までのんびりと滞在をすることができた。

 博多駅からは、一旦小倉駅へと向かい、未乗路線だった日田彦山線と久大本線に乗車。日田彦山線の添田―夜明間は2017年の九州北部豪雨で甚大な被害を受け鉄道としての復旧を断念。2023年中にBRT(バス高速輸送システム)として復旧する予定となっているが、2005年当時は車窓から見えた赤い屋根が特徴的な大きな彦山駅舎が強い印象に残っている。

 別府観光港からフェリーの深夜便で八幡浜港へ渡った後は、JR四国の八幡浜駅から青春18きっぷを使わずに松山駅へ向かい東横インに2泊した。

<1回目の行程>
・博多 10:28発 → 小倉 11:39着(鹿児島本線 快速 4122M)
・小倉 12:19発 → 田川後藤寺 13:14着(日田彦山線 949D)
・田川後藤寺 13:28発 → 日田 14:34着(日田彦山線 951D)
・日田 14:42発 → 久留米 15:47着(久大本線 1852D)
・久留米 17:14発 → 日田 18:17着(久大本線 1861D)
・日田 19:01発 → 大分 21:14着(久大本線 1863D)
・大分 21:58発 → 別府大学 22:16着(日豊本線 646M)
・別府観光港 23:55発 → 八幡浜港 ヨ2:25着(宇和島運輸)

九州北部豪雨被災前の彦山駅(筆者撮影)
九州北部豪雨被災前の彦山駅(筆者撮影)

2回目:松山(JR四国)

 2005年8月24日、2回目のスタートは四国最大の都市である松山市の主要駅、JR四国の松山駅だ。四国の都市については、JR四国の本社があり瀬戸大橋への玄関口である香川県高松市の方が栄えている印象を持たれている方も多いとは思うが、四国で人口が最大なのは実は愛媛県松山市のほうである。

 なお、2005年当時で、香川県高松市の人口が約41万人なのに対して愛媛県松山市は約50万人。一方で他の四国2県の都市については、徳島県徳島市が約26万人、高知県高知市が約35万人であった。

 この日の目的地は京都である。松山駅を9時27分に出発し予讃線の普通列車で5時間かけて高松へ。その後、瀬戸大橋を渡り岡山県へ。一旦、未乗路線である宇野線に乗車した後、岡山からはさらに山陽本線と東海道本線の普通列車で3時間かけて京都駅へと向かうというものであった。

 予讃線の観音寺駅から高松駅に向かう快速サンポート号ではJR東日本からJR四国に譲渡され大幅なリニューアル改造を受けた113系電車に乗車することができ、転換クロスシートの快適な車内で移動することができた。

<2回目の行程>
・松山 09:27発 → 伊予西条 11:34着(予讃線 4628M)
・伊予西条 11:38発 → 観音寺 12:46着(予讃線 1124M)
・観音寺 13:07発 → 高松 14:22着(予讃線 152M 快速サンポート)
・高松 14:43発 → 茶屋町 15:21着(瀬戸大橋線 3160M 快速マリンライナー40号)
・茶屋町 16:02発 → 宇野 16:33着(宇野線 657M)
・宇野 17:02発 → 茶屋町 17:25着(宇野線 1622M)
・茶屋町 17:29発 → 岡山 17:50着(宇野線 544M)
・岡山 18:04発 → 姫路 19:24着(山陽本線 1330M)
・姫路 19:31発 → 京都 20:58着(山陽本線 3526M 新快速)

お遍路さんと113系電車(筆者撮影)
お遍路さんと113系電車(筆者撮影)

3回目:大阪(JR西日本)

 2005年8月29日、3回目のスタートはJR大阪駅だ。京都に数日滞在し十分に京都観光をした筆者は、この日は大阪駅を10時に出発。未乗路線である智頭急行線に乗車したのち鳥取まで行き、鳥取からは山陰本線の普通列車をひたすら乗り継いで再び京都へと戻った。

 山陰本線の豊岡―福知山間では、鉄道ファンの間で伝説の魔改造車として語り継がれている113系3800番台(通称サンパチくん)にも乗車することができた。サンパチくんは、2両編成のうちの片方の先頭車が中間車から改造されたものではあるが、最低限の改造しか施されなかったため見た目のインパクトが大きかったことから鉄道ファンの間で伝説の魔改造車として語り継がれることになった車両であった。

 しかし、活躍ができた期間は割と短命に終わり、このあとしばらくして運用から離脱。廃車されてしまったようで、筆者にとっては最初で最後のサンパチくんへの乗車体験となってしまった。

 この日は、京都に夜遅く到着した後、翌日筆者は、近鉄電車で名古屋へと向かった。

<3回目の行程>
・大阪 10:00発 → 相生 11:26着(東海道・山陽本線新快速3429M)
・相生 11:27発 → 上郡 11:39着(山陽本線1315M)
・上郡 12:16発 → 大原 12:58着(智頭急行智頭線739D)
・大原 13:12発 → 上郡 13:55着(智頭急行智頭線740D)
・上郡 14:19発 → 智頭 15:49着(智頭急行智頭線743D)
・智頭 15:56発 → 鳥取 16:43着(因美線638D)
・鳥取 17:30発 → 浜坂 18:13着(山陰本線542D)
・浜坂 18:28発 → 豊岡 19:32着(山陰本線184D)
・豊岡 19:41発 → 福知山 20:47着(山陰本線448M)
・福知山 20:55発 → 園部 22:07着(山陰本線1156M)
・園部 22:14発 → 京都 22:58着(山陰本線288M)

伝説の魔改造車サンパチくん(筆者撮影)
伝説の魔改造車サンパチくん(筆者撮影)

4回目:名古屋(JR東海)

 2005年9月1日、この日はJR線への乗り潰しよりも愛・地球博の見学がメインで早朝、名古屋駅から地下鉄東山線とリニモを経由して万博会場へと向かう。

 愛・地球博は、電車の乗り換えや、会場正門の入場、各パビリオンの入場など1回の行動を起こす度に1時間以上の待ち時間を要するくらいの凄まじい混雑ではあったが、目的のJR東海、超電導リニア館はどうにか無事に見学を行うことが出来た。

 JR線へは愛・地球博の見学後に、愛知環状鉄道の万博八草駅からエキスポシャトルへと乗車し名古屋駅へ。そして、名古屋駅へ到着後に、改札口で第4回目の入鋏のスタンプを受けた。

 名古屋駅到着後は、東海道本線と山陰本線、舞鶴線を乗り継ぎ、京都府の東舞鶴駅へと向かう。そして舞鶴港から小樽港行の北海道航路で北海道へと渡った。

<4回目の行程>
・名古屋 発 → 藤が丘 着(名古屋市営地下鉄東山線)
・藤が丘 発 → 万博会場 着(愛知高速交通東部丘陵線リニモ)
・万博会場 発 → 万博八草 着(愛知高速交通東部丘陵線リニモ)
・万博八草 14:47発 → 名古屋 15:35着(愛知環状鉄道~中央本線 122M エキスポシャトル)
・名古屋 17:30発 → 米原 18:41着(東海道本線 2233F 新快速)
・米原 18:54発 → 京都 19:45着(東海道本線 3519M 新快速)
・京都 20:07 発 → 綾部 21:44着(山陰本線 2223M 快速)
・綾部 22:33発 → 東舞鶴 23:00着(舞鶴線 351M 特急リレー号)
・舞鶴港 ヨ1:00発 → 小樽港 21:00着(新日本海フェリー)

JR東海のパビリオン「超電導リニア館」(筆者撮影)
JR東海のパビリオン「超電導リニア館」(筆者撮影)

5回目:札幌(JR北海道)

 小樽で数日を過ごした後の2005年9月5日、青春18きっぷ入鋏スタンプ集めの旅を札幌駅で締めくくりる。この日は、札幌近郊路線の乗り潰しを楽しんで第5回目の分を消化することができた。

<5回目の行程>
・札幌 発 → 江別 着(函館本線)
・江別 発 → 岩見沢 着(函館本線)
・岩見沢 発 → 小樽 着(函館本線)
・小樽 発 → 札幌 着(函館本線)

 以上、足掛け14泊15日に渡る長旅で、JR九州・博多、JR四国・松山、JR西日本・大坂、JR東海・名古屋、JR北海道・札幌の入鋏スタンプを1枚の青春18きっぷに収めることに成功できたのであった。

最後は札幌駅でフィニッシュ(筆者撮影)
最後は札幌駅でフィニッシュ(筆者撮影)

各地域の大都市を中心に収集した入鋏スタンプ(筆者撮影)
各地域の大都市を中心に収集した入鋏スタンプ(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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