Yahoo!ニュース

JR北海道の新型737系電車の乗り心地はどうなのか!? 苫小牧―東室蘭間で実際に乗車してみた

鉄道乗蔵鉄道ライター

 JR北海道の新型737系電車が2023年5月20日にデビューし、苫小牧―東室蘭―室蘭間をメインに運行を開始した。737系電車はそれまで同区間で運用されていたキハ143形気動車や、現在、岩見沢―旭川間で運用されている721系電車の老朽化取り換えを目的として開発された。車両は2両編成の2扉ロングシートで、JR北海道初となるワンマン電車だ。また、外装はブラックフェイスに薄いピンク色の車体となっていることも特徴だ。

 筆者は、この737系電車に苫小牧―東室蘭間で実際に乗車をしてきたのでその時の様子を紹介したい。

苫小牧12:38発の室蘭行で東室蘭へ

苫小牧駅側線に留置された車両群。左から737系、H100形、キハ143形(筆者撮影)
苫小牧駅側線に留置された車両群。左から737系、H100形、キハ143形(筆者撮影)

 札幌駅から苫小牧駅へと到着したのは12時3分のこと。この日の北海道はとにかく暑く、札幌市では36.3度を記録するなど観測史上最高の酷暑日となっていた。気候が冷涼な北海道は、夏の暑さはせいぜい1週間から10日も我慢すればすぐに涼しくなることから冷房の普及率は低く、当然、苫小牧駅の待合室には冷房設備はない。室蘭行の入線までとにかくホーム上で酷暑に耐えることにした。

 苫小牧駅の側線には、737系電車やH100形気動車とともに、この5月に運用を終了したキハ143形気動車が留置されていた。

 キハ143形の所属するキハ141系はもともと国鉄時代の1970年代後半に51系客車としで製造された車両を、JR北海道発足後の1990年代に札沼線(学園都市線)輸送力増強用としてエンジンを載せ気動車化した系列だ。特にキハ143形はキハ150形気動車の駆動システムを搭載して1994年に登場した性能強化型の車両であったが、その後、2012年に苫小牧―東室蘭―室蘭間で運用していた711系電車の老朽化取り換えを目的として2023年5月まで同区間で活躍していた。

 暑いホームで列車を待ち続けることおよそ30分。発車間際になり新型737系電車が苫小牧駅4番ホームに入線。実際に乗車してみると、座席についてはやや硬いことが気になったが、車内は冷房完備でようやく快適な車内に身を置くことが出来た。東室蘭駅までの所要時間は1時間11分だ。

737系車内の様子。東室蘭駅での停車中(筆者撮影)
737系車内の様子。東室蘭駅での停車中(筆者撮影)

車内には「HITACHI 令和5年」と表記されていた(筆者撮影)
車内には「HITACHI 令和5年」と表記されていた(筆者撮影)

苫小牧市街地を向けると車窓には樽前山

車窓から見えた樽前山(筆者撮影)
車窓から見えた樽前山(筆者撮影)

 苫小牧駅では、座席がほどよく埋まるほどの乗客を乗せて発車。苫小牧市街地にある青葉駅や糸井駅でもそれなりの乗降があったことから、約17万人の人口を擁する苫小牧市において、列車本数の増加や新駅整備などに力を入れれば、まだまだ利用者を増やすことができるポテンシャルがあるのではないかと感じられた。

 そして、苫小牧市街地を抜けると車窓からは樽前山が一望できるようになった。この樽前山は噴火が警戒されている火山で、気象庁の常時観測火山に指定されている。樽前山の火山災害は有珠山以上に深刻な被害をもたらすことが指摘されおり、樽前山で火山災害が起きた場合、新千歳空港から苫小牧港にわたる広大なエリアで最大で100cm以上の火山灰が堆積するという予想が気象庁より発表されている。

 こうなってしまえば、現在、北海道と本州を結ぶ貨物列車の大動脈である室蘭本線のほか、新千歳空港や苫小牧港も完全にマヒしてしまうことになることから、貨物列車の迂回ルートを確保するうえでも、北海道新幹線の並行在来線として廃止の方針が決定された函館本線(山線)の小樽―長万部間のルート確保はやはり必要なように感じられた。

登別駅で特急北斗に道を譲り東室蘭へ

登別駅で後続の特急北斗号に追い抜かれた(筆者撮影)
登別駅で後続の特急北斗号に追い抜かれた(筆者撮影)

 苫小牧駅を発車して1時間弱で登別温泉の玄関口、登別駅へと到着。ここでは数分間停車し後続の特急北斗号に道を譲る。現在、登別駅に停車する優等列車は、札幌―函館間を結ぶ特急北斗号と札幌―室蘭間を結ぶ特急すずらん号のみであるが、札幌―上野間の寝台特急北斗星号や、札幌―大阪間の寝台特急トワイライトエクスプレス運行されていた2015年までは、登別駅はこれらの寝台列車の停車駅でもあり、東京(上野)や大阪と直結する観光地でもあった。

 登別市は、室蘭市の衛星都市の性格も持ち室蘭方面に通勤や通学をする鉄道利用者も一定数が存在する。登別駅を発車すると東室蘭まではすぐの距離で、18分ほどで東室蘭駅へと到着した。

 筆者は東室蘭駅からはさらに長万部行に乗り継ぎその先を目指したが、詳細は2023年8月29日付記事(札幌ー東京間を普通列車だけで移動するとどうなるの!? 実際に35時間かけて乗ってみた【前編】)に記している。

 737系電車は座席がやや硬いことは気にはなったが、酷暑の中の冷房付き車両ということで苫小牧から東室蘭までの1時間強、快適な移動を行うことができた。

東室蘭駅に到着した737系(筆者撮影)
東室蘭駅に到着した737系(筆者撮影)

東室蘭駅に到着した737系(筆者撮影)
東室蘭駅に到着した737系(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

鉄道乗蔵の最近の記事