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JR北海道・函館地区で列車の行先を表示する「サボ」使用が廃止されていた!? 初見殺しの普通列車

鉄道乗蔵鉄道ライター

 筆者はこの8月、「北海道&東日本パス」を利用して長万部―函館間の普通列車に乗車したことは、2023年8月29日付記事(札幌ー東京間を普通列車だけで移動するとどうなるの!? 実際に35時間かけて乗ってみた【前編】)にも記した通りだが、長万部駅からこの列車に乗車した際にある違和感を覚えた。それは、通常であれば列車側面に差し込まれている「サボ」と呼ばれる列車の行先標がなかったことだ。

国鉄時代は主流だった板式の行先標「サボ」

 列車の行先標は、国鉄時代は「サボ」と呼ばれる行先版を列車の側面に差し込む方式が主流であり、その後、方向幕と呼ばれる幕式のものが登場。近年ではその大変はLED式のものへと置き換わっているが、国鉄時代に製造された古い車両では現在でも「サボ」による行先表示が行なわれている。

 板式のものについては鉄道ファンの間では「サボ」という名称が定着しているが、これは「サインボード」を略したもので、国鉄ではこの「サボ」という名称を電報略号としても正式に使用していた。

函館地区の普通列車に何があった!?

「ワンマン」の種別表示のみで行先がどこにも書かれていない函館行のキハ40形普通列車(筆者撮影)
「ワンマン」の種別表示のみで行先がどこにも書かれていない函館行のキハ40形普通列車(筆者撮影)

 函館地区で普通列車に使用されているキハ40形も国鉄時代の1970年代後半に製造された古い車両で方向幕の設備がないことから、行先表示については「サボ」で行っていた。

 しかし、筆者が乗車した長万部16時18分発函館行の普通列車の側面にはサボの差し込みがなく、車両前面の種別表示も「ワンマン」のままで、所見では列車の行先が判別できない状態で運行がされている様子であった。

 最初は、これがこの列車のみのイレギュラーな状態であるのかとも思ったが、途中駅ですれ違った普通列車にも同様にサボの差し込みはなく、どうやらサボの使用そのものが停止されてしまっているようだ。

 この区間に乗り慣れている筆者は、長万部からの普通列車はキハ40形が函館方面、H100形が倶知安・小樽方面または東室蘭方面であることを知っているので、車両を見ただけで行先を判別できるが、初めて長万部駅を利用するインバウンドなどの旅行者にとっては、行先不明の車両が止まっているようにしか見えないこともあり得るであろう。

途中の鹿部駅で離合した普通列車にもサボによる行先表示はなかった(筆者撮影)
途中の鹿部駅で離合した普通列車にもサボによる行先表示はなかった(筆者撮影)

函館地区の普通列車の「サボ」は2021年3月改正で廃止に

 いろいろとネット上を調べたところ、下記のツイートを発見。どうやら2021年3月改正をもって函館地区のJR北海道と道南いさりび鉄道から一斉にサボが全廃されてしまったようである。

 サボの交換作業は、基本的に外注作業により行われていたようであるが、函館地区の一斉サボ廃止については、経営危機が深刻化するJR北海道においては経費削減の一環なのかもしれない。

 しかし、函館地区の普通列車を普段利用しない観光客の利用などを考えた場合には、行先不明の初見殺しの列車となり、利用者視点が欠落したような施策であるともいうことができる。サービスレベルを低下させるような過度な経費削減がさらなる利用者離れを招くこととなりかねないか心配だ。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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