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北海道ー本州間、繁忙期に最も安価に移動できる交通機関 青函フェリーの実力

鉄道乗蔵鉄道ライター

 筆者はこの8月、「北海道&東日本パス」を利用して札幌―東京間を35時間かけて普通列車での走破を試みたことは、記事(札幌ー東京間を普通列車だけで移動するとどうなるの!? 実際に35時間かけて乗ってみた【前編】【後編】)で触れたとおりだが、特別料金不要の普通・快速列車で移動することができない函館―青森間についてはフェリーでの移動を試みた。

 「北海道&東日本パス」では、新函館北斗―新青森間内相互発着に限り、特定特急券4000円の購入で新幹線普通車の立ち席利用が可能である。筆者が乗車した長万部駅を16時18分に発車する函館行では、新函館北斗駅には18時53分に到着し、19時41分発の仙台行のはやぶさ96号に乗車すれば新青森駅には20時38分に到着できる。しかし、翌日の始発列車に乗ることを考えると、青森市内での宿泊が必要となるこのルートは使い勝手が悪いことから、青函フェリーの深夜便で津軽海峡を渡ることにした。

函館―青森間には2社のフェリーが運航

 函館―青森間の津軽海峡には、津軽海峡フェリーと青函フェリーの2社がフェリーを運航している。

 津軽海峡フェリーは、もともとは東日本フェリーの愛称で運行されていたが同社が2003年に会社更生法を申請し倒産。その後も新たなスポンサー企業の元で運航は続けられていたが、2009年から函館―青森間については津軽海峡フェリーとしてリニューアルされ現在に至っている。津軽海峡フェリーは、現在、函館―青森間に深夜便を含めて8往復のフェリーを運航している。

 一方の青函フェリーは、もともとは旅客営業を行わない貨物フェリーとして運航を開始した歴史を持つ。旅客営業を開始したのは2000年からで、同年10月の海上運送法の改正により、自動車航送貨物定期航路事業を一般旅客定期航路事業に事業変更して旅客営業を開始した。青函フェリーも、深夜便を含めて8往復の運航だ。

 このように、青函フェリーのほうはあくまでも自動車の航送に主力が置かれているためか、旅客運賃が割安に設定されていることが特徴だ。

運賃体系はどう違うのか

 津軽海峡フェリーの旅客運賃は、通常期(A期間)、繁忙期(B期間)、最繁忙期(C期間)の3つに分かれており、2023年4月1日以降の函館―青森間の運賃は、それぞれ通常期(A期間)2860円、繁忙期(B期間)3420円、最繁忙期(C期間)3850円に設定されている。

 一方の青函フェリーの旅客運賃は、通常期と繁忙期の2シーズン制となっており、2023年4月1日以降の函館―青森間の運賃は、それぞれ通常期2200円、繁忙期2700円の設定となっている。

 筆者が乗船した、2023年8月23日は、津軽海峡フェリーでは繁忙期のB機関に該当し旅客運賃は3420円であったが、青函フェリーでは繁忙期の2700円で720円安い。さらに青函フェリーではJAF会員は500円引きとなることから筆者が持つJAF会員証を提示したところ2200円で乗船することができた。

この日、使用した乗船券(筆者撮影)
この日、使用した乗船券(筆者撮影)

フェリーターミナルへのアクセスは

青函フェリーの函館ターミナル待合室(筆者撮影)
青函フェリーの函館ターミナル待合室(筆者撮影)

 フェリーターミナルへのアクセスについては、函館では津軽海峡フェリーと青函フェリーでターミナルの位置が異なるが、青森でほぼ同じ場所に立地している。

 昼間であれば、函館、青森の双方のターミナルには、函館駅や青森駅からのバスでアクセスをすることも可能であるが、深夜便を利用する場合は徒歩またはタクシーでのアクセスが必須となる。

 函館側では、津軽海峡フェリーには道南いさりび鉄道の七重浜駅から徒歩で30分、青函フェリーにはJR五稜郭駅から徒歩で30分のアクセスが可能だ。タクシーを利用する場合は、津軽海峡フェリー、青函フェリーともに乗船客を対象とした定額タクシーサービスが用意されている。

 青森側では、青森駅までは徒歩で45分かかるが、こちらでも乗船客を対象とした定額タクシーサービスが用意されており、詳細は各社のホームページに掲載されている。

青函フェリーの深夜便にはどう乗るか

当初は函館駅前からバスで青函フェリーターミナルに向かおうとしたがすでにバス便はなかった(筆者撮影)
当初は函館駅前からバスで青函フェリーターミナルに向かおうとしたがすでにバス便はなかった(筆者撮影)

 筆者が函館駅に到着したのは19時20分のことで、当初はバスでフェリーターミナルに向かうことを考えた。事前にインターネットで調べたところ、青函フェリーのターミナルに行くには、函館バスの万年橋停留所が最寄りとなることは分かったが、函館駅前のバス案内所はすでに窓口が閉まっていた。仕方がないので函館駅バス停に掲示してある路線図を確認の上で、万年橋方面に向かうバスに乗ることに決めた。

しかし、乗ろうとした19時50分発のバスの運転手さんに念のため「このバスは青函フェリーターミナル方面に行くのか」と確認をしたところ、そちら方面に行くバスはもうないのとの回答。ちょうど、バスでフェリーターミナルに行こうとしていた男性旅行者の方が1人いたので、声をかけてタクシーを呼び一緒にフェリーターミナルに行くことになった。

 青函フェリーではタクシー会社と提携した定額タクシーサービスがあり、青函フェリーのホームページで指定されたタクシー会社に電話をしその旨を伝えると1200円でフェリーターミナルまで送迎をしてくれる。ご一緒をさせていただいた方とは料金を割り勘にしていただいたので600円で移動することができた。

青函フェリーの函館ターミナル待合室(筆者撮影)
青函フェリーの函館ターミナル待合室(筆者撮影)

 フェリーターミナルに到着したのは8時30分近くで、ちょうど23時30分発のフェリーの乗船手続きが開始されるタイミングだった。この日は特に予約も何もせずに直接フェリーターミナルへと向かったが、十分な空席があり問題なく手続きを終えることが出来き、乗船開始時刻までは待合室で過ごすことにした。

乗船は船体後部の車両甲板から(筆者撮影)
乗船は船体後部の車両甲板から(筆者撮影)

 乗船開始は23時から。青函フェリーへの乗船は、自動車と同じ車両甲板から乗り込むことが大きな特徴で、車両甲板の横にある急な階段を上り船室へと向かう。船室は枕があるだけの雑魚寝スタイルだ。船内にはシャワールームが設置されており、筆者はシャワーを浴びた後、3時間ほどの睡眠をとることが出来た。

始発列車の時間までフェリーターミナル待合室で過ごす(筆者撮影)
始発列車の時間までフェリーターミナル待合室で過ごす(筆者撮影)

 青森港到着後は、フェリーターミナル待合室が開放されていたので、ここで5時頃まで時間をつぶすことにした。青森駅から乗車予定の始発列車は5時40分発だ。乗船の際には、函館駅から函館のフェリーターミナルまで、青函フェリー指定の定額タクシーを利用したが、青森側でも定額タクシーの設定がある。こちらは、青森フェリーターミナルから青森駅西口まで1180円での利用が可能だ。

始発列車に間に合うようにどうにかタクシーに来ていただいた(筆者撮影)
始発列車に間に合うようにどうにかタクシーに来ていただいた(筆者撮影)

 タクシーは、青函フェリーの乗船窓口に置いてあるタクシー会社直通専用電話から予約が可能だったので、筆者は4時50分頃に専用電話からタクシー会社に連絡をしたが、今の時間、配車できるクルマがなくフェリーターミナルに行けるのは5時半頃になるという。慌てて「5時40分発の始発列車に乗らなくてはいけないのでなんとかならないか」と交渉したところ、どうにか始発列車に間に合うようにクルマを手配してもらうことができた。

 運輸業界においては、バスドライバーだけではなくタクシードライバーも深刻な人手不足に陥っているという話もちらほら耳にするが、青森のフェリーターミナルでタクシーを呼ぶ場合には、3時20分の到着後すぐにタクシーの手配をするのが無難だと感じた。なお、青森の定額タクシーも、函館のタクシーでご一緒させていただいた旅行者の方と割り勘にしていただくことができ、こちらは590円で移動することが出来た。こちらの方は、青森からは奥羽本線の始発列車に乗るということで、青森駅で別れることとなった。

早朝の青森駅西口(筆者撮影)
早朝の青森駅西口(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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