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北海道新幹線、「札幌延伸開業延期」へ 気になる「並行在来線」協議への影響は

鉄道乗蔵鉄道ライター

 2030年度末に開業が予定されている北海道新幹線新函館北斗ー札幌間について、建設工事の遅れから開業が数年延びる見通しとなった。北海道新聞の報道では「公式には札幌五輪の誘致と新幹線建設はリンクしていないが、水面下で連動している」という国交省幹部の証言が掲載されており、札幌市が進めている冬季五輪の招致時期を2034年以降に固めたことで、新幹線の札幌延伸開業を急ぐ必要がなくなったことが理由だという。

 北海道新幹線の札幌延伸については建設工事の遅れがかねてより指摘されており、「2030年末の開業が難しいのではないか」という声が各所より漏れていた。建設工事の遅れに最も影響を与えているのが、倶知安町とニセコ町にまたがるエリアで建設中の羊蹄トンネル比羅夫工区で、巨大な岩塊群にぶつかったことから工事が2年以上停止している。来月11月からは掘削を再開するというが、掘削を予定しているルートは複雑な地形であることから、工事の障壁となりそうな同様の岩塊群がないか調査をしているという。さらに羊蹄トンネル比羅夫工区の工事が完成しても電気設備設置や新幹線の試運転の準備に少なくとも3年間はかかるとされていることから、現時点では開業時期については全く見通せない状況だ。

工事が進む倶知安駅の様子(写真:読者提供)
工事が進む倶知安駅の様子(写真:読者提供)

 北海道新幹線の札幌延伸開業延期に伴い、影響が心配されるのがJR北海道の経営問題と並行在来線問題だ。JR北海道が2019年に発表した長期経営ビジョンでは北海道新幹線の札幌延伸開業に伴う利用客の増加と札幌駅前再開発に伴う不動産収入を前提に2031年度から自立経営を目指すとしていたが、この前提条件が崩れたこととなる。

 また、新幹線の延伸開業の伴いJR北海道から経営分離される函館ー長万部ー小樽間の並行在来線問題については、すでに鉄道路線の廃止・バス転換の方針を決めた長万部―小樽間については、深刻化するバスドライバー不足の問題などからバス転換協議が中断。貨物鉄道の維持を図るとされた函館ー長万部間については2025年度を目途に結論を出す方針とされていたが、今後の議論に影響を与えかねない状況となった。政府はドライバーの労働規制の強化に伴う人手不足が懸念される「2024年」問題を見据えて、鉄道や船舶の輸送量を今後10年間で倍増させる方針を掲げている。貨物鉄道の必要性は今後より一層重要度を増すことなどから、並行在来線を取り巻く環境は大きく変わっている。

 並行在来線問題については 、十分な議論を行うだけの時間的な猶予が与えられたことから、これを機会に、新幹線の経済効果を沿線地域全体に波及できるような2次交通や貨物鉄道として再活用を見据えて、より建設的な方向で議論が行われることを望みたい。

新函館北斗駅北側の工事の様子(筆者撮影)
新函館北斗駅北側の工事の様子(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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