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北海道新幹線「並行在来線」、沿線バス会社は鉄道代替バスの引受困難 道はほかのバス会社やタクシーも検討

鉄道乗蔵鉄道ライター

 廃止・バス転換の方針が決定されている北海道新幹線の並行在来線の長万部―小樽間140.2kmについて、鉄道代替バスを運行予定の北海道中央バスなどバス会社3社が、北海道庁が策定した代替バスのダイヤ案に沿ったバス路線の運行が困難であることを道側に伝えていたことが、地元紙などの報道により明らかになった。

 道は、2022年11月に開催された協議会の場で、バス路線を長万部―黒松内、黒松内―倶知安、倶知安―余市、余市―小樽間に4分割し、輸送密度が2000人を超えるなど特に輸送密度が高い余市―小樽間については現行のJRの本数と同等以上の輸送力を確保する一方で、長万部―黒松内、倶知安―余市間については減便し、一部についてはデマンド型交通で補完をするという内容を発表していた。

 しかし、道が発表した案については、地元関係者より「協議会に地元の交通事業者を入れることはなく道が独断で策定をしている」「バスドライバー不足が深刻化し、地域のバス路線の減便・廃止が進む中で本当に鉄道と同程度の輸送力を確保できるのか」など疑問の声があがっていた。こうした状況の中で、道が鉄道代替バスのダイヤ案を発表してから約1年で、地域のバス会社が140.2kmにも及ぶ鉄道代替バスの引き受けができる状況にないことが明白となった形だ。

 地元紙には、道の「地域交通を維持するためにあらゆる手段を検討する」というコメントが掲載されており、今後はほかのバス会社にも協力をもとめるほか、利用者の少ない区間についてはタクシーなどバス以外の交通機関への転換も検討するといい、道側はあくまでも鉄道廃止の方針を崩さない様子だ。

余市ー小樽間を結ぶ路線バス。冬季の所要時間は鉄道の20~25分と比較して45~50分かかることも。参考記事は下記リンク参照(筆者撮影)
余市ー小樽間を結ぶ路線バス。冬季の所要時間は鉄道の20~25分と比較して45~50分かかることも。参考記事は下記リンク参照(筆者撮影)

 しかし、年々深刻化するバスドライバー不足については解消の見通しが立たない状況だ。警察庁が公開する2022年度版の運転免許統計によると路線バスを運転できる大型2種免許保有者の83.3%が50代以上で、前年の2021年度版の80.9%から2.4ポイントも高齢化が進行している。一方で、これからを担う30代以下はわずか4.2%だ。こうした状況から、この10月1日からは北海道内では夕張市から札幌方面を結ぶ夕鉄バスの広域路線が全廃となったほか、1989年に廃止となったJR天北線やJR標津線の鉄道代替バスも1部区間で廃止となっている。こうした影響は都市部にも及び、12月1日からは札幌市内でも北海道中央バスのバス路線の廃止が進む。

 また、鉄道を廃止しバスに転換した場合、過去の事例から鉄道からバス利用にシフトする乗客は鉄道の半分以下となるケースが頻発している。こうした実態は、2023年4月18日に参議院で開かれた国土交通委員会でも指摘されており、バスは鉄道の代替交通としては機能しないという認識も広まりつつある。

 九州新幹線や北陸新幹線の開業など道外のケースでは、新幹線の開業によってもたらされる経済効果をいかに地域に波及するのかということを前提に沿線では、新たな観光列車の設置など官民がともになって並行在来線を新幹線の2次交通として活用するための様々な取り組みが行われているが、そうした発想が生まれないのは不思議で仕方がない。

(了)

<参考記事>
2023年2月24日付記事(「余市―小樽間」路線バスの現状、鉄道20分に対してバスは50分

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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